カナダ研究図書館協会(CARL)、カナダの記憶機関におけるデジタル保存の現状とニーズについての調査レポートを公開

2019年11月29日、カナダ研究図書館協会(CARL)は、カナダの記憶機関におけるデジタル保存の現状とニーズについての調査レポート“Final Report of the Survey on Digital Preservation Capacity and Needs at Canadian Memory Institutions, 2017-2018”の英語版及びフランス語版の公開を発表しました。

カナダにおけるデジタル保存活動の現時点の見取り図を提供し、存在するギャップや顕著に見られるニーズを特定することを目的として、CARLのデジタル保存ワーキンググループが実施した調査の成果を報告するものです。

調査は二つのフェイズからなり、第一フェイズでは、2017年10月から12月にかけて、CARLに所属する29機関を対象として調査が行われました。その後、2018年12月から2019年1月にかけて調査結果のアップデートが行われています。第2フェイズでは、より広いカナダの記憶機関を対象として2018年8月から9月に調査が行われ、両フェイズ合計で52機関から完全な回答が寄せられました。今回、回答結果のデータセットもあわせて公開されています。

調査では、組織とガバナンス、ポリシーと手順、資料へのアクセス提供方法、使用ツール、ストレージ、資金源や人的資源、デジタル化の実施状況、ボーンデジタル資料の収集有無など、デジタル保存に関し様々な切り口から計66の質問がなされました。

報告書の“Executive Summary”では、調査からは各記憶機関がデジタル保存において直面する課題が依然として多く存在することが判明したとし、その中でも、多くの機関が保存と長期アクセスに関連するミッションあるいはビジョンステートメントを有している一方で、デジタル保存が業務においてまだ優先されておらず、大きなリソースが振り分けられていないことを特筆しています。また、課題解決への取組として、カナダの全記憶機関が利用できるデジタル保存に関する研修やスキル向上のためのリソースがあれば有益であるとも述べています。

CARL Issues Final Report of Study on Digital Preservation Capacity in Canadian Institutions(CARL, 2019/11/29)
http://www.carl-abrc.ca/news/final-report-of-digital-preservation-capacity-study/

Final Report of the Survey on Digital Preservation Capacity and Needs at Canadian Memory Institutions, 2017-18 [PDF:69ページ]
http://www.carl-abrc.ca/wp-content/uploads/2019/11/Digital_preservation_capacity_finalreport_EN-1.pdf

回答結果のデータセット(Scholars Portal Dataverse)
https://doi.org/10.5683/SP2/8KLEPP

参考:
米・Ithaka S+R、専門家へのインタビューをもとにデジタル保存の現状と課題をまとめた報告書を公開
Posted 2018年10月31日
http://current.ndl.go.jp/node/36949

Open Preservation Foundation(OPF)、加盟団体へのアンケート調査結果のハイライトを公表:デジタル保存の現状を調査
Posted 2019年8月19日
https://current.ndl.go.jp/node/38810

米・Educopia Institute、米国におけるデジタルキュレーション及びデジタル保存の研修に関する調査プロジェクトの報告書“Sustaining Digital Curation and Preservation Training in the U.S.: Compiled Project Reports”を公表
Posted 2019年10月7日
https://current.ndl.go.jp/node/39200

E2200 – 組織内でデジタル保存の重要性を説明するためのガイド
カレントアウェアネス-E No.380 2019.11.21
https://current.ndl.go.jp/e2200