第2章 図書館 (2.3 地域資料のコレクション)

2.3 地域資料のコレクション

2.3.1 地域資料の整理状況

 ここでは印刷資料、視聴覚資料、現物資料の区分ごとに整理状態を分析した。

 整理済みには、整理に着手したものも含むとしている。つまり、個々の資料の種類ごとに、まず所蔵しているかどうかを尋ね、所蔵している場合には整理に着手しているか、まだ未整理かを聞いている。資料形態別の所蔵数が把握困難なものは実態以上に未整理や未所蔵といった回答が多くなり、図書・コミュニティ誌・新聞切抜を除いた全ての項目で10%を超える無回答率となったものと思われる。

印刷資料

図2-7
図2−7 印刷資料コレクション

 地域図書は92.4%が整理済みで、未所蔵は0.8%となっている。その内訳は市立(15万以下)で1館、町村で3館である。

 地域雑誌・地図・地域新聞は整理済みがいずれも60%を超え、コミュニティ誌は50%弱である。

 新聞切抜と小冊子は整理済みが30%台なのに対し、未整理は新聞切抜が16.5%、小冊子が29.2%で、所蔵の合計では新聞切抜が54.5%、小冊子が63.3%となっている。

 新聞折込広告・点字資料・ポスター・絵葉書は未所蔵が50%を超え、新聞折込広告とポスターは整理済みが10%未満で、未所蔵が新聞折込広告は75.9%、ポスターは64.9%となっている。

 この結果を分析すると、地域図書は僅かな町村を除いた大半の図書館で所蔵されており整理済みである。地域雑誌・地図・地域新聞は60%以上の図書館で整理済みとなっていて、図書・雑誌・地図・新聞が地域資料の主要な所蔵資料であることが分かる。この反面、新聞折込広告・点字資料・ポスター・絵葉書は半数以上の図書館で所蔵しておらず、新聞折込広告とポスターを整理しているのは10%未満である。

視聴覚資料

図2-8
図2−8 視聴覚資料コレクション

 視聴覚資料は、光ディスクと磁気テープを除いて未所蔵が50%を超えており、16mmフィルムと磁気ディスクは所蔵が10%以下となっている。

 館種別に見ると都道府県立及び政令市立では、写真・マイクロフィルム・光ディスク・磁気テープは所蔵が60%を超えている。特別区立では、磁気テープの所蔵が40%、写真と光ディスクの所蔵が20%となっているが、それ以外は10%以下となっている。町村立では、磁気テープが42.4%、光ディスクが31.8%、写真が15.1%となっているが、それ以外は10%以下となっている。

 視聴覚資料の所蔵は、全体的な傾向として16mmフィルム・レコード・磁気ディスクの所蔵は少ないが、所蔵率は館種によって顕著な差が見られる。写真・マイクロフィルム・光ディスク・磁気テープは、都道府県立及び政令市立の60%以上で所蔵しているが、町村立では光ディスクと磁気テープが30%を越えているものの全てにわたって未所蔵の方が多く、磁気テープを除く全てで未所蔵率が50%を超えている。

現物資料

図2-9
図2−9 現物資料コレクション

 現物資料は、全てが未所蔵率50%以上である。そのなかでは古文書・古記録の所蔵が33.9%でもっとも多く、行政文書(公文書)が32%、写本・古刊本25.3%、原稿・書簡・日記20.5%、美術品13.1%、博物資料7.3%となっている。

 所蔵しているもののうち整理済みが20%を超えているのは、古文書と行政文書となっている。館種別に見ると古文書・古記録や写本・古刊本は都道府県立と政令市立の50%以上で整理済みとなっているが、市立(15万以上)と特別区立では20%台となっている。

 所蔵している館から報告された所蔵数を集計してみると次の表になる。多様な形態の資料が含まれており、点数は目安にすぎない。所蔵していても数を報告していない図書館も半数以上にのぼる。

表2−5 現物資料の所蔵点数(実数)
表2-5

 現物資料については一部の図書館で所蔵されているにすぎないが、これだけの図書館で所蔵が確認された。博物館等の類縁機関の少ない市立(15万未満)や町村立で所蔵率が低いという現実は、現物資料が公的機関で保存される可能性が低く、利用が困難であることを物語っている。

 なお、ヒアリング調査で確認したところ行政文書(公文書)と回答しても印刷物の行政資料を指している場合が多く、実際に行政文書を所蔵している図書館は少ないものと思われる。


