米・カリフォルニア大学デービス校図書館のワインコレクションから垣間見るワイン史上の一大事件「パリスの審判(Judgment of Paris)」の裏側(記事紹介)

2019年10月10日、米国のカリフォルニア大学デービス校図書館は、同館のワインコレクションに新たに加わった資料の、1976年のワイン史上の一大事件「パリスの審判(Judgment of Paris)」と関わるエピソードを紹介した記事を公開しました。

「パリスの審判」は、1976年にフランス・パリで開催されたブラインドテイスティングによるワインの試飲会で、カリフォルニア産のワインがフランス産のワインを上回る評価を獲得し、カリフォルニアワインの価値が世界中に認識されることとなったワイン史上の一大事件です。同館はこの「パリスの審判」に重要な役割を果たした2人の人物であるワイン醸造家André Tchelistcheff氏とワインツアー事業者のJoanne DePuy氏に関わる資料を受入しており、記事の中で両氏の「パリスの審判」に関わるエピソードを紹介しています。

André Tchelistcheff氏は禁酒法撤廃以降のカリフォルニアで最も影響力があったとされるワイン醸造家です。カリフォルニアワインの産地であるナパ・ヴァレーのワイン醸造家に多くの助言を与えており、その中には「パリスの審判」でフランス産に勝る評価を得たワインの醸造家であるWarren Winiarski氏やMike Grgich氏も含まれていたことなどのエピソードが紹介されています。同館へはTchelistcheff氏の遺産として、夫人が長年にわたって編集した新聞の切り抜き・書簡・写真・文書等を収めたスクラップブックが寄贈されています。

Joanne DePuy氏は、ワインでナパ・ヴァレーと各国を橋渡しするという信念の下、ワインツアー会社のWine Tours Internationalを起業し活動していた事業家です。試飲会間近の時期には、カリフォルニアワインが試飲会当日までに税関を通過できない見込みが高くなるという危機が発生していましたが、偶然Tchelistcheff氏らワイン醸造家をフランスへのワインツアーに連れて行くところだったDePuy氏が、試飲会の主催者の要請によってボトルをフランスに持ち込んだことで、無事にカリフォルニアワインが試飲会の会場に到着したエピソードなどが紹介されています。DePuy氏は1970年代のワインブームの最中にあるナパ・ヴァレーの様子を伝えた、写真・文書を含む個人コレクションを同館へ寄贈しています。

寄贈されたTchelistcheff氏・DePuy氏のコレクションは現在図書館で目録登録が進められており、2020年の冬までには利用可能になる予定です。また、2020年2月3日まで、カリフォルニア大学デービス校図書館を構成するシールズ図書館(Peter J. Shields Library)の展示企画“A Tale of Two Tastings”で、コレクションの一部が紹介されています。

Stories Behind Historic “Judgment of Paris” Wine Tasting Illuminated in New UC Davis Library Collections, Exhibit(UC Davis Library,2019/10/10)
https://www.library.ucdavis.edu/news/stories-behind-historic-judgment-of-paris-wine-tasting-illuminated-in-new-uc-davis-library-collections-exhibit/

参考:
米・カリフォルニア大学デービス校、ワインに関する著作家・評論家のコレクションを構築すると発表
Posted 2019年1月10日
https://current.ndl.go.jp/node/37348

E2102 – ぶどう・ワイン王国を支える専門図書館:甲州市立勝沼図書館
カレントアウェアネス-E No.363 2019.02.14
https://current.ndl.go.jp/e2102

E2102e – A Special Library in Kingdom of Grapes and Wine: Koshu City Katsunuma Library
Current Awareness-E No.363 14 February, 2019
https://current.ndl.go.jp/en/e2102_en