2021年1月28日付で、米国医師会（JAMA）が刊行するオープンアクセス（OA）の査読誌“JAMA Network Open”に、米・スタンフォード大学メタリサーチ・イノベーションセンターのValentin Danchev氏を筆頭著者とする論文“Evaluation of Data Sharing After Implementation of the International Committee of Medical Journal Editors Data Sharing Statement Requirement”が掲載されています。
同論文は、医学雑誌編集者国際委員会（International Committee of Medical Journal Editors：ICJME）が臨床試験を報告する投稿論文に「データ共有宣言（Data Sharing Statement）」の提出を求めるようになった2018年7月1日以降の時期について、その効果等の検証を行った結果を報告する内容です。 著者らは、ICJMEの会員で主要な国際的医学雑誌であるJAMA、Lancet、New England Journal of Medicine（NEJM）の3誌に掲載された論文について、臨床試験データ共有の実施状況等の評価を行いました。2018年7月1日から2020年4月4日の期間に、これらの3誌で発表された487件の論文を対象としています。
著者らは検証の結果として、7割弱の対象論文が「データ共有宣言」を掲載していることなどを報告しています。これらの論文の大半では、匿名化された個別被験者のデータには、著者、リポジトリ、企業のいずれかへのリクエストによりアクセス可能とされています。リポジトリでデータ共有することを宣言した論文については、エンバーゴや規制当局の承認待ちのために未登録の事例が多く、2020年4月10日時点で実際にリポジトリに登録してデータ共有を行っている事例は2割程度であることなどを指摘しています。
著者らは結論として、多くの論文が臨床試験データの共有を宣言している一方で、実際のデータの可用性は必ずしも高くないことを踏まえて、各雑誌や研究助成機関に対して、エンバーゴ・データへアクセスするための要件・データの利用条件に関する標準化を進めることなどを提唱しています。
Danchev, Valentin. et al. Evaluation of Data Sharing After Implementation of the International Committee of Medical Journal Editors Data Sharing Statement Requirement. JAMA Network Open. 2021, 4(1), e2033972.
https://dx.doi.org/10.1001%2Fjamanetworkopen.2020.33972
関連：
Taichman, Darren B. et al. Sharing Clinical Trial Data: A Proposal From the International Committee of Medical Journal Editors. Annals of Internal Medicine. 2016, 164(7), p. 505-506.
https://doi.org/10.7326/M15-2928
Taichman, Darren B. et al. .Data Sharing Statements for Clinical Trials: A Requirement of the International Committee of Medical Journal Editors. Annals of Internal Medicine. 2017, 167(1), p. 63-65.
https://doi.org/10.7326/M17-1028
ICMJE、会員雑誌での臨床試験報告書の出版にデータ共有ステートメントを要求（STI Updates，2017/6/14）
https://jipsti.jst.go.jp/johokanri/sti_updates/?id=9794
参考：
アディクション医学研究の透明性と再現可能性の検証（文献紹介）
Posted 2020年8月12日
https://current.ndl.go.jp/node/41719
米国国立医学図書館（NLM）、臨床試験登録サイトClinicalTrials.govの機能改善に関する情報提供依頼書を公開
Posted 2020年1月10日
https://current.ndl.go.jp/node/39926
生物医学・臨床研究データの共有（記事紹介）
Posted 2011年2月18日
https://current.ndl.go.jp/node/17636
