4.国内公共図書館の相互貸借の概況と調査結果との比較

4.1 国内公共図書館の相互貸借の概況

 図表1及び2は,国内公共図書館における貸出資料数の経年状況を,フロッピーディスク版『日本の図書館 統計と名簿 1996』から『同 2003』までの統計数値(前年度の実績値)として概観したものである。

図表1「公共図書館の資料貸出関連数値の状況」

公共図書館の資料貸出関連数値の状況

図表2「公共図書館の資料貸出関連数値の状況(年度実績値)」(単位:千点・冊・件)

1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 伸び率* 2002割合
貸出資料数(本分館・自動車計) 412,620 433,014 453,486 495,639 524,003 533,038 546,653 571,489 1.4 93.3%
予約受付件数 9,203 11,371 13,458 15,894 18,126 20,187 22,398 26,668 2.9 4.4%
相互貸借貸出冊数 609 884 1,334 1,086 1,126 1,210 1,372 1,722 2.8 0.3%
団体貸出貸出冊数 10,424 10,718 9,819 9,824 10,140 11,713 11,661 12,675 1.2 2.1%
合計 432,856 455,988 478,097 522,443 553,395 566,147 582,085 612,554 1.4 100.0%

(フロッピーディスク版『日本の図書館 統計と名簿1996』~『同 2003』より作成)
*各年度実績値は,公立図書館から私立図書館を除いて集計した。
*伸び率:2002年度実績値を1995年度実績値で除した。

 資料貸出関連の数値は,ここ数年のうちに,年間約4億冊・件から6億冊・件へ,約1.4倍の増加を示している。このうち相互貸借については,貸出冊数で約60万冊から約170万冊へ,約3倍の増加を示している。資料貸出全体に占める相互貸借貸出冊数の割合は,2002年度実績値で0.3%(1,721,526冊)であった。

 図表3及び4は相互貸借統計を1館あたりで計算したものである。2003年度実績はNDL総目にて実施した<統計調査>(以下「<統計調査>という」)を元に作成したものである。借受冊数と貸出冊数とも,1995年度以降増加を続けている。

図表3「相互貸借の状況(年度実績値)」(単位:冊)

年度 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003
借受冊数 585,319 683,768 776,671 937,859 881,853 1,084,076 1,155,339 1,422,841  
(1館あたり*) 298.2 307.6 336.4 418.3 388.5 470.1 497.6 565.3 710.1
貸出冊数 609,076 884,443 1,333,634 1,086,239 1,126,176 1,209,553 1,372,206 1,721,526  
(1館あたり*) 310.3 397.9 577.6 484.5 496.1 524.5 591.0 684.0  
相互貸借実施館数 1,963 2,223 2,309 2,242 2,270 2,306 2,322 2,517  

*統計数値は以下の資料を元に作成した。
 1995~2002年度は,フロッピーディスク版『日本の図書館 統計と名簿』(日本図書館協会)。
 2003年度は,NDL総目状況調査<統計調査>。
*1995~2002年度は,公立図書館から私立図書館を除いて集計した。
*「1館あたり」:1995~2002年度は”相互貸借実施”回答館数あたり。2003年度は有効回答数あたり(第1回:537館,第2回:398館)。

図表4「相互貸借状況(1館あたり)」

相互貸借状況(1館あたり)

4.2 NDL総目<統計調査>結果について

 <統計調査>は,調査票の回収時期を2回に分けたため,第1回と第2回とで回収数に相違がある。調査結果は,第1回及び第2回の各回収結果を1館あたりの数値に換算し,2回分を合計することにより1年間の値としてあつかうこととした。なお,1館あたりの数値は,内訳や合計をそれぞれの有効回答数で除して求めた。そのため,内訳の合計は図表中の合計(”計”と表記)とは一致しない。

4.3 借受冊数の月次統計(必須調査)

