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No.144 (E888-E893) 2009.02.18

  • 参照(19559)

E888 - 米国を中心に“Twitter”を活用する図書館増加中

  • 参照(29749)

カレントアウェアネス-E

No.144 2009.02.18

 

 E888

米国を中心に“Twitter”を活用する図書館増加中

 

 2009年1月27日,米国議会図書館(LC)は同館のブログに“We Tweet,  Therefore We Are”と題したお知らせを載せた。続いて2月2日には米国図書館協会(ALA)が「ALAのニュースがTwitterでも利用可能に」というニュースリリースを出した。LCとALAが“Twitter”というウェブサービスの活用を開始したのである。

 米国では導入している図書館が100前後ほどあるとも言われているTwitterとは,どのようなサービスなのだろうか。

 Twitterは2006年に米国でサービスを開始し,2008年4月には日本語版が登場している。ブログのように,自分のページに記事を投稿することができるとともに,チャットのような即時性の高いコミュニケーションも可能になることから,「ブログとチャットの中間」「ミニブログ」などと表現されることがある。Twitterに利用登録すると,自分専用のページが与えられ,そこに140文字以内のメッセージを投稿することができる。このメッセージは「いまなにしてる?」といった「つぶやき(tweet)」程度のものでよい。投稿は一般公開(プライベート設定も可)されるとともに,自分のフォロワー(follower)として登録した人とは,自分のページ内でリアルタイムでコミュニケーションすることができる。例えば,「いまなにしてる?」「ご飯を食べてるよ」「何を食べてるの?」「カレーだよ」「自分で作ったの?」…といった交流が,自分とフォロワーの間で広がっていくのである。もちろん,自分がフォロワーとなって別の人のページでコミュニケーションを楽しむこともできる。なお,この投稿の1つ1つはブログのエントリーに当たり,それぞれに固定URLが付与され,保存される。また,RSS(CA1565 [1]参照)でそれぞれのページの新着情報を配信することも可能である。

 もともとは,上記のように,自分と人がウェブ上で緩やかに繋がるためのサービスだったのだが,「無料」「簡便性」「速報性」「双方向性」といった特徴が注目され,またユーザーが拡大していることから,ニュース速報などのために利用する報道機関や政府機関が出てきた。そのようななか,Twitterの仕組みが持つ長所を情報共有や広報に利用する図書館が登場してきたのである。

 最もポピュラーなのは,休館日の情報など図書館のお知らせに使うやり方や,ALAが今回始めたサービスのように,ニュースやイベントの速報に使うやり方だろう。LCは,単に自館の活動やイベントを紹介するだけでなく,LCの投稿に対するコメントのやり取りなどを通じ,利用者とのコミュニケーションツールとしてもTwitterを利用している。その他の活用例としては,レファレンスの記録,図書館マーケティング,図書館員間の交流・研修情報などの共有,といったものがあるという。

 LCは冒頭に紹介したブログのエントリーの中で,「これを機会に,ウェブサイト“LOC.gov”を訪れ,莫大な無料リソースの宝庫を探索する人が増えることを望んでいる」としている。ブログ,RSSなどに続き,Twitterが図書館の活性化にどの程度貢献するのか,今後も注目していきたい。

Ref:
http://twitter.com/ [2]
http://blog.twitter.com/2008/04/twitter-for-japan.html [3]
http://ja.wikipedia.org/wiki/Twitter [4]
http://twitter.com/librarycongress [5]
http://twitter.com/alanews [6]
http://www.loc.gov/blog/?p=429 [7]
http://www.ala.org/ala/newspresscenter/news/pressreleases2009/january2009/alanewstwitter.cfm [8]
http://lis5313.ci.fsu.edu/wiki/index.php/Twittering_Libraries [9]
CA1565 [1]
CA1624 [10]

カレントアウェアネス-E [11]
Web 2.0 [12]
米国 [13]
国立図書館 [14]
公共図書館 [15]
大学図書館 [16]
ALA(米国図書館協会) [17]
LC(米国議会図書館) [18]

E889 - 研究評価を意識した新しい学術雑誌評価指標の模索

  • 参照(27274)

