「引用され過ぎ」を理由に論文撤回 後に処分を見直し(記事紹介)

論文撤回監視サイトRetraction Watchの2018年2月2日付けの記事で、「一つの国際会議予稿集内から引用され過ぎている」ことを理由に、その国際会議のチェアマンを務めていた人物の論文が撤回された事例が紹介されています。

撤回の対象となったのはJournal of Vibroengineering誌に2016年中に掲載された、Magd Abdel Wahab氏らの論文3本です。これらの論文は、同氏をチェアマンとして2017年7月に北九州市で開催された国際会議内の発表から5回以上、引用されていました。予稿論文はJournal of Physics誌のConference Seriesに収録されています。

Journal of Vibroengineering誌は、一つの国際会議内の発表であまりにも多くの回数、引用されていることから、チェアマンであったMagd Abdel Wahab氏が自身の論文を引用するよう要求したのではないかと判断し、論文の撤回に至ったとのことです。

しかし、被引用数をこういった手法で操作することは確かに研究倫理には反するものの、それが論文撤回の理由となることは一般的ではなく、COPEの論文撤回ガイドラインでも撤回理由としてあげられていないことをRetraction Watchの記事では指摘しています。

なお、結局その後の著者本人への調査等の結果、著者が自身の論文の被引用数を水増ししようと会議参加者に要求した決定的な証拠を見つけるには至らず、撤回された論文については編集コメントを付した上で、2018年2月発行のJournal of Vibroengineering誌にあらためて掲載される予定であるとのことです。

Three papers retracted… for being cited too frequently(Retraction Watch、2018/2/2付け)
http://retractionwatch.com/2018/02/02/three-papers-retracted-cited-frequently/

参考:
Center for Open Science(COS)と論文撤回監視サイトRetraction Watchが論文撤回データベースを作成することに関して技術的に提携
Posted 2015年11月26日
http://current.ndl.go.jp/node/30060