新型コロナウイルス感染症拡大下でのプレプリントの出版率と被引用数(文献紹介)

2021年3月3日、オープンアクセスジャーナルPeer Jが、” Publication rate and citation counts for preprints released during the COVID-19 pandemic: the good, the bad and the ugly”と題した論文を公開しました。著者はエクアドルのサン・フランシスコ・デ・キト大学のDiego Añazco氏、Bryan Nicolalde氏ら7名です。論文では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響を受けて数多くのプレプリントが公開されてきたことを背景として、これらのプレプリントがどの程度学術雑誌で出版され、引用されているか調査を行っています。

調査の対象となったプレプリントは、2020年1月1日から2020年5月31日までにbioRxiv、medRxiv、Research Squareに投稿されたCOVID-19に関連する5,061報のプレプリントです。5,061報のプレプリントのうち、学術雑誌で出版されたものは288報(5.7%)であることが報告されています。学術雑誌で出版されたものは学術雑誌論文としてもプレプリントとしても、学術雑誌で出版されていないものより被引用数が高いことが明らかとなっています。

学術雑誌で出版される割合が高いプレプリントサーバとしてmedRxivを挙げています。一方、bioRxivに投稿されるものは他のプレプリントサーバよりも被引用数が高く、プレプリントサーバへの投稿から学術雑誌での出版までの期間が最も短いことが報告されています。

Añazco D, Nicolalde B, Espinosa I, Camacho J, Mushtaq M, Gimenez J, Teran E. 2021. Publication rate and citation counts for preprints released during the COVID-19 pandemic: the good, the bad and the ugly. PeerJ 9:e10927 https://doi.org/10.7717/peerj.10927

参考:
2020年の新型コロナウイルス感染症の大流行は学術出版・研究成果公開にどのような影響を与えたか
Posted 2021年1月13日
https://current.ndl.go.jp/node/42965

新型コロナウイルス感染症関連論文が撤回されるリスクを最小限に抑えるために最適な査読プロセス(文献紹介)
Posted 2020年12月3日
https://current.ndl.go.jp/node/42680

“C19 Rapid Review Initiative”の参加メンバー数が20に到達:新型コロナウイルスに関する研究成果の査読・公開の迅速化を目指す学術出版社らによる共同イニシアチブ
Posted 2020年8月21日
https://current.ndl.go.jp/node/41799