カレントアウェアネス-E

No.144 2009.02.18

 

 E889

研究評価を意識した新しい学術雑誌評価指標の模索

 

 学術雑誌の評価基準として広く利用されているインパクトファクター(CA1559 [19]参照)。しかし近年,学術・研究業績を評価する動きが国内外で高まりつつある中で,このインパクトファクターに対する批判も多くなされるようになってきている。また,学術雑誌の評価指標であるインパクトファクターが,研究者個人の評価指標として誤用されることも多く報告されている。そのため,「n回以上引用された論文が,n本以上存在する」という値「n」をもってその論文の執筆者の評価指標とする,カリフォルニア大学サンディエゴ校のハーシュ(Jorge E. Hirsch)教授考案の「h指数(h-index)」をはじめ,新しい評価指標を探る試みは枚挙に暇がない。計量書誌学だけを対象としているわけではない図書館情報学分野の学術雑誌“Journal of the American Society for Information Science and Technology”にも毎号のように,新しい評価指標に関する論文が掲載されている。

 このような傾向がある一方で,2008年6月には国際数学連合 (IMU) ,応用数理国際評議会(ICIAM) および数理統計学会 (IMS) が,“Citation Statistics”というレポートで,数学・統計学的観点から研究評価における被引用データの利用および誤用に警鐘を鳴らし,注目を集めた(E834 [20]参照)。ここでは,インパクトファクターやh指数を検証し,「研究には複数の目標があるのが普通であり,従って,研究の価値は複数の基準に基づいて判定されるべきである」として,簡単な引用計量だけで研究評価を行おうとする(主として英国の)動きが批判されている。なお同レポートは,日本数学会および日本学術会議数理科学委員会が邦訳している。

 このように研究評価指標への関心が高まる中,インパクトファクターを算出・公表しているThomson Reuter社が2009年1月,学術雑誌評価分析データベース“Journal Citation Report(JCR)”をバージョンアップしたと発表した。従来の2年間の論文データを元に計算されたインパクトファクターに加え,新指標「アイゲンファクター(Eigenfactor)」および5年間のデータで計算したインパクトファクターを導入するとともに,自誌引用値も明示するようになったのが主な変更点である。アイゲンファクターとは,ワシントン大学のベルグストローム(Carl Bergstrom)准教授らによって開発されたもので,(1) Google社のページランクに倣い「重要な学術雑誌から引用され ている学術雑誌は重要である」と学術雑誌に重み付けをして引用の影響を算出する,(2) 学問分野ごとの引用傾向を考慮して比較可能とする,(3) 5年間の引用データをもとに算出する,(4) 1論文あたりの「論文影響値(Article Influence Score)」も算出している,(5) 指標データはウェブサイトで無料で公開されており,ウェブサイトでは学術雑誌の価格データを加味した分析も可能としている,等の特徴を有している。

 Elsevier社の学術文献・引用情報データベース“Scopus”が採用したh指数,そして今回JCRが採用したアイゲンファクターといった新しい指標が,どのように学術雑誌評価,研究評価に影響を及ぼしていくのか,また学術雑誌評価,研究評価が今後どのように展開していくのか。数学界が提起した問題の重みも意識しながら,動向に注目していきたい。

Ref:
http://www.thomsonscientific.jp/news/press/pr_200901/350008.shtml [21]
http://www.nii.ac.jp/sparc/event/2008/20081125.html [22]
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.0507655102 [23]
http://www.asis.org/jasist.html [24]
http://www.mathunion.org/Publications/Report/CitationStatistics [25]
http://mathsoc.jp/IMU/CitationStatisticsJp20080930.pdf [26]
http://www.eigenfactor.org/ [27]
http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20090204/1233768162 [28]
http://japan.elsevier.com/scopussupport/Scopus_200706_release_info.pdf [29]
CA1559 [19]
E834 [20]

カレントアウェアネス-E [11]
学術情報 [30]
電子ジャーナル [31]

E890 - オープンソースを活用し共同で目録作成を-‡biblios.net

  • 参照(16748)

