デジタル時代における特別コレクションとアーカイブのインパクト測定(文献紹介)

2020年11月28日付で、欧州研究図書館協会(LIBER)の季刊誌“LIBER QUARTERLY”の第30巻第1号(2020)掲載の論文“Measuring the impact of special collections and archives in the digital age: opportunities and challenges”が公開されました。

同論文は、特別コレクションに関する課題解決等を目的とした英国研究図書館コンソーシアム(RLUK)のプロジェクト“Special Collections Programme(SCP)”の枠組みで実施された、特別コレクションやアーカイブのインパクト測定に関する調査をもとにしています。調査はオンラインで実施され、RLUK参加機関のうち英国やアイルランドの16の大学図書館・研究図書館から回答が寄せられました。データの集計および分析は、2018年6月から8月の間に行われました。

結果の箇所では、特別コレクションやアーカイブの主な利用者は研究者と学生であること、インパクト測定のために一部の館は図書館独自の基準を用いているものの、大部分の館が所属する大学の基準を採用していること等が述べられています。また、多くの図書館が、展示や教育活動への関与等、特別コレクションのインパクトを高める活動へ定期的に関わっており、所属組織内でのコレクションの利用状況は把握できていると回答しています。

一方で、各館の特別コレクションの学外における利用状況の把握が困難であること、デジタルリソースをはじめとした各館のサービスや活動のインパクトを測定するための構造的手法がないこと等が課題となっています。同論文では、課題を解決するために、館内のIT担当をはじめとした他部局と協力して新しいツールやアプローチを導入する等の4つの推奨事項を提示しています。その他、人材育成への投資や、インパクト測定の際に質的調査と量的調査を組み合わせること等に言及しています。

Kamposiori, C. Measuring the impact of special collections and archives in the digital age: opportunities and challenges. LIBER Quarterly, 30(1), 2020, pp.1–31.
http://doi.org/10.18352/lq.10345

Special Collections Programme(RLUK)
https://www.rluk.ac.uk/scp/

参考:
英国研究図書館コンソーシアム(RLUK)、特別コレクションのインパクト評価に関する報告書“Evidencing the Impact and Value of Special Collections”を公開
Posted 2019年3月12日
https://current.ndl.go.jp/node/37759

E2023 – 特殊コレクション・アーカイブ資料のサービス評価統計の地平
カレントアウェアネス-E No.346 2018.05.17
http://current.ndl.go.jp/e2023