第1部 IFLAのCPDWLの組織と活動

第1部 IFLAのCPDWLの組織と活動

はじめに:IFLAのCPDWLの組織と活動

国際図書館連盟(International Federation of Library Associations and Institutions: IFLA)規約(IFLA Statues)は、IFLAの目的を次のように規定している(Article 5.2) (1)

・高度な図書館情報サービスの提供を促進すること。

・民間・公共・奉仕活動の各部門において、良質の図書館情報サービスの価値と重要性に対する広範な理解を促進すること。

・全世界の会員の利益を代表すること。

IFLAの機構は複雑だが、図書館情報専門職にかかわる具体的な教育、研究、広報活動を継続的に行っているのは分科会(Section)であり、分科会の数は45に達している。こうした分科会の1つに「図書館情報専門職の継続発達、職場での学習」(Continuing Professional Development and Workplace Learning: CPDWL)がある。ここではこのCPDWLの組織と活動について、最近の動きを中心に報告する。まずIFLAの組織、それにIFLAの組織とCPDWLの関係をまとめる。次に、CPDWLの基本的な関心領域と活動を知るために、具体的な目標と活動を概略する。最後に教育、研究、広報活動を報告する。こうした手順でCPDWLの組織、目的、活動が明らかになるであろう。

1 IFLAの組織

IFLAの組織をまとめたのが、図表<1.1>「IFLAの組織」 (2) である。会員(Membership)は図書館や情報に関する各国協会(National Association)会員、国際協会(International Association)会員、機関(Institutional)会員、名誉会員(Honorary Fellows)で構成される。また会友(Affiliates)を設け、会友は機関(Institutional)会友と個人(Personal)会友からなる。会員が最高議決機関の評議会(Council)を構成し、通常は年に1回年次大会の総会(General Assembly)で会議を開く。

そこで決定された方針を遂行する中央執行機関が運営理事会(Governing Board)で、理事21名からなり、それに事務局長が参加する。理事の任期は2年で1回に限り再任が可能である。運営理事会は少なくとも年2回開かれ、1回は年次大会の場で開かれる。運営理事会は執行委員会(Executive Committee)と小委員会を設置している。前者は運営理事会の会議が年2回のため、その不足を埋めるための委員会である。後者には例えば年次大会計画委員会(Conference Development Committee)がある。運営理事会は事務局長(Secretary General)を任命し、事務局はオランダのハーグに置かれている。


図表<1.1>「IFLAの組織」

図表1.1 IFLAの組織


以上はIFLAの管理機構であるが、運営理事会の下に専門委員会(Professional Committee)がある。この委員会は、図書館情報専門職の活動、方針、プログラムなどに責任を有するすべての専門組織(Professional Units)の仕事を調整する。専門委員会は9名からなり、委員長と8つの部会(Division)の代表や幹部で構成される。委員会は少なくとも年2回開かれ、1回は年次大会で開催される。そしてこの専門委員会の下に、専門組織すなわち部会、分科会(Section)、特定課題グループ(Special Interest Group)が入る。また専門組織としてコア活動(Core Activities)もある。

(1)専門組織(Professional Units)

IFLAの教育や研究についての実質的活動の中核は45の分科会にあるが、組織構造をみた場合、運営理事会→専門委員会→部会→分科会→特定課題グループという階層構造になる。部会は45の分科会をその関心領域によって8つのグループにまとめたもので、具体的な教育や研究の活動をするというより、所属する分科会、および部会の間の調整機関である。その第7部会「教育、研究」を示すと以下のようになる (3)

部会VII:教育、研究(Division VII: Education and Research )

23.

教育、研修(Education and Training)

24.

図書館理論、研究(Library Theory and Research)

33.

読書(Reading)

43.

図書館情報専門職の継続発達、職場での学習(CPDWL)

44.

図書館史(Library History)

45.

図書館情報学関係雑誌(Library and Information Science Journals)

42.

