米国の学術図書館員に必要とされる知識・技能・能力(文献紹介)

2020年3月に刊行された、米国の大学・研究図書館協会(ACRL)の“College and Research Libraries (C&RL)”のVol.81, no.2に、米国シモンズ大学図書館情報学大学院のLaura Saunders准教授による論文“Core Knowledge and Specialized Skills in Academic Libraries”が掲載されています。

今日の学術図書館では、図書館情報学と高等教育分野における大幅な変化・情勢に後れを取らずに対応することが課題となっています。同論文では、こうした課題を背景に著者が実施した、米国内の情報専門職や図書館情報学の教員に対する全国調査に基づいて、学術図書館員に現在必要とされる知識・技能・能力に関する回答状況の報告や、学術図書館員とそれ以外の情報専門職との回答内容の比較などが行われています。

調査は2017年から2018年にかけて行われ、「全般」「コミュニケーション」「ユーザーサービス」「管理」「技術」の5つのカテゴリーに分類された53の技能等のリストに対する「中核的」「非常に重要」「重要」「一部の専門家にのみ必要」「重要でない」の5つの尺度からの評価、リストに含まれていないが含むべきである技能等を記述する自由回答などで構成されています。調査には2,400件以上の回答がありました。

53の技能等のリストのうち、「職業倫理に対する知識」「情報源の評価・選定」「文化への理解力」「多様性と包摂性を基礎とする思慮深い実践」「対人コミュニケーション能力」「文章力」「利用者対応力」「検索技術」「様々なコミュニティとの交流」「チームワーク」の10項目が、学術図書館員の半分以上から「中核的」と回答されたことなどの調査結果が報告されています。また、学術図書館員以外の情報専門職の半分以上が、前に挙げた10項目と「レファレンスインタビューの能力」の11項目を、学術図書館員にとって「中核的」であると回答しています。論文では、学術図書館員とそれ以外の情報専門職で、学術図書館員にとって中核的とみなす技能等の項目は重なっているものの、回答者の割合は両者に相違が見られることなどの比較に基づく考察も行われています。

Saunders, Laura. Core Knowledge and Specialized Skills in Academic Libraries. College & Research Libraries, 81(2), 2020, p. 158-169.
https://doi.org/10.5860/crl.81.2.158

参考:
E1267 – 研究者のニーズ変化に対応する図書館員に必要なスキルとは
カレントアウェアネス-E No.210 2012.02.23
https://current.ndl.go.jp/e1267

研究データ管理、学術コミュニケーション・オープンアクセス支援業務における図書館員のコンピテンシーの分析結果が公表される
Posted 2016年6月17日
https://current.ndl.go.jp/node/31828

国立大学図書館協会、「大学図書館職員の専門性と専門研修のあり方について(報告書)」を公開
Posted 2016年4月8日
https://current.ndl.go.jp/node/31296