職員が利用者から受ける暴力・暴言の増加:カナダ・トロント公共図書館(TPL)の事例(記事紹介)

2020年2月2日、カナダ放送協会(CBC)が、トロント公共図書館(TPL)において、職員が利用者から受ける暴力・暴言が増加している問題を取り上げています。

報道では、同館職員は、唾を吐かれたり、言葉による脅迫や、物を投げつけられるといった、暴力・暴言を受けており、2011年には103件の暴力的で人を罵倒する行為と262件の脅迫的な言動がありましたが、2018年には、各々249件と623件へと増加していることが紹介されています。

TPLの職員組合からの声として、過去20年間で人員配置が15%減少したことによる分館における職員の少なさが問題の一部であるという意見や、2,100人の組合員を対象とした2018年の調査で、39%が仕事上安全ではない/37%が時々安全でないと感じると回答したことや、60%がTPLが安全な職場を提供していない、と回答したことを紹介しています。

また、当局の意見として、そのような問題の増加を非難し、職員もそれらの事件を記録化することの重要性を認識していることや、全体的な割合としては少ないものの深刻な問題として捉えており、職員の健康と安全を第一に考えていること、都市環境の問題であり職員の問題でもあるため、セキュリティを強化し、職員をバランス良く配置することで対応することや、ソーシャルワーカーを雇用し脆弱階層へのサービスを開発することや職員の研修を実施するといった、図書館の広報担当からの回答も紹介しています。

Librarians face increasing violence on the job, Toronto Public Library figures show(CBC, 2020/2/2)
https://www.cbc.ca/news/canada/toronto/toronto-library-violence-1.5447553

参考:
韓国・ソウル特別市、公共図書館の司書の労働者としての権利と処遇改善のための対策を実施すると発表:条例の制定・賃金標準案の策定・感情労働に関するガイドラインの作成等
Posted 2020年2月12日
https://current.ndl.go.jp/node/40223

CA997 – 図書館とセキュリティ / 小林昌樹
カレントアウェアネス No.188 1995.04.20
https://current.ndl.go.jp/ca997

CA1157 – 問題利用者への対処 / 長崎洋
カレントアウェアネス No.219 1997.11.20
https://current.ndl.go.jp/ca1157

CA1479 – 動向レビュー:「問題利用者」論の動向 / 樋山千冬
カレントアウェアネス No.274 2002.12.20
https://current.ndl.go.jp/ca1479