1993年に発表された英国図書館戦略計画(British Library's Strategic Objectives)で挙げられた,
という目標のもと,BLの電子図書館計画"Initiatives for Access"は開始された。このプログラムには,ドキュメントサプライサービス(DSS)の電子化を企図したプロジェクトがいくつか含まれていたが,その中には,よく知られたARP(Automated Request Processing:自動リクエスト処理システム)やinside(カレントアウェアネスサービスとドキュメント申込サービスを統合したシステム)とともに,以下の2つの雑誌論文電子化プロジェクトがある。
"Initiatives for Access"プログラムは,電子出版の世界においてDSSを展開する際に考慮すべき経営・運営・技術・顧客に関する諸課題を明確にすることに寄与した。経営に関する部分は以下のとおりである。
出版社が予約購読者のデスクトップに直接テキストを送ることができる時代にDSS機関が生き残るためには,紙媒体を伴わない「生まれながらの電子出版物」をコレクションの範囲に入れなければならないし,新しい技術に対する顧客の期待にも応えなければならない。そして,コレクションをどう構築し,利用するかが注意深く考慮されなければならない。例えば,電子版が出されている出版物について,紙版もあわせて所蔵する必要があるかどうかも検討すべきことの一つである。電子出版物の蓄積と利用のための契約は個々の出版社と結ばなければならないが,ダウンロードして蓄積することの可否,利用者への電子的伝送の可否などは契約により異なる。契約や著作権法に抵触しないように気をつけるだけでなく,不正なアクセスを防ぐ手段も講じなければならない。
"Initiatives for Access"プログラムのもとでは,その他にも多くの電子出版に関わるプロジェクトが行われたが,その後"Digital Library"プログラムとして再出発することになった。BLは政府の民間資金導入政策(Private Finance Initiative: PFI)に従って,デジタル技術,出版,通信の各分野からパートナーを募集した。この共同プロジェクトは最終的合意に至らぬまま1998年12月に中止されたが,プロジェクトの準備のために行われた作業は,戦略を明確にするために大変有益であり,必要なインフラの調達を始めることができた。この間,DSSにおける2つの重要な進歩があった。ArielとESTARである。
福田 理(ふくだおさむ)
Ref: Chivers, Lynne C. Electronic document supply: experience at the British Library. Interlend Doc Supply 28(1) 27-37, 2000
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