オーストラリア国立図書館によるアジア関係資料の収集範囲縮小への批判(記事紹介)

日本資料専門家欧州協会(EAJRS)のウェブサイトに、2020年5月28日付けで“National Library of Australia’s Asia collection”という記事が掲載されています。筆者はオーストラリア国立大学名誉教授のテッサ・モリス=スズキ氏であり、オーストラリア国立図書館(NLA)によるアジア関係資料の収集範囲縮小とアジア閲覧室の閉鎖に関し、NLA館長に再考を求めるための署名活動への参加を呼びかけています。

NLAは、数十年にわたる資料収集によりアジア関係資料の優れたコレクションを所蔵していますが、同記事によれば、国外で出版された日本・北朝鮮・韓国・東南アジア本土に関する資料収集を中止し、潜在的には中国・インドネシア・太平洋地域に関する資料の収集も大幅に削減するという新たな方針を決定しました。

同記事では、NLAのコレクションが利用できることを前提として、多くの国内の大学でアジア関係資料の収集が大幅に縮小されていることを指摘し、そのような状況を踏まえた上で今回のNLAによる方針変更を考える必要がある、としています。

また、Sydney Morning Heraldの2020年6月3日付けの記事では、オーストラリア労働党所属の政治家であるPenny Wong氏とTony Burke氏が、方針変更を批判し見直しを求めていることを紹介しています。両氏は、閣僚宛てに送った書簡の中で、オーストラリアがアジアにおける関係強化に取り組んでいる最中にこのような決定がなされたことは国益に反する、と述べています。

同記事は、NLAが2019年後半にアジア閲覧室を閉鎖したこと、NLAの方針変更の背景にオーストラリア政府の予算不足があることにも触れています。NLAの広報担当者からのコメントも掲載されており、アジア関係資料の利用は収集に要する費用に比べ少なく、限られた予算の中での優先順位付けの結果として方針変更が行われたことを説明しています。

National Library of Australia’s Asia collection(EAJRS, 2020/5/28)
https://www.eajrs.net/national-library-australias-asia-collection

Penny Wong accuses National Library of abandoning crucial Asian collections(Sydney Morning Herald, 2020/6/3)
https://www.smh.com.au/politics/federal/penny-wong-accuses-national-library-of-abandoning-crucial-asian-collections-20200602-p54ysx.html

※情報源のURLを修正しました。(2020/6/12)