英国逐次刊行物グループ(UKSG)は2009年3月24日,同グループが策定したTRANSFER実務指針(TRANSFER Code of Practice)に,Elsevier,Nature,Wileyといった大手を含む20出版社が,新たに署名したことを発表した。
このTRANSFER実務指針は,学術雑誌の出版元が変わる際に,移行元・移行先の出版社が実施すべき事項をガイドラインとしてまとめたものである。出版元が変わることにより発生する可能性がある諸問題,特に電子ジャーナルに関する問題を最小限にし,図書館や利用者が引き続き円滑にアクセスできるよう保証することを目指している。2006年4月にUKSG内にワーキンググループが設置され,2008年4月に初版が,2008年9月に第2版が策定されている。このほか,第2版とは別に,補足説明資料と,出版社が事前に取り交わしておくべき情報や関連機関に通知すべき情報などを集約したテンプレートが作成されている。
本実務指針第2版では,移行元出版社,移行先出版社の各々の役割と責務が定められている。移行元出版社は,電子ジャーナルコンテンツと購読契約者の情報を効果的・迅速に移行先出版社に引き渡すことが主要な責務とされており,(1)当該の電子ジャーナルへのアクセスの保証(恒久的アクセス権の継承,移行期でも中断することのないサービスの提供等),(2)コンテンツの電子ファイルの引き渡し(期日等),(3)購読契約者リストの引き渡し(期日,項目等),(4)URLの引き継ぎ(ドメイン名の引き渡し,転送処理等),(5)購読契約者等への通知,(6)DOI(CA1481 [1]参照)の引き継ぎ,の6項目が実施事項として定められている。移行先出版社は,購読契約者が中断することなく電子ジャーナルコンテンツを利用できるよう移行日にコンテンツを提供することが主要な責務とされており,移行元出版社の実施事項(1),(3),(5),(6)と同様の4つの実施事項が定められている。また補足説明資料には,実務指針の背景と用語解説,ISSNの移行に関する情報,出版社が事前に取り交わしておくべき情報などがまとめられている。
なお2009年4月7日時点では,25出版社が署名している。UKSGは今後,採用する出版社がさらに拡大した暁には,より公的な国際委員会を設置し,本実務指針の導入に関するガイドラインの開発,出版社が雑誌の移行に関する情報を登録し,図書館等がそれをオープンに利用できるサービス(TRANSFER Alerting Service)の開発,本実務指針の将来の改訂に関する方針・手続きの整備などを行っていくことを検討する,としている。
Ref.
http://www.uksg.org/news/transfermar09 [2]
http://www.uksg.org/transfer [3]
CA1481 [1]
リンク
[1] http://current.ndl.go.jp/ca1481
[2] http://www.uksg.org/news/transfermar09
[3] http://www.uksg.org/transfer
[4] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/2
[5] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/61
[6] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/82
[7] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/128
[8] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/32