2.3.2 地域資料の所蔵状況の特徴

 創立年が古いか新しいかで所蔵にどの程度の違いがあるのかをみておこう。所蔵されて整理済みの地域資料のうち新旧の図書館で違いの大きいものを挙げると次の表のとおりである。ここに挙げられていない資料は、創立年からするとそれほど大きな違いはなかったものである。

表2−6 整理済みの地域資料の所蔵割合(%)
表2-6

 印刷資料のなかではポスター、絵はがき、視聴覚資料のマイクロ資料、そして現物資料のほとんどが、設立が新しい図書館よりも古い図書館の方が所蔵して整理されているものの割合が高い。郷土資料と呼ばれていた時代には図書や新聞雑誌以外に多様な資料が図書館に集められていたが、その後はそういう資料が集められにくくなったことを示している。

 地域資料のうち、地域図書、地域雑誌、地図、古文書・古記録の所蔵の点数を見ておこう。

地域図書

 地域図書の定義は図書館によって異なるが、一般には通常の地域で発行され流通する商業的な出版物以外に、行政機関や教育機関、研究機関などが発行する単行書を指す。図書館によっては、さらにその地域にかかわりのあるテーマや人物に関する図書、その地域の出身者が執筆した図書、姉妹都市の図書なども含める場合もある。

 所蔵数が報告された図書館のうち、1,000点未満が約10%、3,000点までが15%、10,000点までが約32%、30,000点までが約25%、それ以上が約20%となっていて、図書館によって所蔵点数にかなりの相違があることがわかる。

 図書館の種類別にみると都道府県立、政令市立の場合は、30,000点以上が80%を超すなど規模が大きい。対して、町村は3,000点未満が、15万人未満の市は10,000点未満が大多数を占めるように、所蔵数には限りがあることがわかる。

図2-10
図2−10 地域図書の所蔵点数(報告なしを除く)

地域雑誌

 地域雑誌の定義も難しい。地域で刊行される定期刊行物のなかでミニコミやフリーマガジンのような無料で配布されるものについては別に「コミュニティ紙・誌」というカテゴリーを設けてある。

 地域雑誌については報告がなかった図書館が多いが、あったところをみると図書以上にその差が大きくなっていることがわかる。都道府県立のなかには1,000タイトルを超すものもある一方、小規模自治体の場合は10タイトルに満たない図書館が過半数を占めている。

図2-11
図2−11 地域雑誌所蔵タイトル数

地図

 地図の所蔵についても見ておこう。ここで地図というのは一枚ものの地図のことで、地図帳は含まれないとしている。所蔵しているかどうかの問いには7割以上の図書館が所蔵していると答えていたので、ここで報告がなかった図書館が半数以上にのぼるのは、通常地図を一点ずつ数えることはないためだと思われる。所蔵数は都道府県、政令市、特別区15万人以上の都市の順に多い。

図2-12
図2−12 地図所蔵点数

古文書・古記録

 ここでは割合ではなく実数を挙げておく。これらの資料はそのユニーク性そのものが評価されるべきであるからである。古文書・古記録を所蔵すると回答した図書館は166館あった。そのうちわけは次の表のとおりである。15万人未満の市立図書館と特別区立は2分の1抽出で、町村は5分の1抽出であるから、日本全国で250館を超える図書館が古文書・古記録を所蔵していると推測できる。

表2−7 古文書・古記録所蔵図書館数(実数)
表2-7

 古文書・古記録の所蔵数について回答した図書館は80館であった。一般的には人口規模の大きな自治体の図書館ほどこうした資料を多く持っている。しかしながら、10,000点以上の資料をもつ図書館が人口15万人以上の市立図書館にもっとも多いことや、人口15万人未満の市立図書館にも一定量の蓄積があることに注意すべきである。

表2−8 古文書・古記録所蔵点数(実数)
表2-8


2.3.3 収集方針・選書基準

図2-13
図2−13 収集方針・選書基準の有無(全体)

表2−9 収集方針・選書基準の有無(館種別 %)
表2-9

 収集方針・選書基準は、明文化したものがあるのが54.7%で、その内24.5%が住民に公開されている。明文化されてなく慣習的な収集方針があるのが20%、特に収集方針は定めていないのが21.6%となっている。

