6.資料相互貸借の業務状況

6.資料相互貸借の業務状況

6.1 相互貸借の業務体制

 協力貸出(都道府県立図書館と県内図書館との相互貸借)に係る業務体制について質問したところ,専従の職員がいる図書館(専従の職員と他の業務と兼務している職員がいる図書館を含む)は少なく(12館),他の業務と兼任で担当している図書館が多かった(38館)。特に担当者を定めていない図書館も存在する(3館)。担当者の数は,専従の職員がいる図書館では,最大11人・最小1人(平均5.0人,うち非常勤職員3.7人),他の業務と兼任で担当している図書館では,最大14人・最小1人(平均2.8人,うち非常勤職員1.5人)であった。相互貸借と兼務している主な業務種別は,閲覧・カウンター業務(21館),地域図書館支援業務(18館),参考業務(12館)であった。

 県外図書館(政令指定都市立図書館においては分館を除く他の図書館)との相互貸借に係る業務体制については,専従の職員がいる図書館(専従の職員と他の業務と兼務している職員がいる図書館を含む)はほとんどなく(6館),他の業務と兼任で担当している図書館が大部分を占めた(58館)。特に担当者を定めていない図書館は1館であった。担当者の数については,専従の職員がいる図書館では,最大6人・最小1人(平均3.2人,うち非常勤職員2.3人),他の業務と兼任で担当している図書館では,最大15人・最小1人(平均2.9人,うち非常勤職員1.9人)であった。相互貸借と兼務している主な業務種別は,閲覧・カウンター業務(31館),参考業務(28館),地域図書館支援業務(12館)であった。

6.2 相互貸借業務の変化

 NDL総目の市区町村立図書館への参加対象拡大(H13.10)や各図書館ホームページ上での蔵書検索の公開に伴って,相互貸借業務上で生じた(と思われる)変化について,内容とその原因,日頃感じていることについて回答を求めた。

6.2.1 貸出依頼の統計上の変化

 「統計上変化は特に認められない」への回答数(分母とする)で,他の回答数(分子とする)を除した値(相対値とする)を取ってみると,①全体的な傾向,②県外の県立図書館からの依頼,③県内の市区町村立図書館からの依頼,④県外(所属ブロック内)の市区町村立図書館からの依頼,⑤県外(所属ブロック外)の市区町村立図書館からの依頼,すべてにわたって「統計上増加傾向」という状況であった(それぞれの相対値は,①5.2,②2.9,③2.1,④1.8,⑤1.6)。特に②県外の県立図書館からの依頼は大きく増加しているように見受けられる。増加傾向の原因については,自館OPACの一般公開,NDL総目へのデータ提供や参加館の拡大などが挙げられている。一方,「統計上減少傾向」という状況は相対値で非常に低かった(それぞれの相対値は,①0.2,②0.1,③0.2,④0.1,⑤0.1)。

6.2.2 業務に係る時間の変化

 相互貸借業務にかかる時間について同様に比較すると,大幅な増加傾向にあり(相対値5.0),日常業務を圧迫している状況が読み取れる。増加傾向の原因については,梱包作業や県外からの依頼への対応などが挙げられている。

6.2.3 業務体制の変化

 相互貸借業務にかかる人員・体制の質問に対しては,「人員・体制の変更はしていないが,従来の体制では厳しくなっている」(回答39館)という状況にある。人員・体制を変更した図書館(9館)では,人員の増加,担当組織の変更または新設,資料配送の委託などの対応が見受けられた。

6.2.4 業務における困った事例

 相互貸借に関する困った事例を質問したところ,主なものは書誌情報の不備(14件),新刊や購入容易な資料への貸出依頼(13件),「県内→所属ブロック内→所属ブロック外へ」という依頼順序が守られていないこと(13件)であった。

6.2.5 相互貸借業務の変化についてのまとめ

 相互貸借業務への負担は大きくなっている。図表1の資料貸出関係統計の推移において,相互貸借(貸出)冊数で約2倍の伸びを示していることと,多くの館では人員・体制の変更を行っていない状況から,現在の厳しい業務状態に至った経緯を想像することができる。しかし,既に人員・体制を変更している館もあることから,「変えられない」わけではなく変化にどう対応するかが求められている状況であるとも考えられる。

 <統計調査>の結果をもとに,<アンケート>対象館の貸出冊数から,担当職員1人あたりの処理冊数を集計すると図表19のようになった。

図表19「相互貸借(貸出)に係る1人あたり処理冊数」(年間)


<統計調査>より*1 1館あたり貸出冊数 11,190.9冊/館
<アンケート>より*2 相互貸借担当職員数 166人
1館あたり担当職員数 3.3人/館
担当職員1人あたり処理冊数   3,391.2冊/人

*1 <統計調査>における1館あたり貸出冊数
*2 <アンケート>Ⅱ−3の回答より集計

 担当職員1人あたり年間約3,400冊の相互貸借(貸出)処理を行いつつ,多くの館では他の業務との兼任(閲覧・カウンター業務,参考業務,地域図書館支援業務など)で実施している状況とを考え合わせると,処理体制の検討を要する時期が訪れてきたのではないかと想像することもできる。



書誌事項:国内公共図書館の相互貸借等に関する調査報告書―国立国会図書館総合目録ネットワーク参加館状況調査のまとめ―. デジタル環境下におけるILL,ドキュメント・デリバリーとその運用基盤. (図書館研究シリーズ No.38). 2005. 27-28.