米国の大学所属者のGoogle Scholarと大学図書館提供検索システムの利用及び認識に関する比較調査(文献紹介)

2019年9月に刊行された、米国の大学・研究図書館協会(ACRL)の“College and Research Libraries (C&RL)”のVol.80, no.6に、米国マサチューセッツ州・シモンズ大学のKyong Eun Oh氏とノース・カロライナ州・イースト・キャロライナ大学のMónica Colón-Aguirre氏の共著による論文“A Comparative Study of Perceptions and Use of Google Scholar and Academic Library Discovery Systems”が掲載されています。

同論文は、大学所属者の学術情報検索ツールとして一般的なGoogle Scholarと所属大学の図書館がウェブサイト上で提供する検索システムについて、利用方法、利用する理由、それぞれのツールへの認識をオンラインアンケートの結果に基づいて分析したものです。オンラインアンケートの対象者はカーネギー分類で「最高度の研究活動(R1)」に分類される米国内の20の公立大学所属者から無作為抽出で選出されており、回答のあった975件に基づいて分析されています。回答者には学部生から教員まで幅広い属性の所属者が含まれています。オンラインアンケートは、それぞれのツールの利用期間、利用頻度などの利用の方法や理由に関する設問と各ツールの使いやすさ、ツールから目的の情報へのアクセシビリティ、ユーザーインターフェース等に関するシステム品質などツールへの認識に関する設問で構成されています。

オンラインアンケートの回答結果に基づいて次のようなことが指摘されています。
・それぞれのツールについて9割以上が過去に使用したことがあると回答している。Google Scholarについては同様の調査を行った先行研究よりもさらに数値が伸長しており、ますます一般的なツールになっていることが窺える
・回答者の40%以上がそれぞれのツールを毎週または毎日利用しておりともに利用頻度が高い
・大半の回答者はそれぞれのツールを雑誌論文の検索目的で利用している。Google Scholarはそれが特に顕著であり、電子書籍や会議資料など雑誌論文以外のタイプの資料を検索するために毎週または毎日利用している回答者はいずれも10%以下であった
・目的の情報へのアクセシビリティと有用度については、ともに回答者から高く評価されており両者に統計的な有意差はなかった
・Google Scholarは使いやすさ、ユーザーインターフェース等に関するシステム品質、ツールへの満足度について大学図書館の検索システムよりも評価が高かった。特に利用者へ大きく影響を与える要因である使いやすさに関して高評価であったことは過小評価するべきではない
・大学図書館の検索システムは情報の網羅性についてGoogle Scholarよりも評価が高かった。これは先行研究と異なる結果であり、図書館の検索システムの網羅性が向上していることを示唆しているのかもしれない
・主観的規範も大学図書館の検索システムの評価が高かった。これは教員・同僚等の回答者の検索行動に影響を与える他者はGoogle Scholarよりも図書館のシステムを薦めると認識されていることを意味している
・その他ツールへの信頼度や今後の研究で継続して利用する意図についても大学図書館の検索システムの評価が高かった。

Oh, Kyong Eun; Colón-Aguirre, Mónica. A Comparative Study of Perceptions and Use of Google Scholar and Academic Library Discovery Systems. College & Research Libraries, 80(6), 2019, p. 876-891.
https://doi.org/10.5860/crl.80.6.876

参考:
E952 – Google Scholarはどのくらい学術的か?<文献紹介>
カレントアウェアネス-E No.154 2009.07.22
http://current.ndl.go.jp/e952

E1387 – 図書館・情報発見・目録について考えるための13の視点
カレントアウェアネス-E No.230 2013.01.24
http://current.ndl.go.jp/e1387

CA1564 – Googleが図書館に与えるインパクト / 兼宗進
カレントアウェアネス No.285 2005.09.20
http://current.ndl.go.jp/ca1564