 館種別に見ると、公開には差があるものの明文化したものがあるのが都道府県立で92.1%、政令市立で93.3%、市立(15万以上)で67.5%、市立(15万未満)で44.1%、特別区立で100%、町村立で24.2%となっている。慣習的な収集方針と定めていないが都道府県立で3.9%、政令市立で6.7%、市立(15万以上)で23.9%、市立(15万未満)で55.2%、特別区立で0%、町村立で69.7%となっている。

 『これからの図書館像』には、「地域の課題解決に向けた取組に必要な資料や情報を提供し、地域の実情に応じた情報提供サービスが必要である。」とされていることからも、地域資料収集の基本である収集方針・選書基準の明文化は必要不可欠であり、その公開を積極的に進めることが求められる。


2.3.4 地域資料の積極的収集

 収集対象地域と収集対象資料を形態別に調べたもので、積極的な収集、基本的なもの、寄贈が中心、対象としないの4つに区分して調べたものであるが、ここでは積極的な収集と対象としないと回答したものについて、都道府県立以外と都道府県立に分けて資料形態別に見てみたい。

表2−10 印刷資料の積極的収集割合(都道府県立以外 %)
表2-10

表2−11 視聴覚資料の積極的収集割合(都道府県立以外 %)
表2-11

表2−12 現物資料の積極的収集割合(都道府県立以外 %)
表2-12

 都道府県立以外を見てみると、印刷資料を積極的に収集しているのは、自治体内の資料で、図書が84.5%、雑誌・地図・新聞が60%以上、小冊子が48.1%、ポスター・絵葉書などが20.5%となっている。隣接地域や県域まで積極的に収集している館は少なく、図書・地図・新聞は10%を超えているが、それ以外は5%未満である。また、印刷資料の中で対象としないケースは、ポスター・絵葉書などを除いて6%未満と少なく、ポスター・絵葉書などのみが32.1%となっている。

 視聴覚資料で積極的に収集しているのは、自治体内の資料で、映画・音楽資料などの視聴覚資料が28.2%で、それ以外は10%台である。また、対象としないケースが視聴覚資料以外は全て積極的に収集を上回っている。

 現物資料は、全ての項目で対象としないが30%以上となっており、積極的な収集を上回っている。

 この結果は、2.3.1地域資料の整理状況に反映されており、資料の整理済みの数値と類似したものとなっている。

表2−13 印刷資料の積極的収集割合(都道府県立 %)
表2-13

表2−14 視聴覚資料の積極的収集割合(都道府県立 %)
表2-14

表2−15 現物資料の積極的収集割合(都道府県立 %)
表2-15

 都道府県立を見てみると、積極的に収集している印刷資料は、ポスターなどを除いて自県の資料は全て60%以上となっており、図書・雑誌・新聞は80%を超えている。また、都道府県内の市町村までを収集範囲としており、隣接県まで収集範囲としている都道府県はほとんどない。

 視聴覚資料の中では、マイクロフィルムを収集対象としている率が高く30%を超えており、自県の資料より都道府県内の率の方が高くなっている。また、マイクロフィルム以外の資料は積極的に収集しているところより対象としていないところの方が多い。

 現物資料は美術品・博物資料を除いて積極的に収集している自県の資料は全て10%台なのに対して、対象としていないのは25%以上となっている。

 都道府県立以外と都道府県立を比較してみると、印刷資料の収集に比べてそれ以外の資料は積極的な収集対象としていない傾向は同じであるが、都道府県立図書館ではマイクロフィルムを積極的に収集している傾向があり、現物資料は収集率は低いものの都道府県以外の方が全ての項目に対して上回っている。このことは、原資料は生活に密着した地域に残され、媒体変換されたマイクロフィルムとして研究に活用される資料保存の在り方との関連も垣間見られて興味深い結果となっている。

表2−16 設立の新旧別の積極的に収集している資料(%)
表2-16

 創立年別に分けてみると、やはり古い設立の図書館の方が積極的に集めている資料の種類は多いが、所蔵状況ほどの大きな差は認められなかった。所蔵は長年の蓄積の差がでるが収集は可能だということであろう。むしろ、写真や原稿・書簡・日記のように設立が新しい図書館の方が積極的に集めようとしている資料もある。


