デジタルな世界は紙の本へのアクセスの格差を広げるのか(文献紹介)

2022年7月12日付で、OECDの生徒の学習到達度調査(PISA)の教育政策に関するリサーチノートである“Pisa in Focus”の118号として、“Does the digital world open up an increasing divide in access to print books?”が掲載されました。著者は池田京氏とGiannina Rech氏です。

2000年から2018年における生徒の読書状況に関するもので、家庭で所蔵する本の冊数や読書冊数、読書の媒体等について、生徒の社会経済的条件を踏まえた分析がなされています。

リサーチノートによると、PISO2018リーディングテストでは、本をほとんど読まない、または全く読まない生徒と比較して、紙媒体でより頻繁に本を読む生徒は49ポイント、デジタル機器でより頻繁に本を読む生徒は15ポイント高いスコアを獲得したとしています。また、PISA2018の結果からは、紙媒体とデジタル機器で同じ頻度で本を読む生徒、または紙媒体でより頻繁に本を読む生徒は、デジタル機器でより頻繁に本を読む生徒よりも0.5指数ポイント読書を楽しんでいることが分かったと述べています。

社会経済的に不利な立場にある生徒は、デジタル資源へのアクセスという点では追いついてきているものの、家庭での紙の本といった文化資本へのアクセスは減少しており、社会経済的格差は根強く残っていると述べ、こうした格差に関して教育関係者の注意を喚起しています。

Ikeda, M.; Rech, G. Does the digital world open up an increasing divide in access to print books? PISA in Focus. (118), OECD Publishing.
https://doi.org/10.1787/54f9d8f7-en

参考:
オーストラリア図書館協会(ALIA)、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2018年調査の結果を受け学校図書館への投資を教育大臣へ要望
Posted 2019年12月17日
https://current.ndl.go.jp/node/39763

桑田てるみ. 学校・学校図書館を取り巻く新しい読書活動-集団的・戦略的読書の視点から-. カレントアウェアネス. 2011, (309), CA1752, p. 9-13.
http://current.ndl.go.jp/ca1752