7.NDL総目と資料相互貸借

7.NDL総目と資料相互貸借

 ここでは,借受冊数と他の状況との関連から,NDL総目と相互貸借の関係について考察する。

7.1 OPAC公開状況及びNDL総目へのデータ提供と相互貸借(借受)との関係

 図表20は,<アンケート>結果よりOPAC公開館数及びNDL総目へのデータ提供館数の累積変化を左軸に,<統計調査>より1館あたりの借受冊数を集計し,その変化を右軸においたものである。

図表20「書誌データの公開状況と相互貸借借受冊数の比較」


書誌データの公開状況と相互貸借借受冊数の比較


※OPAC公開館数及びNDL総目データ提供館数の2002年度以降は予定を含む。
※相互貸借借受(1館あたり冊数)は図表3の数値を使用。

 相互貸借(借受)冊数は,1995年度以降増加傾向を示し続けている。2001年度はNDL総目の参加対象を市区町村立図書館(1自治体1館の制限を付した)へ拡大した時期にあたるが,借受冊数の推移を見る限りでは大きな変化は見受けられない。

7.2 県域・地域ネットワークと相互貸借(借受)との関係

 OPACやNDL総目以外にも,相互貸借(借受)冊数に影響を及ぼす要因として考えられるのは,県域または地域の情報ネットワークにおける書誌データの公開状況である。現在の構築状況は,県域の総合目録については60%(32館),市区町村立図書館同士によって構築されている広域の総合目録については29%(15館)の県立図書館から「構築している」と回答があった。

 特に県域ネットワークでは,①集中型(21館)または分散型(12館)のいずれかの方式で検索システムが構築されていること,②参加館の範囲を公共図書館に限定していないこと(館数の合計:公共図書館2,010館,公民館図書室184館,大学図書館43館,その他49館),③データ提供館は公共図書館を主軸としつつ大学図書館やその他の図書館も含めていること(館数の合計:公共図書館1,801館,公民館図書室52館,大学図書館31館,その他41館),④参加館数は100館までのものが多いこと(1~50館: 16館回答,51~100館: 11館回答,101館以上:5館回答),⑤収録対象資料は一般書(23館回答)と郷土関係図書(28館回答)以外にも行政資料(22館回答),外国語図書(21館回答),逐次刊行物(18館回答)及び視聴覚資料(13館回答)なども収録していること,⑥誰でも利用できること(26館),⑦参加館はデータベースの検索だけでなく相互貸借の依頼を行えること(18館)などの点に特徴がある。

 <統計調査>によると,相互貸借(借受)の貸出元は圧倒的に都道府県内が多く(90%),さらにその貸出元の館種別内訳は約半数ずつを都道府県立図書館(約40%)と市区町村立図書館(約50%)で占めている。県域ネットワークの構築状況やその特徴とあわせて推測すれば,1館あたり年間約700冊発生した相互貸借(借受)冊数の大部分は,都道府県内に整備されたネットワーク(OPACを含む)により処理されていると考えられる。

7.3 書誌データ提供サービスの充実と相互貸借(借受)との関係

 前記2項目を通じて,OPACの公開,NDL総目へのデータ提供及び県域・広域ネットワークの構築の各状況と相互貸借(借受)との関係を概観した。結果を要約すれば,2001年度以降の借受冊数の増加は,NDL総目の参加対象館の拡大の時期と一致することからその影響を推測できるが,上記借受冊数の分布と都道府県内における借受冊数のうちNDL総目で所蔵情報を得たものは1.3%(8.6冊)であったことから(図表8),冊数増加要因はOPAC公開を含む都道府県内のネットワーク整備による部分が最も大きいのではないかと考えられる。

7.4 書誌データ提供サービスの充実と相互貸借(貸出)との関係

 <統計調査>において調査対象を限定して行った結果であるが,相互貸借(貸出)についても書誌データ提供サービスとの関係を考察する。

 書誌データ提供サービス(OPAC公開及びNDL総目へのデータ提供)の変化と相互貸借(貸出)冊数の変化は,図表18のとおりである。相互貸借(借受)と同様に,貸出先種別と貸出先館種の分布を見ると,都道府県内の市区町村立図書館への貸出冊数は約90%を占めた。調査結果から状況を推測すれば,相互貸借(借受)と同様に,相互貸借(貸出)についても,都道府県内のネットワーク整備によって相互貸借が活発化していると考えられる。

7.5 NDL総目と相互貸借との関係

 <統計調査>では,相互貸借(借受)冊数について,「うちNDL総目で所蔵情報を得たもの」の把握を試みた。結果は図表21のとおりであった。

図表21「相互貸借(借受)冊数のうちNDL総目で所蔵情報を得たものの分布」


貸出元種別 1館あたり借受冊数
  うちNDL総目で所蔵情報を得たもの 割合
都道府県内 都道府県立図書館 281.0 6.7 2.4%
政令指定都市立図書館 42.9 1.9 4.4%
市区町村立図書館 317.5
他県(所属ブロック内) 都道府県立図書館 22.7 16.3 71.8%
政令指定都市立図書館 2.2 1.1 46.9%
市区町村立図書館 7.4
他県(所属ブロック外) 都道府県立図書館 18.4 16.3 88.6%
政令指定都市立図書館 0.8 0.6 73.4%
市区町村立図書館 2.1
その他 NDL 9.2 6.1 66.1%
その他(大学,専門等) 5.8
合計 710.1 48.9 6.9%

 上記の結果は,他県またはNDLからの相互貸借(借受)に関して「NDL総目で所蔵情報を得たもの」の割合がきわめて高いことを示している。これはNDL総目の事業目的の1つに掲げる「県域を越えた相互貸借支援」として捉えることができる。また参加館各館の視点からは,「公共図書館間資料相互貸借指針」(平成11年6月 全国公共図書館協議会)の「資料相互貸借の原則及び貸借資料の範囲」(第四条)に示された理念の理解と業務を通じた実践という制度運用上の成果としても捉えられる。



書誌事項:国内公共図書館の相互貸借等に関する調査報告書―国立国会図書館総合目録ネットワーク参加館状況調査のまとめ―. デジタル環境下におけるILL,ドキュメント・デリバリーとその運用基盤. (図書館研究シリーズ No.38). 2005. 29-31.