カレントアウェアネス-E

No.144 2009.02.18

 

 E890

オープンソースを活用し共同で目録作成を-‡biblios.net

 

 大規模書誌ユーティリティOCLCの書誌レコード利用・再配布の新ポリシーが物議を醸している(E864 [32]参照)中,米国で,オープンソースソフトウェア(OSS)を用いた共同目録・メタデータ作成プロジェクト“‡biblios.net”が注目を集めている。

 これは,OSSの統合図書館システム“Koha ZOOM”(E641 [33]参照)など,図書館向けOSSの運用業務ソリューションを提供しているベンダーLibLime社が,2007年に自社開発したOSSの目録・メタデータ作成ソフト“‡biblios”を元にしたものである。‡bibliosは「リッチな」ユーザインターフェース,Z39.50プロトコルを利用した既存の目録データベースのメタサーチ(CA1596 [34]参照)機能,“Koha”をはじめとする統合図書館システムとの連携,プラグインによる各種フォーマット(MODS,Dublin Core等)への対応などを特徴とした,スタンドアロン環境用ソフトウェアである。LibLime社はこの‡bibliosの開発を続ける傍らで,自社からネットワークで提供(ホスティング)する版として“‡biblios.net”を立ち上げた。2008年11月にベータ版,同12月に正式版がリリースされ,現在に至っている。

 ‡biblios.net固有の特徴は,ネットワークでデータが共有されること,にある。登録ユーザは,‡biblios.netデータベースまたはZ39.50プロトコル対応データベースの書誌レコードを検索し,コピーしたり,流用したりして,目録やメタデータを作成する。もちろん,新規にオリジナルの目録やメタデータを作成することもできる。このインターフェース(ツール)は,スタンドアロン版‡bibliosと同様である。作成したレコードは,他の統合図書館システム等にエクスポートすることができるほか,‡biblios.netデータベースで登録ユーザに公開することもできる。この‡biblios.netデータベースは,Open Data Commonsの“Public Domain Dedication & License(PDDL)”のもと,目的を問わず,制約なしで誰もが自由にそのデータを共有,改変,利用できるようになっている。すでに,同様にパブリックドメインとしてデータを公開しているOpen Content Alliance(OCA;E392 [35],E714 [36]参照)のデジタル化書籍提供サイト“Open Library”の2,500万件以上の書誌データ,800万件弱の典拠データが取り込まれている。‡biblios.netデータベースへのアクセス用のウェブAPI(CA1677 [37] 参照)も公開されており,ダウンロード/アップロード等を容易に行えるようになっている。なお,データベースの全レコードは,MARCフォーマットでInternet Archiveに永久保存される,という。

 誰でも無料でユーザ登録でき,データを作成・利用できる。また掲示板,チャット等のコミュニティ機能を通じて,他のユーザと情報交換することもできる。LibLime社のCEOが「Wikipedia方式」と呼ぶこの仕組みが,どのように目録コミュニティで受け入れられていくか,大変興味深い。

 なおOCLCも2009年2月,WorldCatのマスターレコードの完全な編集権限を,参加館の登録ユーザに付与し,共同作業によりレコードの品質を向上させることを目指す6か月間の実験プロジェクト“Expert Community Experiment”の開始を発表した。これまでは限定的な編集しか行えなかったユーザも,一部の例外レコードを除き,ほとんどすべてのレコードのほとんどすべてのフィールドを編集できるようになるという。‡biblios.netの登場と時を同じくした,この巨大共同目録の新展開も注目される。

Ref:
https://biblios.net/ [38]
http://www.libraryjournal.com/article/CA6632425.html [39]
http://biblios.org/ [40]
http://liblime.com/ [41]
http://journal.code4lib.org/articles/657 [42]
https://biblios.net/pddl [43]
http://openlibrary.org/ [44]
http://www.oclc.org/worldcat/catalog/quality/expert/default.htm [45]
CA1596 [34]
CA1677 [37]
E392 [35]
E641 [33]
E714 [36]
E864 [32]

カレントアウェアネス-E [11]
目録 [46]
総合目録 [47]
米国 [13]
OCLC [48]