情報リテラシー(Information Literacy)

注:I「国立、大学図書館」 II「専門図書館」 III「一般住民に奉仕する図書館」

IV「書誌調整」 V「蔵書、サービス」 VI「経営、技術」 VIII「地域での活動」

次に各分科会には執行機関として常任委員会(Standing Committee)を置かねばならず、委員長、書記を選ばねばならない。幹部の任期は2年で、1回の再任が可能である。45の分科会のうちCPDWLは第7部会「教育、研究」に属し、分科会の番号は第43番である。

特定課題グループは分科会設置が適切とはいえない関心を扱うグループで、分科会、複数の分科会、部会、複数の部会の下に設置できる。基本的には2年間で、さらに2年間の存続が可能である。新人図書館員討論グループ、法律図書館討論グループなどがある。

専門組織としてコア活動を指摘したが、これはIFLA全体の重要な活動として取り組むべき事柄を扱う組織で、運営理事会が全般的な方針やプログラムの方向に責任を持つ。したがって、組織的には運営理事会に直属している。参考までに以下のようなプログラムがある。「図書館振興」(ALP: Advancement of Librarianship)、「著作権や法律に関する委員会」(CLM: Committee on Copyright and other Legal Matters )、「情報へのフリーアクセスと表現の自由に関する委員会」(FAIFE: Committee on Free Access to Information and Freedom of Expression)、「書誌標準のためのIFLA-CDNL協力」(ICABS:IFLA - CDNL Alliance for Bibliographic Standards)、「資料保存」(PAC: Preservation and Conservation)。

2 IFLAの組織とCPDWL

図書館情報専門職の継続教育への関心が組織的に成立したのは1986年4月で、図書館情報専門職継続教育ラウンドテーブル(Round Table on Continuing Professional Education:CPERT)との名称であった (4) 。そして2002年9月に「図書館情報専門職の継続発達、職場での学習分科会」(CPDWL)になり (5) 、現在にいたっている。

名称の変更と分科会への移動については、以下のいきさつがあった。2000年8月のエルサレム大会で評議会は新規約を採択し、そこでは専門組織は部会、分科会、特定課題グループ、コア活動で構成され、ラウンドテーブルは消滅した。そのため既存のラウンドテーブルは組織の再検討が必要になった。それまでCPERTは第7部会「教育、研究」第23分科会「教育、研修」に属しつつ、自立性を有するラウンドテーブルとして活動してきた。

1年前の1999年バンコク年次大会のCPERTの会議で、分科会への移行について簡単に話されている (6) 。とりわけ「教育、研修」分科会との重複が過大ではないかという懸念である。これは単に分科会としての承認という問題ではなく、会員にいずれかの分科会への所属を強いるか、追加の会費を払って両分科会に入るかという選択を迫り、競合関係が議論され、懸念された(会員が参加できる分科会の数は、会費の額に左右される)。なお会議では、IFLA自体のラウンドテーブルの扱いが不明確であるとし、議論を打ち切っている。  

翌2000年のエルサレム大会でラウンドテーブルの廃止が決まったが、CPERTの会議では特定課題グループになるとの方向は否定された (7) 。と同時に、分科会としての独立も不可能と合意され、従来どおり「教育、研修」分科会に属しつつ、かなりの自立性を獲得するという方向で合意にいたったのである。

翌2001年8月のボストン大会で、CPERTは以下の2つの措置を取っている。

a.「図書館情報専門職継続教育」の名称を、「図書館情報専門職の継続発達、職場での学習」に変更した (8) 。「教育」(Education)から「発達」(Development)への語句の変更は、いっそう広い展望を持たせたもので、単なる「教育」から、「教育」をも含み込んだ「発達」を意識している。また「職場での学習」(Workplace Learning)の追加は、教育や研修の機会を職場で保障するとともに、そうした成果を職場に還元することを重視している。この名称変更は、いっそう展望の広い、また社会の動きに沿った取り組みを意図するとともに、IFLAの組織再編で有利な位置を占めようとする戦略的な意味も有していた。

b.続いて最終的に分科会になると決定した (9) 。まずIFLA事務局長に組織の方向性を問うている。事務局長は5つの選択肢を示したが、会議では「親となる分科会の中で活動」する、いわば従来の位置づけの継続で合意をえた。と同時に第2の選択として、分科会も候補には入れたのである。分科会への移行を躊躇した理由は明確で、会員獲得に自信がないからであった。こうした考えは1999、2000年の方向を確認するものであった。それと同時に最終的な判断をグループの幹部に委ねたのである。その後、幹部は部会や専門委員会などと話し合い、結局は分科会を目指すことに決定した (10)

