公共図書館員の意欲低下経験に関する質的研究(文献紹介)

2020年12月14日付で刊行された、カナダ国内の図書館協会のネットワーク“The Partnership”の“Partnership: the Canadian Journal of Library and Information Practice and Research” Vol. 15 no.2に、公共図書館員の意欲低下経験に関する論文“The Public Librarian Low-Morale Experience: A Qualitative Study”が2021年1月4日付で公開されました。

同論文は、米国のウィンスロップ大学に所属するKaetrena Davis Kendrick氏によるもので、現役の公共図書館員または元公共図書館員20人を対象に実施した半構造化インタビューの分析結果がまとめられています。意欲の低下が進む過程や、公共図書館員の意欲低下経験に特有の影響因子を明らかにすることが研究課題として挙げられています。

論文の中では、一般的な意欲低下経験について、契機となる出来事の発生、出来事の影響や出来事への反応、長期的な迷惑行為およびそれらへの反応、対処戦略や緩和の努力等回復に向けての動き、意欲低下の長期的影響、回復、教訓といったステージが提示されています。また、公共図書館員へのインタビュー結果をもとに、精神的嫌がらせや無視、暴力をはじめとした迷惑行為の種類、迷惑行為等への精神的・身体的・認知的反応、業務への影響、解決・回復方法についてまとめられています。

公共図書館員の意欲低下に関する特有の影響因子としては、個人の安全や健康が脅かされる状況に直面すること、社会的文脈、組織体制や職場の文化をはじめとしたシステム等が述べられています。

Kendrick, Kaetrena Davis. The Public Librarian Low-Morale Experience: A Qualitative Study. Partnership: the Canadian Journal of Library and Information Practice and Research, 15(2), 2020, 32p.
https://doi.org/10.21083/partnership.v15i2.5932

参考:
E2340 – 感情労働者たる図書館職員を保護するための指針(韓国)
カレントアウェアネス-E No.405 2020.12.24
https://current.ndl.go.jp/e2340

職員が利用者から受ける暴力・暴言の増加:カナダ・トロント公共図書館(TPL)の事例(記事紹介)
Posted 2020年3月5日
https://current.ndl.go.jp/node/40412

CA1037 – 図書館職員の職務満足感 / 長嶋左央里
カレントアウェアネス No.195 1995年11月20日
https://current.ndl.go.jp/ca1037