米国における下院選挙・大統領選挙の投票結果と公共図書館の利用状況との間の関連性の調査(文献紹介)

2020年12月15日付で刊行された、カナダ・アルバータ大学のラーニングサービス部門が刊行する季刊誌“Evidence Based Library and Information Practice”(EBLIP)の第15巻第4号に、カンザス州のエンポリア州立大学の大学院生であるルンド(Brady D. Lund)氏ら3人の共著論文として、“Election Voting and Public Library Use in the United States”が掲載されています。

著者らは、米国における下院選挙・大統領選挙の投票結果と公共図書館の利用状況との間に相関関係が存在するかどうかの調査を実施し、内容や考察を同論文で報告しました。調査の情報源には、2010年・2012年・2014年・2016年の米国連邦議会の下院選挙、2012年・2016年の米国大統領選挙の投票結果、及び米国博物館・図書館サービス機構(IMLS)による公共図書館の概況調査で示された2010年・2012年・2014年・2016年の公共図書館の利用統計が用いられています。

著者らは、IMLSのデータと国勢調査のデータから算出した各州における1人当たりの公共図書館への来館回数を縦軸に、選挙の投票データを用いた各州における民主党の候補者へ投票した有権者の割合を横軸にとるプロット図を作成し、相関関係について検討を行いました。

著者らは検討の結果として、選挙の投票結果と公共図書館の利用状況との間には有意な相関関係が認められなかったことを報告しています。相関関係が否定された大きな要因として、2010年から2016年の期間に、図書館の利用統計の傾向は比較的一貫していた一方で、選挙の投票結果には大きな変動が確認されることを挙げています。

同論文は、民主党に関するデータのみを考慮したこと、政治的傾向を確認するには設定した期間が短すぎることなどの調査の限界に留保しつつ、調査で示された結果は、公共図書館のアドヴォカシーやアウトリーチの局面で、州の政治的傾向とは独立し、政治的に中立な公共財としてアピールする際に用いることができる、としています。

Lund, Brady D.; Hendrickson, Beth L.; Walston, Matthew. Election Voting and Public Library Use in the United States. Evidence Based Library and Information Practice. 2020, 15(4), p. 4-15.
https://doi.org/10.18438/eblip29824

参考:
米国博物館・図書館サービス機構(IMLS)、公共図書館の概況調査の2017年度版のレポートを公開
Posted 2020年7月17日
https://current.ndl.go.jp/node/41527

米国図書館協会会長、選挙後の図書館や図書館員が果たすべき役割についての声明を発表
Posted 2016年11月16日
https://current.ndl.go.jp/node/32940