2001年12月の専門委員会の会議で同ラウンドテーブルは正式に分科会になることが認められ (11) 、2002年9月1日に正式に分科会になった。2002年8月のグラスゴー年次大会で、同分科会は100名の会員獲得を目指して運動を開始し、広報戦略を作成している (12) 。翌2003年8月のベルリン年次大会では、2007年に分科会の評価がなされることを受けて、(1) 100以上の会員獲得、(2) 年次大会でのプログラムの実施以上の活動、(3) 他の分科会などとの協力を3つの課題とした。なお最も緊急に必要なことは、会員の獲得とされた (13)

3 CPDWLの目的、目標

CPDWL(CPERT)の目的や目標について、具体的には中期計画(Medium Term Program)、戦略計画(Strategic Plan)をみておきたい。まず「中期計画:1998−2001年」は次のようになっていた。

中期計画: 1998 2001 (14)

担当範囲 (Scope)

 図書館情報専門職継続教育ラウンドテーブル(CPERT)は、「教育、研修」分科会の下に設置され、情報や図書館にかかわる職員の継続教育プログラムを奨励し開発するために、また適切な活動のための焦点を供するために活動をする。

 情報資源、技術、利用者のニーズ、図書館情報サービスの運営に関する新しい動向は、継続教育や再研修の必要を強調している。本ラウンドテーブルは、継続教育の提供に関心および/あるいは責任を持つ人、継続教育の質の向上などに関心を持つ人を結集する。

ゴール :1998−2001年

 ゴール1:図書館や情報にかかわる職員の国際的な専門職継続教育プログラムを奨励し開発する。

 ゴール2:世界中の図書館員が、司書職の内か外かを問わず、個人の生涯学習に貢献する機会を向上する。それには協力を容易にしたり、思想の交換のためにネットワークを開発したりすることを含む。

 ゴール3:本ラウンドテーブルへの世界各地からの会員を増やし、また会員間のコミュニケーションを容易にする。

 ゴール4:図書館や情報にかかわる専門職に、継続教育についての研究を刺激する。

中期計画もIFLAの組織再編の影響を受けた。2001年8月のボストン年次大会に先だって開かれた部会の調整会議(Coordinating Board)は、従来の4年間の中期計画を廃止して2年間の戦略計画にし、戦略計画を9月に提出するよう求めた (15) 。そのため同ラウンドテーブルは急いで「中期計画:1998−2001年」を土台に、2002−2003年の戦略計画を提出した (16) 。また同年次大会で分科会になると決定し、翌年の9月に正式に分科会になった。そのため2002年11月には、戦略計画を一部分手直ししている。その改訂版が以下である。

戦略計画:2002 −2003 (2002年11月改訂版) (17)

使命

 「図書館情報専門職の継続発達、職場での学習分科会」の活動は以下のとおりである。

 1.情報や図書館にかかわる職員の専門職継続発達プログラムを奨励し開発する。それには図書館情報専門職の最近の発展を反映させる。

 2.適切な活動のための焦点を供する。

 本分科会は、図書館情報専門職の継続発達や職場での学習の提供に関心および/あるいは責任を持つ人、図書館情報専門職の継続発達や職場での学習に関する質の向上に関心を持つ人を結集する。

ゴール :2002−2003年          [※優先事項についてはP.7-8参照]

 ゴール1:図書館や情報にかかわる職員の国際的な専門職継続発達プログラムを識別、奨励、促進する。

      (優先事項:(h) 司書職の発達)

 ゴール2:世界中の図書館員が、司書職の内か外かを問わず、生涯学習に貢献する機会を向上する。それには協力を容易にしたり、思想の交換のためにネットワークを開発したり、さらに専門職継続発達のための高質の土台の開発を含む。

      (優先事項:(h) 司書職の発達)

 ゴール3:図書館や情報にかかわる専門職に、専門職継続発達についての研究を刺激する。

      (優先事項:(h) 司書職の発達)

