オランダの遺産機関におけるデジタル保存ツールの使用状況(記事紹介)

英・電子情報保存連合(DPC)の2020年8月10日付け記事において、オランダデジタル遺産ネットワーク(DDHN)のAnia Molenda氏による、オランダの遺産機関におけるデジタル保存ツール使用状況の調査報告書“The Use of Preservation Tools among Dutch Heritage Organizations”(2020年5月20日付け)が紹介されています。

2018年、DDHNのJoost van der Nat氏らは、オランダの遺産機関が自機関で利用できるデジタルアーカイブ又はデジタルリポジトリを有しているかを調査しました。Molenda氏は、この調査で「有している」と回答した27機関を対象として2019年に後継調査を行い、その結果を今回の報告書にまとめました。

後継調査は2種類の方法で行われました。一つ目はオンラインアンケートによるもので、デジタルコレクションの収録資料、提供方法、使用規格、保存ツールと協力に関する組織のニーズ、現在の課題、についての情報収集が行われました。二つ目はスプレッドシートのテンプレートを用いて行われ、ワークフローの各段階における使用ツール及びその使用目的等が調査されました。一つ目の調査には27機関中22機関が回答し、二つ目の調査には27機関中18機関が回答しました。

記事中では、後継調査が特に焦点を当てた内容として、デジタルファイルをアーカイブやデジタルリポジトリに取り込む前の処理段階(Pre-Ingest)においてどのようなツールが使用されているか、という点を挙げるとともに、以下のような調査結果を紹介しています。

・調査対象機関において111の異なる保存ツールが使用されており、概して1機関あたり1から10程度のツールを使用していたこと
・ソーシャルメディアの投稿や電子メールなど、新たな種類のデジタルメディア収集が広がっており、それに伴いアーカイブ機関が扱う新たなファイル形式も増加することから、今後使用される保存ツール数の増加が見込まれること
・デジタル資料の取得(acquisition)に際し資料製作者側とアーカイブ機関側でやりとりを行う段階は、アーカイブ機関が製作者とともに資料を分析できる機会でもあるが、この段階において資料が要求仕様に沿ったものかを評価するために保存ツールを使用しているケースはほぼ見られなかったこと
・重複排除、ファイル間の依存関係の特定、暗号化やパスワードにより保護されたファイルの特定のためには保存ツールはほとんど使用されていないように見えること

Trends in the Use of Digital Preservation Tools(DPC, 2020/8/10)
https://www.dpconline.org/news/trends-in-dp-tools

関連:
The Use of Preservation Tools among Dutch Heritage Organization [PDF:29ページ]
https://www.netwerkdigitaalerfgoed.nl/wp-content/uploads/2020/06/NDE-The-Use-of-Preservation-Tools-among-Dutch-Heritage-Organizations-juni2020-2.pdf
※DDHNのAnia Molenda氏による報告書です。

参考:
Open Preservation Foundation(OPF)、加盟団体へのアンケート調査結果のハイライトを公表:デジタル保存の現状を調査
Posted 2019年8月19日
https://current.ndl.go.jp/node/38810

オランダデジタル遺産ネットワークとOpen Preservation Foundation(OPF)、デジタル保存のツールをテストできる仮想研究環境を開発中
Posted 2020年7月30日
https://current.ndl.go.jp/node/41622