E891 - ネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会の最終報告

  • 参照(15988)

カレントアウェアネス-E

No.144 2009.02.18

 

 E891

ネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会の最終報告

 

 2009年1月,総務省が設置した「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」(以下,検討会;E735 [49]参照)の「最終取りまとめ」が公表された。

 2007年11月から続く検討会では,2008年4月に「中間とりまとめ~携帯電話フィルタリングサービスの実効性ある普及を目指して」を報告した。その後2008年6月11日に「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(以下,青少年インターネット環境整備法;E806 [50]参照)が成立したこと,2008年7月15日に総務大臣が「安心ネットづくり」促進プログラムの策定について発表したことを受け,この「最終取りまとめ」は,青少年インターネット環境整備法の施行(2009年4月1日予定)にあたり,2011年度までに講じるべき施策への提言と位置づけられている。

 「最終取りまとめ」は,「安心ネットづくり」の様々な取組が民主導で行われ,産学連携して推進されていくための3つの柱を提唱している。

  • (1) 「安心を実現する基本的枠組みの整備」
    • 安心ネット利用のための基本法制の整備
    • 国際連携推進のための枠組の構築
    • 様々な連携の推進
  • (2) 「民間における自主的取組の促進」
    • 違法・有害情報対策の推進
    • 児童ポルノの効果的な閲覧防止策の検討
    • コンテンツ・レイティングの普及促進
    • 違法・有害情報対策に資する技術開発支援
  • (3) 「利用者を育てる取組の促進」
    • 家庭・地域・学校における情報モラル教育
    • ペアレンタルコントロールの促進
    • コンテンツ事業者等による利用者啓発活動促進
    • 利用者を育てる取組の協調的な推進
    • 違法・有害情報対策の基礎となる調査

 (2) については特に,関係者間の総合的な連携が効果的な方策として不可欠とされている。また(3)の取組については,地域的なばらつきがあることや,保護者や教師自身がメディアリテラシーを高める機会に恵まれないことなど,課題が多く指摘されている。

 検討会は,総務省が速やかにこの「最終取りまとめ」を踏まえ,「安心ネットづくり」促進プログラムを策定することを求めている。

Ref:
http://www.soumu.go.jp/s-news/2009/090116_1.html [51]
E735 [49]
E806 [50]

カレントアウェアネス-E [11]
情報政策 [52]
子ども [53]
ヤングアダルト [54]
日本 [55]
総務省 [56]

E892 - 研究図書館が置かれている環境の分析(米国)

カレントアウェアネス-E

No.144 2009.02.18

 

 E892

研究図書館が置かれている環境の分析(米国)

 

 北米研究図書館協会(ARL)は2009年中にこれまでの戦略計画の見直しを行い,2010年からの5年間に渡る新しい計画を策定する。これに先立ちARLでは,研究図書館が置かれている環境のトレンド分析を実施し,その成果を“Transformational Times:An Environmental Scan Prepared for the ARL Strategic Plan Review Task Force”として,2009年2月に刊行した。

 報告書では,(1) 学術コミュニケーション,(2) 米国・カナダ両国における研究図書館に影響がある公共政策,(3) 研究・教育・学習における図書館の役割,の3つの観点から分析を行っている。それぞれの観点からトレンドを抽出した上で,そのトレンドに関する課題,チャンス,今後の展望などを整理している。

 (1) では,予算の削減による蔵書構築の課題とチャンス,新しい出版モデル,教員との協同,研究の成果の公表とそれにまつわる権利の問題,学術コミュニケーションの変容に伴うサービスの再構築,研究プロセス全体を通した支援の必要性,サイバーインフラ(E701参照)とコンテンツ構築への大規模助成,の7つがトレンドとして挙げられ,分析されている。

 (2) では,議会と行政機関の活動が経済と国防という2つの課題に左右されていること,市民の自由,国防,情報の透明性,科学技術などの分野に関する政策の見直し,パブリックアクセスポリシー(E741 [57]参照)がもたらす利益に一層注目が集まる可能性,学術界と文化保存機関に資するような環境の確保,地方レベル・州レベル・国家レベルでの説明責任と評価への注目,といったことを含む9つのトレンドが指摘されている。