 ゴール4:本分科会が持続可能なように枠組みを設定する。

      (優先事項:(h) 司書職の発達)

 1998−2001年中期計画と2002−2003年戦略計画を比べると、ラウンドテーブルから分科会へという組織上の変化、および教育から発達への語の変化が目立つ。また中期計画では会員の増大を「ゴール3」、研究への刺激を「ゴール4」に置いていたが、戦略計画では順位を逆転させて研究を「ゴール3」に配置した。これは分科会の存在目的からして妥当な措置であろう。そして「ゴール4」では「本分科会が持続可能なように枠組みを設定する」とし、分科会になったがゆえに、会員増大と組織確立の重要性が高まったことを示している。ところで最新の戦略計画が2004−2005年のもので、それは以下のようである。

戦略計画:2004 −2005 (18)

使命

 「図書館情報専門職の継続発達、職場での学習分科会」の活動は以下のとおりである。

 ・ 情報や図書館にかかわる職員の専門職継続発達プログラムを奨励、促進、支援する。それには図書館情報専門職の最近のニーズを反映させる。

 ・ 図書館情報専門職の継続発達と生涯学習に関する活動、討論、出版のための焦点を供する。

 ・ 図書館情報専門職の継続発達や職場での学習に関するプログラムの提供や質の向上に関心および/あるいは責任を持つ実務家や研究者のために、国際的な実践のコミュニティを支援する。

 ・ 機関会員、それにあらゆる種類の図書館や情報にかかわる職員、マネージャー、研究者、それに専門職継続発達プログラムの提供者を奨励する。

ゴール

 ゴール1:図書館や情報にかかわる職員の国際的な専門職継続発達プログラムを識別、奨励、促進する。

      (優先事項:(a) 社会における図書館の役割の支援、(c) リテラシー、読書、生涯学習の促進、(h) 司書職の発達)

 ゴール2:世界中の図書館員が、司書職の内か外かを問わず、生涯学習に貢献する機会を向上する。

      (優先事項:(a) 社会における図書館の役割の支援、(c) リテラシー、読書、生涯学習の促進、(f) 資源共有の促進、(h) 司書職の発達、(i) 基準、指針、それに最善の実践の促進)

 ゴール3:情報や図書館にかかわる専門職に、専門職継続発達についての研究を刺激する。

      (優先事項:(h) 司書職の発達、(i) 基準、指針、それに最善の実践の促進)

 ゴール4:本分科会がIFLAの組織構造の中で、持続可能なように枠組みを設定する。

      (優先事項:(h) 司書職の発達)

この戦略計画は基本的に前期の戦略計画(2002年11月改訂版)と相違ないといえよう。ただし、IFLAが定める「優先事項」(図書館情報専門職優先事項 Professional Priorities)との結びつきを強めている。優先事項としてIFLAが掲げるのは以下の項目である (19)

a. 社会における図書館の役割の支援

b. 情報の自由という原則の擁護

c. リテラシー、読書、生涯学習の促進

d. 情報への自由なアクセスの提供

e. 著者の知的財産権と利用者のニーズの均衡

f. 資源共有の促進

g. 知的遺産の保存

h. 司書職の発達

i. 基準、指針、それに最善の実践の促進

j. 図書館団体の基盤の支援

k. 技術的な市場への図書館の代弁

2002−2003年戦略計画では、優先事項のうち (h)「司書職の発達」だけを組み込んでいた。それが2004−2005年版では、(a)「社会における図書館の役割の支援」、(c)「リテラシー、読書、生涯学習の促進」、(f)「資源共有の促進」、(i)「基準、指針、それに最善の実践の促進」も組み込んだ。これはIFLAの組織の中でのCPDWLを強める意味、IFLAの目的への適合性を強める意味、さらに他の分科会などとの協力の可能性を高める意味を持っていた。

