英国の大手独立系シンクタンクDemos、人工知能(AI)・機械学習等の新技術が研究部門に与える影響についての調査報告書を公開

2020年9月15日、英国の大手独立系シンクタンクDemosは、調査報告書“Research 4.0: Research in the age of automation”を公表したことを発表しました。

同報告書は、人工知能(AI)・機械学習をはじめとする第4次産業革命を特徴づける新技術について、特に学術研究に焦点を当ててこれらの技術が英国の研究部門に現在どのような影響を与えているのか、将来にわたってどのような影響を与え得るのかを理解するための調査プロジェクトに基づいて作成されました。英国の幅広い学術研究分野でこれらの新技術の導入が進んでいることを明らかにした2019年10月公表の中間報告書における議論を踏まえつつ、効果的な活用に必要な技能の研修や、環境の変容・学際的な共同研究の加速など、これらの新技術のさらなる普及のための段階にあることを述べています。

同報告書では調査の知見として、英国における研究の手法・プロセス・管理・エコシステムにこれらの新技術が与えている影響や、研究の脱中心化・官が積極的に後援する民間企業“National Champions”の増大・官による公共サービスへの積極的な投資・巨大テクノロジー企業と共に行う研究・英国の停滞の5通りのテーマによる将来予測シナリオなどが示されています。また、新型コロナウイルス感染症拡大により大学等が財政的にも危機に陥っていることを認識しつつ、英国が今後も世界最先端の研究の場としての地位を強化できるように、政策立案者や大学に対して、主に次の内容で提言しています。

・現行の16歳以降の生徒に対する教育カリキュラムについて、全ての生徒が新技術を効果的・適切に活用するための基礎的な素養を習得できるように見直すべきである
・英国中の全ての研究者へ利活用の機会を与えるため、研究用の計算機やデータ基盤の提供状況に関する全国的な検査を実施すべきである
・研究助成機関のUK Research and Innovation(UKRI)は、将来の研究開発費の支出において、経済・社会の利益になると認められる限り、研究機関によるAI等の新技術の利活用にインセンティブを与えることを検討すべきである
・大学は研究者の官民の流動性を高めるための措置を講じるべきである

Research 4.0: Research in the age of automation(Demos,2020/9/15)
https://demos.co.uk/project/research-4-0-research-in-the-age-of-automation-2/

Research 4.0: Research in the age of automation [PDF:32ページ](Demos)
https://demos.co.uk/wp-content/uploads/2020/09/Research-4.0-Report.pdf

Jisc response to Demos report, Research 4.0: Research in the Age of Automation(Jisc,2020/9/15)
https://www.jisc.ac.uk/news/jisc-response-to-demos-report-15-sep-2020

参考:
英国の大手独立系シンクタンクDemos、人工知能(AI)・ロボット工学等の新技術が研究部門の将来へ与える潜在的な影響に関する調査の中間報告書を公表
Posted 2019年10月23日
https://current.ndl.go.jp/node/39326

英国のデジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)が「国家データ戦略」を発表
Posted 2020年9月16日
https://current.ndl.go.jp/node/42016

E2272 – データサイエンス,機械学習,AIの責任ある運用のために
カレントアウェアネス-E No.393 2020.06.25
https://current.ndl.go.jp/e2272