 統計数値は,和図書の借受冊数に限定し,同一自治体が設置する分館等の図書館からの借り受けは含めなかった。また,貸出元の種別を①都道府県内,②他県(所属ブロック内),③他県(所属ブロック外),④その他とした。①~③の各種別は,さらに館種としてa.都道府県立図書館,b.政令指定都市立図書館,c.市区町村立図書館に細分化した。a.及びb.については,「うちNDL総目で所蔵情報を得たもの」記入欄を設けた。④その他は,館種としてd.NDL,e.その他の館種(大学・専門等)に細分化した。d.については「うちNDL総目で所蔵情報を得たもの」記入欄を設けた。これを平成15年4月~9月(上半期),10月~平成16年3月(下半期)の2回に分け,各月の数値を回収した。(記入票については,「11.資料」参照)

図表5「借受冊数の月次統計回収状況」

館種 第1回(対象館数723) 第2回(対象館数723)
有効 無効 回答率 有効 無効 回答率
都道府県立図書館 55 0 100% 51 0 93%
政令指定都市立図書館中央館 13 0 100% 12 0 92%
政令指定都市立図書館分館 92 0 85% 74 0 69%
市区町村立図書館 377 4 69% 261 0 48%
537 4 74% 398 0 55%


※配布数は,第1回,第2回とも「2.2<統計調査>(5)回答数」参照
※館種ごとの調査対象館数に対する有効回答の割合を回答率とした。
※有効回答のみを集計の対象とした。
※数値に逐次刊行物を含む場合等は無効とした。

図表6「借受冊数の統計(1館あたり)」(単位:冊)

館種 貸出元種別 貸出元館種
県内 ブ内 ブ外 その他 県立 政令市立 市区町村立 その他
都道府県立図書館 282.8 83.8 66.3 30.6 130.1 35.6 267.1 30.6
政令指定都市立図書館中央館 1,152.4 119.2 80.6 64.6 552.8 128.1 671.4 64.6
政令指定都市立図書館分館 227.1 5.9 8.0 6.8 91.7 17.2 132.1 6.8
市区町村立図書館 792.2 27.0 14.7 12.6 406.7 52.1 375.2 12.6
641.4 32.4 21.3 15.1 322.0 45.9 327.1 15.1


※月次統計の詳細は「11.資料」参照。
※館種別1館あたりの数値(第1回の平均値+第2回の平均値)とした。
※貸出元種別のうち,”県内”は都道府県内,”ブ内”は所属ブロック内,”ブ外”は所属ブロック外,”その他”はNDL及びその他の館種(大学,専門等)を示す。
※貸出元館種のうち,”県立”は都道府県立図書館,”政令市立”は政令指定都市立図書館,”市区町村立”は市区町村立図書館,”その他”はNDL及びその他の館種(大学,専門等)を示す。

 図表7は,調査結果を館種別1館あたりの数値とし,貸出元種別との関係を示したものである。

図表7「借受館からみた貸出元(種別または館種)とその割合」

借受館からみた貸出元(種別または館種)とその割合

 資料の貸出元は,都道府県内が大部分を占め,所属ブロック内,所属ブロック外,その他となるにつれて減少している。都道府県立図書館の貸出元は県内で約6割を占めるが,残りの4割は所属ブロック内・所属ブロック外・その他からも借り受けている。政令指定都市立図書館中央館では約8割,市区町村立図書館では9割以上の貸出元が県内となっている。貸出元の館種では,都道府県立図書館と市区町村立図書館でほぼ2分されている。館種別にみた貸出元館種の割合は,都道府県立図書館では市区町村立図書館から借り受ける割合が多く,市区町村立図書館では県立図書館から借り受ける割合が多い。政令指定都市立図書館(中央館及び分館)は前二者の中間的な割合を示した。

 図表8は,貸出元種別からみた貸出元館種の1館あたり借受冊数と割合を示したものである。表中には,NDL総目で所蔵情報を得たものの1館あたり冊数と貸出元種別ごとの割合を示した。

図表8「貸出元種別からみた貸出元館種の1館あたり借受冊数」

貸出元種別 貸出元館種 NDL総目割合
うち,NDL総目で所蔵情報を得たもの
県立 政令市立 市区町村立 県立 政令市立 市区町村立
県内 281.0 42.9 317.5 6.7 1.9 1%
所属ブロック内 22.7 2.2 7.4 16.3 1.1 54%
所属ブロック外 18.4 0.8 2.1 16.3 0.6 79%
322.0 45.9 327.1 39.3 3.5 6%