ところで、「中期計画:1998−2001年」の「ゴール1」は、「図書館や情報にかかわる職員の国際的な専門職継続教育プログラムを奨励し開発する」となっていた。一方、「戦略計画:2004−2005年」の「ゴール1」は、「図書館や情報にかかわる職員の国際的な専門職継続発達プログラムを識別、奨励、促進する」である。両者を比較すると「教育」から「発達」へと語句を変えて展望を広げてはいるが、分科会の活動の変化を具体的に窺うことはできない。これは他のゴールについても同じである。そこで「ゴール1」に関する活動計画(Action Plan)をみておくことにする。「中期計画:1998−2001年」の「ゴール1」に関して、1998−1999年の活動計画は2つである。1つは年次大会での独自企画の開催であり、いま1つは2001年か2002年に第4回「図書館情報専門職の継続教育に関する世界会議」を開くべく準備をするということである。この2つは従来の活動の継続である。一方、「戦略計画:2004−2005年」の「ゴール1」の活動計画をみると、上記の2点に加えて、年次大会で他の分科会と合同してのプログラムの提供、他の分科会や外部団体と協力してのプログラムの提供、 すぐれた継続発達プログラムへの賞の授与をあげている。このように活動計画をみると、特に他のセクションとの横断的な結びつき、共同プログラムの実施など積極性を高めていることが理解できる。

4 CPDWLの活動:IFLA年次大会でのプログラム (20)

年次大会でCPDWL(CPERT)は独自のプログラムを提供してきた。それを一覧にしたのが表<1.2>「CPDWL(CPERT)の活動:年次大会でのプログラム」である。1993年から約10年間の大会プログラムを示したのだが、いくつかの特徴がある。

まず1993年から1998年の6年間をみると、「不明あるいはプログラムなし」が2回(1997、1994年)、発表はあるがテーマを設定しなかったのが2回(1998、1993年)ある。現在のようなテーマを掲げて年次大会のプログラムを組むのは、1999年からであり、それはまたグループとしての組織や企画力が確立してきたことも暗示していよう。


図表<1.2>「CPDWL(CPERT)の活動:年次大会でのプログラム」

年次大会

年次大会でのプログラム

第69回年次大会

テーマ:図書館情報専門職継続発達の管理者:オンラインでの提供の将来

1) ラトヴィアでの図書館情報専門職の継続発達に関する担当者:10年間の独立で変わったもの I. GUDAKOVSKA (Univ. of Latvia, Latvia), I. SMITH (Loughborough Univ., UK)

2) 英国大学図書館員への効果的な継続発達の提供:CILIPの全国調査結果より K. ENNIS (CILIP Professionals, UK), G. WALTON (Northumbria Univ., UK)

3) 公立図書館職員への新機会資金(New Opportunities Fund)による「情報とコミュニケーション技術に関する研修プログラム」( ICT Training Programme)の評価 R. A. SPACEY (Loughborough Univ., UK)

4) 図書館情報専門職の継続発達と遠隔教育:図書館情報学教育の将来 J. BROADY-PRESTON and H. PRESTON (Univ. of Wales, UK)

ワークショップ:オンラインを活用した図書館情報専門職の継続教育課程や研修プログラムの質に関する開発、提供、評価 於・フンボルト大学図書館(フンボルト大学、ロバート・ゴードン大学(Robert Gordon Univ. ,UK),サンホセ州立大学(US)での具体的なプログラムの実演と、そうしたプログラムの質に関する討論)

2003年8月1−9日 ベルリン(ドイツ)

第68回年次大会

テーマ:図書館情報専門職の継続発達における図書館団体の役割:成功したモデルとプログラム評価

1) CILIPの場合 M. HUCKLE (CILIP, UK)

2) オーストラリア図書館情報協会の場合 J. NICHOLSON (Library and Information Association, Australia)

3) 南アフリカ共和国図書館情報協会の場合 G. THOMAS (Library and Information Association South Africa, South Africa)

4) パネル・ディスカッション 

2002年8月18-24日 グラスゴー

(スコットランド)

第67回年次大会

テーマ:時間と空間を超えて生涯学習を提供する:3つのモデル

1) アメリカ大学図書館協会/ハーヴァードの指導者講習会:大学教育における大学図書館の戦略的指導能力を高める M. SULLIVAN (Organizational Development Consultant, USA)

2) 図書館指導者の開発:スタンフォード/カリフォルニア州立大学図書館の講習会:21世紀の司書職 A. GOLD (Stanford-California State Library Institutest Century Librarianship, USA)

