オンラインを利用した医療情報の検索行動におけるヘルスリテラシーの役割:米・ミネソタ州の成人を対象とした横断調査(文献紹介)

2021年1月27日付で、医療分野のイノベーションや情報技術を扱ったオープンアクセスの査読誌“Journal of Medical Internet Research”(JMIR)の第23巻第1号に、米国の社会福祉・公衆衛生分野の研究者らによる共著論文“Role of Health Literacy in Health-Related Information-Seeking Behavior Online: Cross-sectional Study”が掲載されています。

著者らはインターネットによる医療情報検索行動の水準や、ヘルスリテラシー・情報技術へのアクセス状況・社会人口統計学的な特徴が検索行動に与える影響関係等を探ることを目的に、ミネソタ州の成人の住民を対象とした調査を実施しました。米国国立衛生研究所(NIH)の「全国医療情報動向調査(Health Information National Trends Survey:HINTS)」、米国疾病管理予防センター(CDC)が開発した生活習慣病リスク調査のための「行動危険因子サーベイランスシステム(Behavioral Risk Factor Surveillance System:BRFSS)」の質問票等を参考に、医療情報の取得におけるインターネットの利用状況やヘルスリテラシーのレベル、利用できる情報機器等に関するアンケート調査が行われ、回答者の社会人口統計学的な特徴を考慮した多変量解析を実施しています。

著者らは614人から得た有効回答に基づいて、ヘルスリテラシーのレベルが高く、多様な情報機器を利用可能な回答者ほど、インターネット上で質の高い医療情報検索を行っていることなどを報告しています。また、高等教育を修めた住民にこのような回答者が多く見られたことや、医療情報のオンライン提供がますます増大していることを踏まえて、情報アクセスに関する既存の格差が医療情報検索の水準の格差に直結している可能性を指摘しています。

Lee, Hee Yun et al. Role of Health Literacy in Health-Related Information-Seeking Behavior Online: Cross-sectional Study. Journal of Medical Internet Research. 2021, 23(1), e14088.
https://doi.org/10.2196/14088

参考:
E2186 – 情報メディア学会第18回研究大会<報告>
カレントアウェアネス-E No.378 2019.10.24
https://current.ndl.go.jp/e2186

E2215 – 大図研京都セミナー「メディアドクター研究会 in京都」開催
カレントアウェアネス-E No.383 2020.01.16
https://current.ndl.go.jp/e2215

E2270 – 米国のオピオイド危機と公共図書館の対応に関する研究報告書
カレントアウェアネス-E No.393 2020.06.25
https://current.ndl.go.jp/e2270

遠隔医療受診のための施設としての地方の公共図書館の可能性:米バージニア大学(UVA)に所属する看護学研究者の研究から(記事紹介)
Posted 2020年8月27日
https://current.ndl.go.jp/node/41840