地方の「コミュニティ・アーカイブ」の持続可能性の確保:地方政府・図書館情報学課程との連携による事例(文献紹介)

ギリシャ・アテネで開催された第85回世界図書館情報会議(WLIC)・国際図書館連盟(IFLA)年次大会のサテライトミーティングとして、2019年8月21日・22日に、セルビア・ベオグラードで開催された地域史と系譜に関するサテライトミーティングの発表資料として、米・デンバー大学モーグリッジ教育学部調査研究方法・情報学科のMATUSIAK, Krystyna K氏等による“Preserving Cultural Heritage in Rural Areas: The Case of the Park County Local History Archives ”と題する文献が公開されています。

アーキビストやデジタル化の専門家が少ない地域においてボランティアによって担われるコミュニティ・アーカイブ活動の持続可能性が課題となっていることから、持続可能性を担保した事例の1つとして、政府機関・文化遺産機関と「連携」した米・コロラド州パーク郡のコミュニティー・アーカイブPark County Local History Archives(PCLHA)の活動を紹介するものです。

本文献によると、同地域の歴史的な資料の収集・保存を目的に2001年にボランティアによって創設されたPCLHAは、2017年に創設の中心メンバ―を失ったことや、アーカイブ資料の保存施設の湿気や水損の恐れなどから活動の継続性が問題となりましたが、2018年、同郡の遺産・観光・コミュニティ開発局とデンバー大学が連携し、同大学の図書館情報学課程のプロジェクトとして、アーカイブ資料の移転・整理・デジタル化作業が実施されました。

PCLHAのアーカイブコレクションの保存、デジタル技術の導入による同コレクションの認知度向上、コミュニティ・アーカイブ活動の持続可能性の確保、の実践と調査が目標とされた同プロジェクトでは、第1段階として、資料の移転作業と保存基準を満たすための写真の再デジタル化作業が2019年6月から開始されましたが、本文献では、地域のニーズを理解し、信頼を築き、地域のメンバーを参加させることが、プロジェクトの成功に不可欠であったと指摘しています。

また、第2段階として、2019年秋から再デジタル化した写真とオーラルヒストリーによるOmekaを用いたデジタルアーカイブやデジタル展示の構築作業が行われますが、地域への理解や関心を高めるデジタルアーカイブの役割について調査を行なうとしています。

Preserving Cultural Heritage in Rural Areas: The Case of the Park County Local History Archives(IFLA Library)
http://library.ifla.org/2690/
http://library.ifla.org/2690/1/s06-2019-matusiak-en.pdf
※二つ目のリンクが本文です[PDF:698KB]。

参考:
E1997 – デジタルアーカイブ学会,その趣旨と展望
カレントアウェアネス-E No.342 2018.02.22
http://current.ndl.go.jp/e1997

【イベント】草アーカイブ会議 Grassroots Archive Meeting(3/12・宮城)
Posted 2016年2月1日
http://current.ndl.go.jp/node/30594

【イベント】草アーカイブ会議2「コミュニティ・アーカイブってなに?」(12/23-24・仙台)
Posted 2017年11月27日
http://current.ndl.go.jp/node/35063

【イベント】研究会「コミュニティ映画・映像のアーカイブを考える」(3/12・東京)
Posted 2019年2月25日
http://current.ndl.go.jp/node/37645