学術雑誌の研究データポリシーの強度に影響を与える要因(文献紹介)

2020年10月13日、オープンアクセスジャーナルPeer Jが、”Data sharing policies of journals in life, health, and physical sciences indexed in Journal Citation Reports”と題した論文を公開しました。著者は韓国・梨花女子大学校のJihyun Kim氏ら5名です。

多くの学術雑誌は、データに関するポリシーを設けてきており、データ共有の実施、提出するデータの種類等が定められています。論文では、インパクトファクター、主題分野、ジャーナル出版者の種別、出版者の地理的位置等の要因が、データ共有ポリシーの強度にどのように関連しているかについて探られています。

対象となったジャーナルは、Web of Scienceの2017年版のJournal Citation Reportsの178の各カテゴリの各四分位数(Q1、Q2、Q3、Q4)のトップジャーナルです。このうち、生命科学、健康科学、物理科学の分野の700件が対象となりました。これらのジャーナルのWebサイトを著者が個別に閲覧することで、ジャーナルのデータ共有ポリシーを分類し、個々のジャーナルの特性を抽出しています。

対象となった700件のジャーナルのうち、308件にはデータ共有ポリシーがなく、125件には弱いポリシーがあり、267件には強いポリシー(データ共有を期待または義務付け)がありました。インパクトファクターの四分位数は、データ共有ポリシーの強度と正の相関があることが報告されています。また、商業出版者は、非営利の出版者よりも、ポリシーを設けていないよりも弱いポリシーを設けている傾向があることが述べられています。欧州の出版者のジャーナルは、弱いポリシーよりも強いポリシーを設けている確率が高いとしています。これらの結果はデータ共有への商業出版者の関与の増加を示していると述べています。また、データ共有を奨励および義務付けるヨーロッパのイニシアティブが、関連するジャーナルの強いデータ共有ポリシーの策定に影響を与えている可能性が指摘されています。

Kim J, Kim S, Cho H, Chang JH, Kim SY. 2020. Data sharing policies of journals in life, health, and physical sciences indexed in Journal Citation Reports. PeerJ 8:e9924 https://doi.org/10.7717/peerj.9924

参考:
SPARC Europe、欧州の研究助成団体を対象としたオープンアクセス(OA)方針・研究データポリシーに関する調査報告書を公開
Posted 2019年10月4日
https://current.ndl.go.jp/node/39183