英・デジタル保存連合(DPC)、“Safeguarding the Nation’s Digital Memory”プロジェクトの評価報告書を公開

2021年7月14日、英・デジタル保存連合(DPC)は、“Safeguarding the Nation’s Digital Memory”プロジェクトの評価報告書の公開を発表しました。デジタル保存のリスク管理のための共同アプローチを確立し、統計的なリスク管理手法をデジタル遺産の領域に導入することを目的として実施されたプロジェクトです。

同プロジェクトは、英国の国営宝くじ文化遺産基金(The National Lottery Heritage Fund)からの助成を受けて、DPCと英国国立公文書館(TNA)、英・ウォーリック大学など英国のアーカイブズ・コミュニティとの協力により行われました。実施期間は2020年1月から12月までの1年間でした。

評価報告書では、得られた主な知見、長所、短所、成果を要約しており、プロジェクトは所期の成果を満たし、いくつかの点ではそれ以上の成果を実現できたと結論付けています。また、プロジェクトの成果をさらに発展させるための提言も含まれています。

発表では、プロジェクトの重要な成果として、デジタル保存におけるリスクの定量評価を支援するツールDiAGRAMを挙げています。DiAGRAMは、ベイジアンネットワークに基づいた方法論を使用してデジタル保存におけるリスクを定量化し、1つ以上のリスク要因が変化した場合の結果を比較する機能を提供します。

DPCのグッドプラクティス&スタンダード部門の責任者であるJenny Mitcham氏のコメントも掲載されています。同氏は、将来的にプロジェクトがもたらす効果として、成果物であるツールの使用がアーカイブズ・コミュニティで勢いを増すこと、ツールを用いて行った決定のインパクトが実感されることを挙げ、その実現にはしばらく時間がかかるだろうと予測しています。

Safeguarding the Nation’s Digital Memory project: Evaluation Report now available(DPC, 2021/7/14)
https://www.dpconline.org/news/safeguarding-the-nations-digital-memory-report

Safeguarding the Nation’s Digital Memory: Project Evaluation Report for the National Archives [PDF:52ページ]
http://doi.org/10.7207/op21-01

関連:
DiAGRAM – The Digital Archiving Graphical Risk Assessment Model
https://nationalarchives.shinyapps.io/DiAGRAM-dev/
※DiAGRAMのプロジェクトページです。

参考:
デジタル保存におけるリスクの定量評価を支援するツールDiAGRAM(記事紹介)
Posted 2020年7月6日
https://current.ndl.go.jp/node/41431

E2361 – 英・デジタル保存連合と「デジタル保存賞」の来し方
カレントアウェアネス-E No.409 2021.03.04
https://current.ndl.go.jp/e2361