貸出元種別からみた貸出元館種の割合

 貸出元種別が県内から所属ブロック内,所属ブロック外へ地域的に遠くへ離れるにつれ,貸出元の館種は都道府県立図書館の割合が増加している。NDL総目で所蔵情報を得たものについては,県内はほとんどなく,所属ブロック内や所属ブロック外で割合が高くなっていることから,県外の所蔵情報の調査に使われている様子がうかがえる。

 なお,NDLの所蔵資料については,1館あたり9.2冊,うちNDL総目で所蔵情報を得たものは6.1冊であった。平成15年度,公共図書館からNDLへのNDL-OPAC経由の貸出申込は,登録館(1,687館)あたり3.5件(合計5,889件)であった。申込件数には,複数冊の貸出依頼や貸出不能による謝絶など含むことを勘案すれば、NDL総目で所蔵情報を得、NDL-OPAC経由で貸出申込を行なった公共図書館が多く存在したと想像できる。

 図表9は,調査結果を館種別1館あたりの数値とし,平成15年度(2003年度)の月次統計を示したものである。

 都道府県立図書館及び政令指定都市立図書館分館は,年間を通じてほぼ一定の借受冊数を示した。政令指定都市立図書館中央館は上半期にやや多め(120冊~140冊)となり下半期にやや少なめ(100冊から120冊)となる傾向が見られた。市区町村立図書館は月次の統計でも冊数の増加傾向が見られた。

図表9「館種別1館あたり借受冊数の月次統計」

館種別1館あたり借受冊数の月次統計

4.4 刊行年代別借受冊数の月次統計(参考調査)

 借受資料の刊行年代を①1949年以前,②1950~1969年,③1970~1989年,④1990~1999年,⑤2000年~,⑥年代不明とした。これを平成15年4月~9月(上半期),10月~平成16年3月(下半期)の2回に分け,各月の数値を回収した。(記入票については,「11.資料」参照)

図表10「刊行年代別借受冊数の月次統計回収状況」

館種 第1回(対象館数723) 第2回(対象館数723)
有効 無効 回答率 有効 無効 回答率
都道府県立図書館 41 2 75% 39 2 71%
政令指定都市立図書館中央館 5 0 38% 4 0 31%
政令指定都市立図書館分館 58 2 54% 48 0 44%
市区町村立図書館 198 5 36% 159 1 29%
302 9 42% 250 3 35%


※配布数は,第1回,第2回とも「2.2<統計調査>(5)回答数」参照
※各館種ごと調査対象館数に対する有効回答の割合を回答率とした。
※有効回答のみを集計の対象とした。
※全件数が年代不明になっている場合等は無効回答とした。

図表11「刊行年代別借受冊数の統計(1館あたり)」(単位:冊)

館種 刊行年代
~’49 ’50~’69 ’70~’89 ’90~’99 2000~ 不明
都道府県立図書館 10.2 24.3 82.3 97.3 86.2 4.8
政令指定都市立図書館中央館 16.5 57.9 260.1 466.6 491.0 16.9
政令指定都市立図書館分館 1.5 5.9 35.8 64.3 81.7 1.6
市区町村立図書館 5.2 18.8 116.8 187.1 194.2 42.3
5.4 17.7 98.5 154.9 161.4 28.5


※月次統計の詳細は「11.資料」参照。
※館種別1館あたりの数値(第1回の平均値+第2回の平均値)とした。

 図表12は,館種別1館あたりの数値とし,刊行年代別の状況を示したものである。

図表12「借受資料の刊行年代別状況」

借受資料の刊行年代別状況

 借受資料の刊行年代については,1989年以前の資料で26%,1990年~1999年の資料で33%,2000年以降の資料で35%といった分布を示した。ここ十数年の間に刊行された資料の利用が多い。館種別に割合を取ってみると,都道府県立図書館は各年代とも比較的まんべんなく借り受けている。政令指定都市立図書館(中央館・分館)や市区町村立図書館はここ数年から十数年の間に刊行された資料を借り受ける傾向が見られた。

 図表13は,各年代別1館あたりの数値とし,平成15年度(2003年度)の月次統計を示したものである。

図表13「刊行年代別借受の月次統計(1館あたり)」

刊行年代別借受の月次統計(1館あたり)

