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E953 - 機関リポジトリを超えて<文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.154 2009.07.22

 

 E953

機関リポジトリを超えて<文献紹介> 

 

Romary, Laurent; Armbruster, Chris. Beyond Institutional Repositories. Social Science Research Network. 2009, Jun 25.
http://ssrn.com/abstract=1425692 [1].

 フランスの国立情報処理・自動化研究所(INRIA)のロマリー氏とドイツのマックスプランク協会のアームブラスター氏による『機関リポジトリを超えて』と題された論文が,“Social Science Research Network”で公開された。

 著者は,しっかりとしたインフラを構築することは学術研究にとって必須であるが,機関リポジトリという現在普及しているシステムは,学術コミュニティ,科学コミュニケーション,ステークホルダーのニーズを必ずしも満たしてはいない,という問題意識に立っている。そして,研究成果の管理,経済的効率性,統合的サービスの提供,フォーマットの統一,データの品質保証,長期利用保証といった点から,多数の機関リポジトリよりも,地域や主題に基づき構築され,研究資金提供者によるリポジトリへの登録義務化に支えられた,大規模で,堅固な,集中型の「出版物リポジトリ」(研究の最終稿を第一のコンテンツとし,補完的に研究データなども含むリポジトリ)が望ましいと主張する。

 また著者にとって出版物リポジトリは,第一に研究者の研究活動を支えるツールである。出版物リポジトリは,それを使って研究者が,研究の編集ワークフローの管理,研究メモの作成,図やデータなどの資料の追加,といった研究プロセスのマネジメントを自然に行うことができるような仕組みを備える必要があるとされている。

 以上のような点を踏まえた上で本論では,出版物リポジトリの3つの重要な機能を,(1) 科学情報を速く広く普及させ,研究者・一般の人々が情報にアクセスできるようにするインフラの提供,(2) 登録者,登録された情報の信頼性,情報が登録された時期などリポジトリ内の情報を保証するためのメタデータの整備,(3) 資源の長期利用保証,としている。現時点で,これらの機能を備え,本論が提唱するようなリポジトリを実現している事例として,フランスの学術オープンアーカイブ“HAL”とドイツの共同学術研究のためのシステム“eSciDoc”(E261 [2]参照)が紹介されている。

 では著者らが提唱する出版物リポジトリを実現するためには,どのような道筋がありうるのだろうか。本論の最後には,機関リポジトリから出版物リポジトリへ移行するための4ステップ(「学術機関がプラットフォームや戦略を共有できるコミュニティを作ること」「出版物リポジトリに携わる技術チーム間で開発を共有すること」など)が示されており,参考にすることができる。

Ref:
http://hal.archives-ouvertes.fr/ [3]
http://www.escidoc.org/ [4]
E261 [2]

  • 参照(15999)
カレントアウェアネス-E [5]
学術情報 [6]
機関リポジトリ [7]
ドイツ [8]
フランス [9]

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リンク
[1] http://ssrn.com/abstract=1425692
[2] http://current.ndl.go.jp/e261
[3] http://hal.archives-ouvertes.fr/
[4] http://www.escidoc.org/
[5] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/2
[6] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/82
[7] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/160
[8] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/21
[9] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/24