Wikipedia英語版と『ブリタニカ百科事典』英語オンライン版、政治的な偏りが大きいのはどっち?(記事紹介)

ハーバード大学ビジネススクールが運営するウェブサイトHBS Working Knowledgeに、”Which Has More Bias? Wikipedia or the Encyclopedia Britannica”と題した記事が掲載されました。これは2014年10月に公開された同校のワーキングペーパー、”Do Experts or Collective Intelligence Write with More Bias? Evidence from Encyclopdia Britannica and Wikipedia”の内容を紹介するもので、ワーキングペーパーの著者は同校のFeng Zhu氏と、ノースウェスタン大学のShane Greenstein氏です。

Zhu氏らはWikipedia英語版と『ブリタニカ百科事典』英語オンライン版のどちらがより政治的に偏った傾向があるかを明らかにすることを目的に、双方に含まれる4,000の記事を対象とする調査を行いました。先行研究で示された民主党員が使いがちなフレーズと共和党員が使いがちなフレーズトップ500のリストを用い、リストに掲載されたフレーズがWikipediaと『ブリタニカ百科事典』にどの程度含まれているかを調べています。

調査の結果、Wikipediaの方がリスト中にあるフレーズが含まれている傾向があり、『ブリタニカ百科事典』ではリスト中のフレーズを含む記事は34%であったのに対し、Wikipediaでは73%で、特にWikipediaは左派よりに偏っていたとのことです。ただし、この偏りはWikipediaの方が長い記事が多いためで、100語あたりに含まれる政治的に偏ったフレーズの割合には、『ブリタニカ百科事典』とWikipediaで差はありませんでした。また、Wikipediaの記事には編集回数が多いほど政治的偏りが少なくなる傾向があったとのことです。ただし、この効果が現れるのは少なくとも2,000回以上編集されてからで、しかもよく読まれる記事がよく編集されているとは限らないことも指摘されています。

Zhu氏はこの結果に基づいて、Wikipediaの編集に参加する人は、よく読まれている記事からまず編集すること等を推奨しています。

Which Has More Bias? Wikipedia or the Encyclopedia Britannica(HBS Working Knowledge、2015年1月19日付け)
http://hbswk.hbs.edu/item/7689.html

Do Experts or Collective Intelligence Write with More Bias? Evidence from Encyclopdia Britannica and Wikipedia
http://www.hbs.edu/faculty/Publication%20Files/15-023_145191c4-220f-4dd8-8d41-ee2d1f693716.pdf

参考:
2014年にWikipedia英語版で編集された回数の多かった記事トップ10
Posted 2015年1月6日
http://current.ndl.go.jp/node/27751

Wikipediaの現状に関する論考
Posted 2006年7月26日
http://current.ndl.go.jp/node/4333

1768年から刊行されてきた書籍版『ブリタニカ百科事典』が終了し、今後はオンライン版のみへ
Posted 2012年3月15日
http://current.ndl.go.jp/node/20395