 各年代とも年間を通じて大きな上下の変化は見受けられなかった。1990年以降の資料については,わずかに増加傾向が見られた。

4.5 貸出冊数の月次統計(参考調査)

 貸出先の種別を①都道府県内,②他県(所属ブロック内),③他県(所属ブロック外),④その他の館種(大学,専門等)とした。①~③の各種別は,さらに館種としてa.都道府県立図書館,b.政令指定都市立図書館,c.市区町村立図書館に細分化した。これを平成15年4月~9月(上半期),10月~平成16年3月(下半期)の2回に分け,各月の数値を回収した。(記入票については,「11.資料」参照)

図表14「貸出冊数の月次統計回収状況」

館種 第1回(対象館数68) 第2回(対象館数68)
有効 無効 回答率 有効 無効 回答率
都道府県立図書館 49 2 89% 45 2 82%
政令指定都市立図書館中央館 9 0 69% 8 0 62%
58 2 85% 53 2 78%


※配布数は,第1回,第2回とも「2.2<統計調査>(5)回答数」参照
※調査対象館数に対する有効回答の割合を回答率とした。
※有効回答のみを集計の対象とした。
※数値に逐次刊行物を含む場合等は無効とした。

図表15「貸出冊数の統計(1館あたり)」(単位:冊)

館種 貸出先種別 貸出先館種
県内 ブ内 ブ外 その他 県立 政令市立 市区町村立 その他
都道府県立図書館 10618.1 256.5 210.0 1289.7 124.6 270.4 10689.6 1289.7
政令指定都市立図書館中央館 4388.5 158.9 64.6 44.1 201.2 326.0 4084.7 44.1
9662.6 241.6 187.7 1099.0 136.4 278.8 9676.7 1099.0


※月次統計の詳細は「11.資料」参照。
※館種別1館あたりの数値(第1回の平均値+第2回の平均値)とした。
※貸出先種別のうち,”県内”は都道府県内,”ブ内”は所属ブロック内,”ブ外”は所属ブロック外,”その他”はその他の館種(大学,専門等)を示す。
※貸出先館種のうち,”県立”は都道府県立図書館,”政令市立”は政令指定都市立図書館,”市区町村立”は市区町村立図書館,”その他”はその他の館種(大学,専門等)を示す。

 図表16は,調査結果を館種別1館あたりの数値とし,貸出先種別や貸出先館種との関係を示したものである。

図表16「貸出館からみた貸出先(種別または館種)とその割合」

貸出館からみた貸出先(種別または館種)とその割合

 貸出先は,都道府県内がほとんどを占め,所属ブロック内,所属ブロック外となるにつれて減少している。貸出先の館種別割合では,市区町村立図書館が最も多く,次いで都道府県立図書館,政令指定都市立図書館となっている。その他の館種の割合は,貸出冊数の10%ほど認められた。

 図表17は,調査結果を館種別1館あたりの数値とし,平成15年度(2003年度)の月次状況を示したものである。

図表17「館種別1館あたり貸出冊数の月次統計」

館種別1館あたり貸出冊数の月次統計

 都道府県立図書館は1000冊を中心に上下しており,政令指定都市立図書館中央館は400冊を中心にほぼ横ばいの傾向が見られる。

4.6 <統計調査>結果のまとめ

 (1)館種別1館あたりの借受冊数をみると,ほとんどの借り受けは都道府県内で行われており,他県からの借り受けはわずかであった。貸出元となっている図書館は,都道府県立図書館と市区町村立図書館でほぼ2分された。他県からの借り受けにはNDL総目で所蔵情報を得たものの割合が多かった。

 (2)館種別1館あたりの刊行年代別借受冊数をみると,過去5年以内,5年~15年以内,15年より以前の資料で借受冊数はほぼ1/3ずつの割合を示した。

 (3)館種別1館あたりの貸出冊数をみると,ほとんどの貸出は都道府県内に対して行われており,他県への貸出はわずかであった。貸出先として最も多く占めた館種は市区町村立図書館である。



書誌事項:国内公共図書館の相互貸借等に関する調査報告書―国立国会図書館総合目録ネットワーク参加館状況調査のまとめ―. デジタル環境下におけるILL,ドキュメント・デリバリーとその運用基盤. (図書館研究シリーズ No.38). 2005. 9-19.