図書館情報学分野における実務者の論文の「学術的インパクト」(文献紹介)

2021年1月に刊行された、米国の大学・研究図書館協会(ACRL)の“College and Research Libraries(C&RL)”のVol.82, no.1に、国立台湾大学のチャン(Yu-Wei Chang:張郁蔚)教授による論文“Academic Impact of Articles by Practitioners in the Field of Library and Information Science”が掲載されています。

同論文は図書館情報学分野において、実務者(practitioner)の執筆した論文の「学術的インパクト(academic impact)」に対する分析の結果・考察等を報告するものです。出版後比較的早期に学術論文から引用されることを「学術的インパクト」とし、図書館員に代表される実務者の論文と研究者の論文とを比較・分析する研究が行われました。2005年から2014年の期間に、論文著者の職名が識別可能な図書館情報学分野の学術誌7誌で発表された合計1,388件の論文を比較・分析の対象としています。

著者は比較・分析の結果として、実務者の論文と研究者の論文の「学術的インパクト」に有意差が認められなかったことや、実務者と研究者が共著で執筆した論文は、実務者同士・研究者同士の共著論文よりも早期に引用される傾向にあることなどを報告しています。

著者は単著論文全般と共著論文全般との間には、「学術的インパクト」について有意差が認められたことも踏まえて、図書館情報学分野において、実務者と研究者による共著論文の発表は、被引用数やインパクトを高める上で有益であると示唆されることなどを指摘しています。

Chang, Yu-Wei. Academic Impact of Articles by Practitioners in the Field of Library and Information Science. C&RL , 82(1), 2021, p. 59-74.
https://doi.org/10.5860/crl.82.1.59

参考:
E1937 – 図書館員に研究マインドを:実務と理論双方の発展のために
カレントアウェアネス-E No.329 2017.07.27
https://current.ndl.go.jp/e1937

E1978 – ラウンドテーブル「図書館情報学研究と科研費」<報告>
カレントアウェアネス-E No.338 2017.12.07
https://current.ndl.go.jp/e1978