3) 新しい技術のための継続教育の提供:ゲイツ・プログラム(Gates Program) C. ERICKSON (The Gates Foundation, USA)

2001年8月16-25日 ボストン(アメリカ)

第66回年次大会

テーマ:最新の図書館情報専門職継続教育

1) 司書継続教育のための電子教科書の開発 O. LAVRIK (Russian Academy of Sciences, Russian Federation) , V. GLOKHOV (Department of Electronic Technologies, Inion Ras, Russian Federation)

2) 伝統的な図書館情報学校と図書館情報専門職継続教育との統合方法 K. DOWLIN (San Jose State Univ., USA)

3) ロシアでの継続教育の手順と組織方法 E. SOBOLEVA, E. ARTEMEVA (Russian Academy of Sciences, Russian Federation)

4) 情報環境の変化と情報専門職の職場での学習 (C. SACCHANAND, Thailand)

2000年8月13-18日 エルサレム(イスラエル)

第65回年次大会

テーマ:新世紀の図書館情報専門職の継続教育と生涯教育

1) 継続教育学生へのウェブ中心の教育:サンホセ州立大学ヴァーチャル図書館学校のプログラムとその可能性についての報告 K. DOWLIN and D. LOERTSCHER (San Jose State University, USA)

2) きたる10年間のタイにおける図書館情報学の遠隔教育 N. RUKSASUK (Univ. of Thailand, Thailand)

3) 象の話を例に:図書館情報専門職の継続教育とは D. WEINGAND (Univ. of Wisconsin-Madison, USA)

4) 第4回「図書館情報専門職の継続教育に関する世界会議」:2001年8月ボストン B. WOOLLS (SLIS, San Jose State University, USA)

1999年8月20-28日 バンコク(タイ)

第64回年次大会

1998年8月16-21日

アムステルダム

(オランダ)

テーマなし

1) 継続教育への調査結果はいっそう多くの問題を生み出している R. HAFTER and B. WOOLLS (SLIS, San Jose State Univ., USA)

2) 図書館情報学についての遠隔教育:最近の卒業生の力と地位に関するパイロット研究が示唆する管理上の問題と示唆 B. SHELDON (SLIS, Univ. of Texas at Austin, USA)

第63回年次大会

(不明、あるいはプログラムなし)

1997年8月31日-9月5日 コペンハーゲン(デンマーク)

第62回年次大会

テーマ:利用者志向のアプローチ:図書館情報専門職継続教育への示唆

1) 継続教育の顧客:効果的なプログラムを開発する鍵 D. WEINGAND (SLIS, Univ. of Wisconsin, USA)

2) 将来の中国の図書館員と訓練 HE QIN (SLIS, Univ. of Illinois at Urbana-Champaign, USA), MA JIN (Department of LIS, Peking Univ., China)

3) 継続教育による再生:韓国の場合 Y. LEE (Korean Library Association, South Korea)

4) 大学図書館員が継続教育について考える WEN PEI ZHI and MA JING KUN (Beijing Normal Univ. Library, China)

5) アメリカと中国における大学通勤/通学者への図書館サービス YAN QUAN LIU, HEATHER (HUA) NIE (Univ. of Wisconsin-Madison, USA), YALING CAO (National Library of China, Beijing, China)

1996年8月25-31日 北京(中国)

第61回年次大会

テーマ:図書館学校が卒業生に対して職業生活全体を通して支援する責任

1) テーマ設定の趣旨 D. WEIGAND

2) 第3回「世界継続教育大会」の計画: B. WOOLLS (Univ. of Pittsburgh, USA)

3) 実行可能性の研究 E. AVERSA (Catholic Univ. of America, USA)

4) 図書館情報専門職継続教育を確かなものにする:図書館情報専門職員、団体、教育者の役割と責任 J. VARLEJS

5)(その他、3つの報告)

1995年8月20-25日 イスタンブール(トルコ)

第60回年次大会

(不明、あるいはプログラムなし)

1994年8月21-27日 ハバナ(キューバ)