2.3.5 自治体発行の行政資料の収集

図2-14
図2−14 自治体発行の行政資料の収集

 自治体発行の行政資料について、積極的な収集、基本的なもの、寄贈が中心、対象としないの4つに区分して調べたものであるが、ここでは積極的な収集と対象としないと回答したものについてグラフにしてみた。

 積極的な収集と回答したものが60%を超えているのは、例規集、公報、広報誌・市勢概要・事業概要、行政報告・年報・統計書、議会議事録、自治体史で、収集対象としていないとしたのが25%を超えているのは、議案書と監査資料である。

 以上の結果を分析してみると、利用も多く従来から地域資料の中核として位置づけられてきた自治体史が80.6%というのは少し低いと思われる。しかし、広報誌・市勢概要・事業概要が79.2%と自治体史とほとんど差がなく、例規集や議会議事録が70%を超えているのは、自治体の情報公開の姿勢が図書館の行政資料の収集にも顕著に現れており、行政資料の中でも議案書や監査資料といった内部資料を収集対象としていないのも当然の結果である。しかし、計画書と予算書・決算書が50%台なのは大きな課題である。長期総合計画書や実施計画書をはじめとした行政計画書は、行政運営の基本資料としても市民生活に欠かせない資料であり、予算書・決算書は行政運営と事業内容にどれだけの経費を投資しているのかを知る資料として重要なので、地域資料の基礎的な資料として位置付け、重点的に収集する必要がある。

 創立年が古いか新しいかによる違いはあまり認められなかった。


2.3.6 納本条例・規則

図2-15
図2−15 納本条例・規則の有無

 自治体発行物の納本条例・規則について調べたものであるが、あると答えたのは39自治体、8%であった。ないと答えたところが90%以上となっている。館種別にみると、都道府県立・政令市立・特別区立ではあるのが20%を超えているが、市町村では6%以下となっている。大規模な自治体ほど法的な整備が進んでいることがわかる。創立年による差異はなかった。

 挙げられた納本条例・規則は、次の表のようになっている。大きく分けて、図書館関連のものと行政全体に関わるものがある。また、条例、要綱、規則・規定、その他というように自治体のどのレベルで制定されたものかで効力に違いがあるだろう。これらのことについては今後の研究が必要である。

表2−17 納本条例・規則の内訳(実数)
表2-17


2.3.7 自治体内で発行されている資料の収集

図2-16
図2−16 自治体内発行資料の収集

 自治体内で発行されている資料の中でどのような資料を収集しているかを、積極的な収集、基本的なもの、寄贈が中心、対象としないの4つに区分して調べたものである。

 積極的に収集しているとしたのが20%を超えているのは、小・中・高等学校の資料、博物館・美術館・資料館・文学館・文書館の資料、公民館・生涯学習センター・社会教育センターの資料、民間団体(文学・歴史・芸術関係)の資料、郷土人の著作物、自治体内にある出版社の出版物、個人の自費出版物で、郷土人の著作物は57.8%となっている。収集の対象としていないのが10%を超えているのは、大学・短大・高専・専修学校の資料と自治体内にある出版社の出版物である。

 この結果を分析すると、従来から地域資料として収集している郷土人に関する資料は顕著であるが、それ以外の資料は余り積極的に収集していない傾向が見られる。また、収集の対象としていないのが10%を超えている大学・短大・高専・専修学校の資料は、市立(15万以上)で5.1%、市立(15万未満)で19%、町村立で28.8%となっており、それ以外では2%以下なのは、自治体内に該当施設が存在しないことも要因として考えられる。創立年の古い新しいでは大きな差は認められなかった。


2.3.8 全国紙・地方紙の保存

図2-17
図2−17 全国紙・地方紙の保存(複数回答可)

 全国紙の地方版及び地方紙の保存について調べたものであるが、全体で見ると原紙は82.4%の館で保存し、新聞を保存していないのは15.3%であり、媒体変換の方法としてはマイクロ化が26.7%、デジタル化が8.4%となっている。

 この結果を分析すると、新聞の地方版や地方紙は原紙で保存されているケースが多く、媒体変換の方法としてはマイクロ化が主流で、都道府県立や政令市立では90%前後がマイクロ化を行っている。デジタル化の保存は技術が普及した歴史的な経過から少ないのは当然であるが、館種別に大きな差異がないことから満遍なく取り組みが進んでおり、情報機器の環境整備に伴って将来的には媒体変換の主流となる可能性がある。