米国図書館協会(ALA)、テネシー州議会へ提出された図書館による未成年者への性的な内容を含む資料の提供可否を審議する「保護者審査会」設置を求める法案に読書の自由を脅かすとして反対を表明

2020年2月20日、米国図書館協会(ALA)は、米・テネシー州議会へ提出された法案“HB 2721”に対して、読書の自由を脅かすものであるとして反対の意を示した声明を公開しました。

“HB 2721”は、性的な内容を含む資料を利用に供している州内の全ての公共図書館に対して、自治体内の成人5人で構成される「保護者による図書館審査会(parental library review board)」の設置を義務付けるものです。審査会は公共図書館の提供する性的な内容を含む資料が未成年者にとって妥当かどうかを判断し、適切でないとみなされた資料について、公共図書館は未成年者がアクセスできないような措置をとらなければならないことを規定した内容となっています。また、図書館員が故意に法案の内容に従わなかったり、違反した場合には、最高500ドルの罰金・懲役、またはその両方が科せられることや、図書館が法案の内容に違反して未成年者へ性的な内容を含む資料を提供した場合には、州の助成金を受けられなくなることを明記しています。

ALAは声明の中で、利用者の読書の自由を脅かし「図書館の権利宣言」(Library Bill of Rights)で表明された専門職としての価値観・倫理に相容れないこと、もし採択されれば保護者の審査会に図書館資料の読書・閲覧・アクセスに関する最終決定権を委ねること、など同法案の問題点を挙げています。また、少人数の保護者がコミュニティの全ての利用者にとっての最善の資料を判断できるという同法案の発想は、コミュニティが多様な信念、アイデンティティ、価値観を持つ家族や個人で構成されているという事実を否定していることなどを指摘しています。

ALAはこれらの問題点を背景に、保護者による管理という名目で事実上の検閲を進めようとする“HB 2721”のような法案に対して強い反対の意を示しています。

ALA opposes proposed Tennessee law that threatens state’s freedom to read(ALA,2020/2/20)
http://www.ala.org/news/press-releases/2020/02/ala-opposes-proposed-tennessee-law-threatens-state-s-freedom-read

HB2721(Tennessee General Assembly)
http://wapp.capitol.tn.gov/apps/BillInfo/Default.aspx?BillNumber=HB2721&GA=111

参考:
日本マンガ学会、「自治体による「有害図書」指定範囲の拡大に対する反対声明」を発表
Posted 2018年10月12日
https://current.ndl.go.jp/node/36815

図書館問題研究会、「有害図書」に関する2つのアピールをウェブサイトに掲載
Posted 2018年9月25日
https://current.ndl.go.jp/node/36703

性的表現を含む漫画の貸出をめぐって(米国)
Posted 2007年1月16日
https://current.ndl.go.jp/node/5239

米オクラホマ州議会、子どもに「不適切」な本別置の法案は見送り
Posted 2006年4月18日
https://current.ndl.go.jp/node/3814