アディクション医学研究の透明性と再現可能性の検証(文献紹介)

2020年7月15日付で、依存症の関わるテーマを主に扱ったElsevier社刊行の査読誌“Addictive Behaviors”第112巻(2021年1月)に掲載予定の論文として、米国の医学研究者による共著論文“An evaluation of the practice of transparency and reproducibility in addiction medicine literature”が公開されています。

同論文はアディクション医学(addiction medicine)分野の研究における透明性・再現可能性の検証の結果を報告する内容です。著者らは、米国国立医学図書館(NLM)の目録上で「物質関連障害(substance-related disorder)」の件名が付与された雑誌に、2014年から2018年までに出版された文献をPubMedで検索し、これらの文献群から無作為抽出した300件の文献を検証の対象としました。検証の結果から次のようなことを報告しています。

・半数以上の文献はオープンアクセス(OA)で出版されていた

・実証研究の文献(Empirical publications)における研究の再現可能性は全体的に低調であり、研究データの可用性に言及した文献は11.48%であったが、臨床試験の事前登録、実験器具やソフトウェア等の研究機材の可用性、研究プロトコルの可用性、解析スクリプトの可用性に言及した文献はいずれも2%以下であった

・利益相反(conflict of interest)や研究助成元(funding sources)の申告は大半の文献でなされており、それぞれ75%、91%であった

著者らは検証の結果から、この分野においては、研究の透明性・再現可能性を促進するための実践が不十分であり改善の余地があることを指摘しています。

Adewumi, Mopileola Tomi et al. An Evaluation of the Practice of Transparency and Reproducibility in Addiction Medicine Literature. Addictive Behaviors. 2021, 112, 106560.
https://doi.org/10.1016/j.addbeh.2020.106560

参考:
CHORUS、加盟出版者の「データ可用性に関するポリシー」のインデックスを公開
Posted 2020年4月28日
https://current.ndl.go.jp/node/40858

E2018 – 「学術出版における透明性の原則と優良事例」第3版が公開
カレントアウェアネス-E No.345 2018.04.19
https://current.ndl.go.jp/e2018

E2162 – どの研究データを保存すべきか:英・Jiscによる調査レポート
カレントアウェアネス-E No.373 2019.07.25
https://current.ndl.go.jp/e2162