第59回年次大会

テーマなし

1) 継続教育における知識/知恵のパラダイム:第3世界のビジネスの場合 T. SRIKANATIAH (World Bank, USA)

2)将来の図書館:図書館情報専門職継続教育の提供者の協力とコミュニケーションを強める D. WEBSTER (Association of Research Libraries, USA)

3) スペインにおける図書館員継続教育のニーズ:調査結果報告 M. ESPINOS (Univ. Pompeu Fabra, Spain)

1993年8月22-28日 バルセロナ(スペイン)

既述のようにこのグループはもともと図書館情報専門職継続教育(CPERT)ラウンドテーブルとの名称であった。2001年8月の年次大会で「図書館情報専門職の継続発達、職場での学習」(CPDWL)となり、2002年9月から正式に分科会となった。こうした点がプログラムにも現れている。2001年大会まではもっぱら継続教育という語が使われているものの、それ以後はいっそう広い展望を持つ継続発達という語を意識的に用いている。

特に2003年大会では従来の発表プログラムに加えて、ワークショップをプログラムにのせた。これは2003年8月7日にフンボルト大学図書館を会場に開かれ、約15名の参加があった。テーマは「オンラインを活用した図書館情報専門職の継続教育課程や研修プログラムの質に関する開発、提供、評価」で、3つの報告があった (21)

まずフンボルト大学は2つの修士号を遠隔学習で修得することができ、そうした授業の一環としてヴィデオ会議(Video conferencing)を採用して、3つの場所で講義をしている。それについて実演を交えた報告があった。続いて、スコットランドのアバディーンにあるロバート・ゴードン(Robert Gordon)大学情報メディア大学院のヴァーチャル・キャンパスについて報告された。さらにサンホセ(San Jose)州立大学の図書館情報学大学院長は、対面授業と遠隔学習との比較をしつつ、おのおのの長所と短所を指摘したりした。そこでは人間的なコミュニケーションには対面がいいが、議論にはオンラインの方が好まれるとか、またグループ作業は対面よりもオンラインの環境の方がよいといった興味ある指摘もみられる。ワークショップの特徴は、こうした実演や報告を土台に、実践や意見を活発に交換することにあるが、ここでも3つの発表を受けて討論をしている。そして例えば次のようなことが、大きな話題になった。

・さまざまな技量を持つ人のいっそう多くの仕事と時間が必要となる。

・スタッフと学生、学生同士の相互作用が増えるほど、学習者の満足度が高まる。

・マルチメディア形態の資料や多様な配布方法への要求が高まるだろう。

・文化、言語の相違、専門用語の使用、ウェブ発信についての国際標準などへの認識を高める必要がある。

・管理も含めて、すべてをオンラインでできるという期待がある。

・すべてのコースをオンラインでできるとしても、接触が学習を高める。

このワークショップをみる限り、図書館情報専門職を対象とする継続発達プログラムの実演や説明というよりも、一般的な遠隔教育の技術、手法、実際、問題点、課題などを取り上げることによって、図書館情報専門職へのプログラムを考案し実施する場合の、重要点を理解しようとする内容になっている。今後は、いっそう図書館情報専門職への具体的な継続発達プログラムに的をしぼった企画が設定されるであろう。

5 CPDWLの活動:「図書館情報専門職の継続教育に関する世界会議」 (22)

CPDWL(CPERT)の継続的な取り組みとして、「図書館情報専門職の継続教育に関する世界会議」(World Conference on Continuing Professional Education for the Library and Information Professions)がある。これは1985年8月の第51回IFLAシカゴ年次大会の直前にイリノイ州パロスヒルズ(Palos Hills)で開かれた会合を起点とする。というよりも、この会議を契機としてIFLAにラウンドテーブル設置の具体的動きが現れた。すなわち1986年4月にIFLAの専門委員会が図書館情報専門職継続教育ラウンドテーブルの設置を認め、現在にいたる組織と目的、それに活動の骨格ができたのである。

そののち1993年、1997年、2001年、2002年と計5回の世界会議が、IFLAの事前会議やサテライト会議として開かれている。頻度はさまざまであり、次回の第6回世界会議は2005年にオスロで開かれるIFLA年次大会での事前会議を予定している。これまでの世界会議を一覧にしたのが、図表<1.3>「図書館情報専門職の継続教育に関する世界会議」である。


図表<1.3>「図書館情報専門職の継続教育に関する世界会議」

IFLA年次大会

世界会議

開催年月

テーマ

第68回年次大会  (グラスゴー)

第5回アバディーン

(Aberdeen, UK)

2002年

8月

情報社会での図書館情報専門職継続教育(Continuing Professional Education for the Information Society)

P.L. Ward, ed. (IFLA Publication Number 100)

Continuing Professional Education for the Information Society , 2002, 263 p.

