機関リポジトリ収録コンテンツのアクセシビリティに関する調査(文献紹介)

米・テキサス州立大学の機関リポジトリに、2020年8月付けで、同大学の図書館員らによる調査レポート“Accessibility in Institutional Repositories”が掲載されています。

2019年の9月から11月にかけてメーリングリストにより実施したアンケート調査の結果を報告するものであり、学術図書館の機関リポジトリにおけるアクセシビリティにおける実践の概況把握と、機関リポジトリ収録コンテンツのアクセシビリティの平均レベル測定を目的としています。なお、レポートの冒頭では先行研究の整理も行われています。

アンケートは、北米研究図書館協会(ARL)が報告書シリーズ“SPEC Kit”の第358号として2018年に刊行した“Accessibility and Universal Design”での調査内容に基づき作成されました。20か国から145の回答が寄せられ、そのうち74%は米国、9%はカナダからであり、北米からの回答が大多数を占めています。

質問では、使用しているリポジトリ・プラットフォーム、収録コンテンツの種別、収録コンテンツ数、アクセシビリティに係るポリシーの整備状況、アクセシビリティへの取組の優先度上昇に影響する要素、コンテンツのアクセシビリティ向上のための取組、アクセシビリティ向上のためのPDF編集方法、テキストベースのコンテンツのアクセシビリティチェック手法等についての回答結果がグラフでまとめられています。

まとめの部分では、大部分の大学では機関リポジトリ収録コンテンツのアクセシビリティが望ましいレベルに達していないこと、アクセシビリティ向上を妨げる主な障壁にスタッフ・予算・専門的知識の不足があること、図書館界におけるアクセシビリティに関する基準やポリシーの策定が進んでいないこと等を指摘しています。

匿名化処理を経た調査の回答データも、米国テキサス州の学術図書館等のコンソーシアム“Texas Digital Library”が運用するデータセットのリポジトリ“Texas Digital Library”上で公開されています。

Waugh, L., Lyon, C., Shelton, A., Park, K., Hicks, W., & Lindsey, N. (2020). Accessibility in institutional repositories. (Report 1).
https://digital.library.txstate.edu/handle/10877/12389

参考:
北米研究図書館協会(ARL)が報告書シリーズ“SPEC Kit”第358号を公開:アクセシビリティ・ユニバーサルデザインがテーマ
Posted 2018年5月7日
https://current.ndl.go.jp/node/35947

米国テキサス州の学術図書館等のコンソーシアム“Texas Digital Library”、データリポジトリの運用開始について発表
Posted 2016年9月21日
https://current.ndl.go.jp/node/32577

E2268 – 英国の機関リポジトリにおけるウェブアクセシビリティ対応
カレントアウェアネス-E No.392 2020.06.11
https://current.ndl.go.jp/e2268