開会の辞

開会の辞

吉永 元信

(国立国会図書館収集部長)

 公開セミナーの開催にあたりまして主催者といたしまして一言御挨拶申し上げます。本日はお忙しい中、公開セミナーに多数の皆様がご参加していただいたことに厚く御礼申し上げます。

 空前の被害をもたらしたスマトラ沖地震・津波からはや1年が経とうとしております。様々な分野で復興活動が進められておりますが、被災国の図書館はどうなっているでしょうか。文化遺産の救出・修復は進んでいるのでしょうか。

 我々はあの阪神大震災を経験し文化財の保存・修復がいかに大変なことかを学びました。また、その後、世界でアジアで多くの自然災害、人的災害が発生したことも知っています。しかし文化財の防災に関する情報の共有はなかなかに困難なものがあることも知りました。この問題意識のもとに、今回「スマトラ沖地震・津波による文化遺産の被災と復興支援」と題するセミナーを企画し、開催することといたしました。

 国立国会図書館は、これまで、資料保存に関する様々な活動に取り組んでまいりました。その大きな柱が、国際図書館連盟(IFLA)が推進するコア活動のひとつであるPAC(Preserv-ation and Conservation)のアジア地域センターとしての活動であります。この地域センターをお引き受けしたのは1989年(平成元年)であり、今年で16年目を迎えております。

 当館はこのセンターをお引き受けすると同時に、取り組むべき「保存協力プログラム」を策定し、資料保存に関する情報提供と技術援助を通じて、アジア地域における保存活動の推進と、アジアにおける保存協力事業に係る国内の関係団体との連携を目的とした活動に努めてまいりました。その一環として資料保存のシンポジウムを開催しその時々に適したテーマを選んで資料保存の現状と課題を議論していただいてきたところであります。

 さて、本日のセミナーでございますが、まず初めにIFLA/PAC国際センター長であるバーラモフさんから、IFLA/PACコア活動として推進している防災プログラムについてご報告いただきたいと思います。

 つづいて、インドネシアのラフマナンタ国立図書館長、スリランカのアマラシリ国立図書館長から被災国の実態と対応についてご報告いただき、また、インドネシアのアチェで実際に支援活動に従事されておられます東京修復保存センターの坂本さんに支援活動の実態のご報告をいただきます(坂本さんは現在アチェで支援活動中ですので、残念ではありますが本日は代読となります)。

 最後に、IFLA/PACアジア地域センター長である当館の那須の方から、アジア地域センターの活動の報告をさせていただきます。

 本日のセミナーが、今後の災害予防の大切さと、災害に対する復興支援のあり方について考える契機となることを期待すると同時に、アジア地域における保存協力・復興支援活動のネットワーク作りの更なる前進のために実り多いものとなるように、活発なご議論が広がることを期待している所です。

 簡単ではありますが、これをもって開会のご挨拶に変えさせていただきます。