米・カリフォルニア大学バークレー校教員のオープンアクセス(OA)推進の動きに関する意識調査(記事紹介)

2019年11月12日、米国のITHAKA S+Rは、米・カリフォルニア大学バークレー校図書館と協力して同校教員に対して実施した、オープンアクセス(OA)推進の動きに関する意識調査とその結果を紹介した記事を公開しました。

カリフォルニア大学バークレー校図書館は、情報アクセスに関する障壁を取り除いて研究の影響力を最大限発揮できる出版のエコシステムを促進するため、OAの推進に多大な努力を費やしています。こうした問題に対する同校教員の意見を把握する目的で、2018年10月に同校教員2,748人のうち、全体の30%に当たる811人に対してアンケート調査を実施しています。

記事ではアンケート調査の結果に基づいて、同校教員のOA推進の動きに関する意識として、次のようなことが示されています。

・教員の大多数が従来の購読ベースの出版モデルがOA出版システムに転換することを歓迎している。研究成果を最大限アクセス可能にすることが研究成果の影響力を最大化するために重要な方法であることについて強い同意がある。生命科学・健康科学分野の教員がこの傾向をやや強く示している。

・教員は既存の出版社がOA出版モデルに転換することを望んでいる。多くの教員は研究成果をどの学術出版社で公表するかを重視している。

・出版行動は依然として伝統的な形式が重視されており、キャリアの長い教員よりキャリアの短い若手教員の方がその傾向は強い。研究成果そのものを評価すべきという様々なイニシアチブが展開されているにもかかわらず、9割以上の教員が研究成果の公表にあたって、雑誌のジャーナルインパクトファクター(JIF)の数値が高いことや分野内で著名であることを重視している。

・分野リポジトリや機関リポジトリを通して研究成果のプレプリント版を流通させることは、多くの分野、多くの若手教員にとって人気のある手段となっている。査読付き雑誌への掲載よりも早く研究コミュニティからのフィードバックを得られるため、プレプリント版の共有が非伝統的な出版手段の中でも主要なものとして認識されている。

・教員は広義のOAには支持を示しているが、同時にOAのために論文処理費用(APC)のような金銭的負担を伴うモデルには懸念を示している。教員は全体として、自由に研究成果にアクセスできる学術雑誌よりも無料で研究成果を出版できる学術雑誌へ支持を示している。これは人文科学等の外部資金による助成を受けづらい分野の教員に特にあてはまる。一方公的資金へ比較的アクセスしやすい生命科学分野等では自由に研究成果にアクセスできることへの支持が強い。

アンケート結果に基づく完全な報告書は、同大学の機関リポジトリeScholarshipで公開されています。

Taking the Temperature on Open Access Among UC Berkeley Faculty(Ithaka S+R,2019/11/12)
https://sr.ithaka.org/blog/taking-the-temperature-on-open-access-among-uc-berkeley-faculty/

UC Berkeley Library Faculty Survey 2018 Report(eScholarship)
https://escholarship.org/uc/item/9p90t88d

参考:
Taylor & Francis社、研究者を対象とした学術情報流通に関する意識調査のレポートを公表
Posted 2019年10月29日
https://current.ndl.go.jp/node/39371

北米研究図書館協会(ARL)、米・カリフォルニア大学による情報アクセスの障壁除去を目指す取り組みを強く支持する声明を発表
Posted 2019年10月9日
https://current.ndl.go.jp/node/39218

米・ITHAKA S+R、教員の情報行動に関する定期調査報告(2018年版)を公開
Posted 2019年4月18日
https://current.ndl.go.jp/node/38051