パキスタンの7大学の図書館における新型コロナウイルス感染症対応(文献紹介)

2020年11月6日付で、Elsevier社が刊行する査読誌“The Journal of Academic Librarianship”に、パキスタンの7大学の図書館における新型コロナウイルス感染症対応を扱った論文のオンライン速報版(In Press, Journal Pre-proof)が公開されています。

著者らは、新型コロナウイルス感染症の拡大期におけるパキスタンの大学図書館の業務実践・サービス形態・運営戦略・果たした役割などの対応状況を調査する目的で、パキスタン国内の7大学の図書館長へインタビュー調査を行いました。インタビュー調査の内容及び分析結果から主に以下のことを報告しています。

・大半の大学図書館は感染症拡大中に来館サービスを制限していたが、ウェブサイトを中心としたオンライン経由の情報提供により利用者とのコミュニケーションを継続していた
・大学のポータルサイトやソーシャルメディアの利用は低調で、電話・WhatsApp・電子メールによって利用者とのコミュニケーションをとることが多かった
・図書館職員は主に在宅勤務に従事していたが、24時間休みなく職場と接続している状況や、新しい環境に対応した明確な業務方針が欠如していたことで、強い負担感を持っていたことが報告された
・国内のデジタルディバイド問題、利用者のデジタルリテラシーの不足、インターネット普及率の低さ等がオンラインサービス移行の障害となり、図書館のオンラインリソース等の利用があまり進まなかった

著者らは調査の結果から、図書館のオンラインサービスへの需要が高まっている一方で、利用者側にオンラインサービスを受け取るための環境が整っていない状況を指摘し、パキスタンのような発展途上国において、図書館が十分な役割を果たすための必要な推奨事項を示しています。

Rafiq, Muhammad. University libraries response to COVID-19 pandemic: A developing country perspective. The Journal of Academic Librarianship. 2020, 102280.
https://doi.org/10.1016/j.acalib.2020.102280

参考:
米・ランド研究所、新型コロナウイルス感染症拡大下の学校教育における生徒のデジタルディバイド問題に関する調査報告書を公開
Posted 2020年10月7日
https://current.ndl.go.jp/node/42199

国際図書館連盟(IFLA)、デジタルデバイド解消に関する文書に署名
Posted 2020年10月20日
https://current.ndl.go.jp/node/42303

英国の大学図書館における学生のメンタルヘルス・良好な精神状態への支援:新型コロナウイルス感染症の拡大以前との比較(文献紹介)
Posted 2020年10月19日
https://current.ndl.go.jp/node/42295