 (3) では,研究実践の変化に伴なう図書館業務の再構築,研究図書館のコレクション構築が持つ新しい意味,ヴァーチャル環境へのサービスや資源の配置の拡大,「活発で,参加型の学習」への教育の変化に対応した教員との協同,遠隔教育の学生などの誘致,大学の予算削減に伴なう投資収益率の説明責任がもたらす大幅な組織変革,という6つのトレンドが挙がっている。

 なおARLではこのトレンド分析のほか,新戦略計画の方向性と課題の優先順位の決定に生かすため,ARLのメンバー図書館の代表に対し,アンケート調査を実施中(締め切りは2009年3月8日)である。このアンケートでは,ARLが解決すべき重要課題,メンバー図書館が変革していくためにARLがなすべきサポートは何か,など5つの問いを投げかけている。

Ref:
http://www.arl.org/bm~doc/transformational-times.pdf [58]
http://www.arl.org/arl/governance/plan-review.shtml [59]
E701 [60]
E741 [57]

  • 参照(13689)
カレントアウェアネス-E [11]
米国 [13]
研究図書館 [61]
学術図書館 [62]
ARL(北米研究図書館協会) [63]

E893 - 2009年ALA冬季大会 <報告>

  • 参照(18849)

カレントアウェアネス-E

No.144 2009.02.18

 

 E893

2009年ALA冬季大会 <報告>

 

 2009年1月23日から28日にかけて,2009年米国図書館協会(ALA)冬季大会がコロラド州デンバーにおいて開催された。

 今回の大会を特徴づけるテーマとして,経済問題とオバマ新政権への期待が挙げられる。まず会長プログラムとして,ノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス(Muhammad Yunus)氏の講演会が開催された。ユヌス氏は,バングラデシュでグラミン(農民)銀行を創設し,世界の貧困問題の改善に大きく寄与している功績を評価され,2006年にノーベル平和賞を受賞しているが,今回の講演は,貧困問題への取り組みから銀行創設にいたるまでの軌跡を紹介する内容であった。またALA理事会等提供のプログラムとして,オバマ新大統領へメッセージを送ることを目的としたタウンホール形式の集会が開かれた。ニューヨーク州のライブラリアン,マーゴリス(Bernie Margolis)氏は,新大統領が携帯端末を使いこなす姿がたびたび報道されていることなどを引き合いに出し,ITに親しんでいる大統領の下で「知識経済に立脚すべくお互いに手伝い合う機会を作れるのではないか」と期待を述べるなど,参加者は様々なメッセージを共有した。

 冬季大会の開催に合わせ,次世代のOPACや目録の方向性を探るベンダー各社が相次いで新機能をリリースし,これらの企業の動向への注目度が高かったのも今回の特徴であった。プログラム会場および展示会場の各社のブースには,多くの図書館員が足を運び,熱心に話に聞き入っていた。ここでは特に注目が集まっていたものを紹介する。

 オープンソース検索システム“Koha”(CA1529 [64]参照)の開発で知られるLibLime社は,オープン・ライセンスの書誌データを共有する仕組みを目指し,“‡biblios.net”(E890 [65]参照) をリリースした。同じく検索インターフェース“Encore”の開発を進めるInnovative Interfaces社は,OAI-PMHでのメタデータハーベスティングを可能にする電子図書館構築ソフトウェア“Content Pro”を提供し,電子図書館コンテンツの統合検索をEncoreに組み込む方向性を示している。Web 2.0のコンセプトを前面に取り込んだ図書館統合システム“AGent VERSO”の開発を進めるAuto-Graphics社は,Adobe Flexを使用した“AGent Iluminar”という検索インターフェースの開発に乗り出すとのプレスリリースを出した。ベンダー各社の中でも特に力の入っていたのは,Ex Libris社であった。検索インターフェイス“Primo”の開発を進めるEx Libris社は,リンクリゾルバの利用ログをベースとした新たなリコメンデーションサービスである“bX”の開発を発表した。また同社製品に対する顧客による独自開発コードの共有などを支援するEL Commonsを紹介するとともに,次世代の統合図書館システムとして開発を進める統合リソース管理(URM)戦略のシステムモデルを明らかにした。

