100万件の論文のオープンアクセス出版から学んだこと(記事紹介)

学術情報流通に関連した多様な話題を提供する学術出版協会(Society for Scholarly Publishing:SSP)運営のブログ“The Scholarly Kitchen”に、2021年12月7日付けで記事“What Can We Learn from One Million Open Access Articles?”が掲載されています。筆者はSpringer Nature社の出版部長であるSteven Inchcoombe氏です。

Springer Nature社は2005年1月にJournal of Biomedical Scienceに掲載された論文をはじまりとして、これまでに100万件の論文を即時かつ完全に(immediately and fully)オープンアクセス(OA)で出版してきました。記事の中では、北米のシェアは18%であり、米国の助成団体のゴールドOAへの関与が比較的少ないこと等、100万件の論文の分析結果が述べられています。

現在必要とされる取り組みとして、第一に、所有している全ての完全でないOAジャーナルを転換ジャーナルに移行し、OAコンテンツを増加させることを挙げ、2024年までに半数を超える同社の論文をOAにすることを目標にしています。第二に分野に関係なくOA論文を公開できるようにする必要があること、第三にOAへの移行に課題がある地域においてその地域に適合した解決策を見つけることが挙げられています。

今後の展望として、助成団体、研究機関、コンソーシアムがゴールドOAを研究の優先的な出版オプションとして明確に位置付ける方針にコミットする必要があるとしています。また、購読料に依存しており持続可能ではなく、研究者が望む出版者版をペイウォールの背後に置いてしまうグリーンOAから離れる必要があると述べられています。

Guest Post: What Can We Learn from One Million Open Access Articles?(The Scholarly Kitchen, 2021/12/7)
https://scholarlykitchen.sspnet.org/2021/12/07/guest-post-what-can-we-learn-from-one-million-open-access-articles/

参考:
Springer Nature社が出版したオープンアクセス論文が100万件を突破
Posted 2021年12月6日
https://current.ndl.go.jp/node/45279

Springer Nature社、論文のバージョンに対する研究者の意識・選好に関する調査報告書を公開
Posted 2021年2月19日
https://current.ndl.go.jp/node/43337

CA1990 – 動向レビュー:プランS改訂版発表後の展開―転換契約等と出版社との契約への影響 / 船守美穂
カレントアウェアネス No.346 2020年12月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1990

CA1977 – 動向レビュー:学術雑誌の転換契約をめぐる動向
カレントアウェアネス No.344 2020年6月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1977

オープンアクセス(OA)の現状:世界の論文の約28%、利用者が探している論文の約47%はOA
Posted 2018年2月14日
https://current.ndl.go.jp/node/35486

欧州4カ国において、ゴールドOAで論文を発表する責任著者の割合が70%以上に Springer Natureが発表
Posted 2017年10月24日
https://current.ndl.go.jp/node/34885

Springer社が公開するオープンアクセス論文数が20万件を突破
Posted 2014年7月22日
https://current.ndl.go.jp/node/26618