オーストラリア研究会議、プレプリントへの言及を含む研究助成申請を却下:研究者から抗議の声(記事紹介)

Nature誌のオンライン版に、2021年8月25日付けで記事“Preprint ban in grant applications deemed ‘plain ludicrous’”が掲載されています。オーストラリアの主要な研究助成機関であるオーストラリア研究会議(Australian Research Council:ARC)が、プレプリントへの言及を含む研究助成申請を却下したことと、その決定をめぐる研究者からの抗議の声を取り上げています。

ARCは、プレプリント等の査読を経ていない資料に言及しているという理由で、フェローシップ申請書20件以上を不適格扱いとしました。研究者らは、ARCの姿勢は応募者が最新の研究を参照することを制限するものであり、現在の出版慣行及びオーストラリア国外の研究助成機関の方針とも相反していると非難しています。

ARCは、2020年9月に導入したルールにおいて、申請書におけるプレプリントへの言及を認めないこととしました。ARC側では大学の研究室に対し変更内容の説明は行ったと述べていますが、研究者側では申請者への指示が明確でなかったと主張しています。記事では、カナダ・ドイツ・デンマーク・スペイン等の各国において研究助成申請時のプレプリント引用は一般的に行われており、欧州研究評議会(ERC)も引用を認めていることも紹介しています。

Preprint ban in grant applications deemed ‘plain ludicrous’(Nature, 2021/8/25)
https://doi.org/10.1038/d41586-021-02318-8

参考:
2020年の新型コロナウイルス感染症の大流行は学術出版・研究成果公開にどのような影響を与えたか
Posted 2021年1月13日
https://current.ndl.go.jp/node/42965

プレプリントがもたらす利益と危険:米・スタンフォード大の研究者らの見解(記事紹介)
Posted 2020年4月15日
https://current.ndl.go.jp/node/40775