研究評価に関するサンフランシスコ宣言(DORA)を実践する:図書館員の視点から(記事紹介)

研究評価の改善を求める「研究評価に関するサンフランシスコ宣言」(DORA)の2019年8月21日付のブログ記事において、米・アイオワ州立大学図書館の図書館員であるCurtis Brundy氏によるエッセイ“Implementing DORA – A Librarian’s Perspective”が公開されています。

同氏は大学図書館でオープンアクセス(OA)・オープンデータの推進と図書館コレクション予算の管理を担当しています。投稿誌をベースにした研究評価の在り方は研究者の活動に強く影響を与えており、高品質の研究が掲載されているとみなされた「正しい」雑誌の購読価格の高騰、キャリア形成においてインセンティブの弱い研究データのオープン化やオープン教育資源(OER)の製作と採用の阻害等の形で、図書館へ悪影響を及ぼしていることから、研究評価の改善を目指す試みは自身の担当業務の改善・発展を目指す試みと強く結びついたものであることに言及しています。

同氏はエッセイの中で研究評価の改善に向けて図書館員の関与や行動が介在し得る機会として以下の3点を挙げています。

・図書館員は「図書館の権利宣言」(Library Bill of Rights)に謳われた情報への平等なアクセス・プライバシー・表現の自由といった規範に基づく専門職であり、こうした理念をアドヴォカシー・アウトリーチ・教育といった形で発揮している。また多くの大学において、図書館員はDORAに関する議論や署名を推進できる立場にある。米国の大半の大学がDORAに署名していない現状にあって、図書館員は図書館員固有のスキルを発揮しながら、自機関内でDORAに関する議論を活性化し研究評価改善の必要性を認識させる機会を有している。

・多くの研究大学には計量書誌学や既存の指標の代替となる影響力評価指標にある程度までは精通した図書館員が存在する。また多くの図書館はこれらのテーマやベストプラクティスについて説明したウェブ上のガイド等を提供している。図書館員のこれらの専門知識は、ジャーナルインパクトファクター(JIF)のように限定的で疑わしい場面もある指標から逃れ研究評価を改善しようとする大学の執行部から求められるべきである。

・学術出版社は支払価格を含めたジャーナル購読契約内容の守秘義務を図書館に課しているが、これを自機関内で共有することを妨げるものは何もない。図書館は研究コミュニティで「正しい」とされるジャーナルへの支払価格に関する情報を、持続不可能なインフレ傾向として現れている経年の変化も含めて自機関の部局に提供すべきである。これにより、大学内でのキャリア形成に強く関わる昇任審査委員会やテニュア審査委員会に対して、ジャーナルへの「価格感受性」形成を促す可能性がある。

Implementing DORA – A Librarian’s Perspective(DORA,2019/8/21)
https://sfdora.org/2019/08/21/implementing-dora-a-librarians-perspective/

参考:
研究評価に関するサンフランシスコ宣言(DORA)の日本語訳が公開される
Posted 2019年7月8日
http://current.ndl.go.jp/node/38531

図書館員と研究インパクトに関するインフォグラフィック 図書館員の”インパクト”を見くびるなかれ
Posted 2014年6月10日
http://current.ndl.go.jp/node/26317

OCLC、「研究評価プロセスにおける研究図書館の役割」に関する報告書を刊行
Posted 2009年12月18日
http://current.ndl.go.jp/node/15506