 氷点下の日が続く中での開催であったが,200以上のディスカッショングループ,2,000以上の委員会の会合やイベントが開かれ,また同時に行われた展示会・プログラムにも400社以上が出展し,期間中に合わせて1万を越える人々が参加した。2008年と比較すると参加者は3,000人程度減ったものの,大会は盛況のうちに幕を閉じた。

(国立国会図書館:依田紀久)

Ref:
http://www.ala.org/ala/conferencesevents/upcoming/midwinter/home.cfm [66]
http://wikis.ala.org/midwinter2009/index.php/Main_Page [67]
http://www.ala.org/ala/newspresscenter/news/pressreleases2009/january2009/mwwrap.cfm [68]
http://www.ala.org/ala/alonline/resources/selectedarticles/obama05.cfm [69]
http://www.al.ala.org/insidescoop/2009/01/25/midwinter-saturday-membership-town-hall/ [70]
CA1529 [64]
E816 [71]
E855 [72]
E890 [65]

カレントアウェアネス-E [11]
図書館システム [73]
米国 [13]
ALA(米国図書館協会) [17]

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リンク
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[2] http://twitter.com/
[3] http://blog.twitter.com/2008/04/twitter-for-japan.html
[4] http://ja.wikipedia.org/wiki/Twitter
[5] http://twitter.com/librarycongress
[6] http://twitter.com/alanews
[7] http://www.loc.gov/blog/?p=429
[8] http://www.ala.org/ala/newspresscenter/news/pressreleases2009/january2009/alanewstwitter.cfm
[9] http://lis5313.ci.fsu.edu/wiki/index.php/Twittering_Libraries
[10] http://current.ndl.go.jp/ca1624
[11] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/2
[12] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/181
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[16] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/37
[17] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/133
[18] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/142
[19] http://current.ndl.go.jp/ca1559
[20] http://current.ndl.go.jp/e834
[21] http://www.thomsonscientific.jp/news/press/pr_200901/350008.shtml
[22] http://www.nii.ac.jp/sparc/event/2008/20081125.html
[23] http://dx.doi.org/10.1073/pnas.0507655102
[24] http://www.asis.org/jasist.html
[25] http://www.mathunion.org/Publications/Report/CitationStatistics
[26] http://mathsoc.jp/IMU/CitationStatisticsJp20080930.pdf
[27] http://www.eigenfactor.org/
[28] http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20090204/1233768162
[29] http://japan.elsevier.com/scopussupport/Scopus_200706_release_info.pdf
[30] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/82
[31] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/128
[32] http://current.ndl.go.jp/e864
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[35] http://current.ndl.go.jp/e392
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[37] http://current.ndl.go.jp/ca1677
[38] https://biblios.net/
[39] http://www.libraryjournal.com/article/CA6632425.html
[40] http://biblios.org/
[41] http://liblime.com/
[42] http://journal.code4lib.org/articles/657
[43] https://biblios.net/pddl
[44] http://openlibrary.org/
[45] http://www.oclc.org/worldcat/catalog/quality/expert/default.htm
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[58] http://www.arl.org/bm~doc/transformational-times.pdf
[59] http://www.arl.org/arl/governance/plan-review.shtml
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[63] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/134
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[66] http://www.ala.org/ala/conferencesevents/upcoming/midwinter/home.cfm
[67] http://wikis.ala.org/midwinter2009/index.php/Main_Page
[68] http://www.ala.org/ala/newspresscenter/news/pressreleases2009/january2009/mwwrap.cfm
[69] http://www.ala.org/ala/alonline/resources/selectedarticles/obama05.cfm
[70] http://www.al.ala.org/insidescoop/2009/01/25/midwinter-saturday-membership-town-hall/
[71] http://current.ndl.go.jp/e816
[72] http://current.ndl.go.jp/e855
[73] https://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/65