第67回年次大会  (ボストン)

第4回チェスター(Chester,Ver., U.S.)

2001年

8月

空間と時間を超えて図書館情報専門職の生涯継続教育を提供する(Delivering Lifelong Continuing Professional Education Across Space and Time)

B.Woolls, B.E. Sheldon, eds. (IFLA Publication Number 98)

Delivering Lifelong Continuing Professional Education Across Space and Time , 2001, 283 p.

第63回年次大会  (コペンハーゲン)

第3回コペンハーゲン

(Copenhagen)

1997年

8月

人間の発達:21世紀への対応力(Human Development : Competencies for the Twenty-first Century)

P.L. Ward, D.E. Weingand, eds. (IFLA Publication Number 80/81)

Human Development: Competencies for the Twenty-first Century , 1997, 400 p.

第59回年次大会 (バルセロナ)

第2回バルセロナ

(Barcelona)

1993年

8月

図書館情報専門職の継続教育とIFLA:過去、現在、未来(Continuing Professional Education and IFLA : Past, Present, and a Vision for the Future)

B.Woolls, ed. (IFLA Publication Number 66/67)

Continuing Professional Education and IFLA: Past, Present, and a Vision for the Future, 1993, 365 p.

第51回年次大会  (シカゴ)

第1回パロスヒルズ

(Palos Hills, Ill., U.S)

1985年

8月

継続教育:問題と課題(Continuing Education, Issues and Challenges)

E.E. Horne, ed.

Continuing Education, Issues and Challenges , 1985, 434 p.

注:出版社はいずれもSaur出版社である。

ここでは最近の第5回世界会議をみておく。この会議は第68回グラスゴー年次大会の事前会議として、アバディーンのロバート・ゴードン大学を会場に2002年8月14日から16日に開催された。約30件の発表が予定されていた。なお参加人員は明らかでないが、第4回世界会議の場合は約30名であった (23) 。アバディーンでの統一テーマは「情報社会での図書館情報専門職継続教育」で、さらに5つのサブテーマにわかれていた。すなわち「図書館情報専門職継続教育:次代の指導者養成」、「図書館情報専門職継続教育:情報リテラシーの発達」、「世界的な図書館情報専門職継続教育の発達」、「図書館情報専門職継続教育のヴァーチャルな提供」、「図書館情報専門職継続教育の質の問題」である。そこでの発表内容をいくつか簡略に紹介しておく (24)

「図書館情報専門職継続教育:次代の指導者養成」:ここでは6つの発表が準備された。例えば大学での図書館情報上級専門職に実際に必要な技量と、必要とされていると考えられている技量とのギャップを指摘し、これが成功する計画の作成に問題を提起していると指摘する研究発表があった。一方、オーストラリアの大学図書館の包括的研究では、専門職継続発達については、方針や実践ともに概して満足できる状態にあるとの調査報告が提示された。またアメリカの報告では、情報の組織化にかかわる目録担当者などの役割や責任が大きく変化していることを示し、こうした変化が職場でどのように把握され、またどのような考えや技術が必要とされるかといったことを扱っていた。それに図書館情報専門職の継続教育に遠隔方式を用いる可能性と方策を示すインドからの発表などが続いた。

「図書館情報専門職継続教育:情報リテラシーの発達」:ここでは5つの発表がされた。最初の3つはニュージーランド、フランス、英国からの報告で、学校や学校図書館での情報リテラシーの提供について、教師や図書館員の役割や技術を教育効果との関連で検討した実践報告であった。大学図書館に関しては、英国での大学1年生を対象とした情報リテラシーに関する科目のシラバスが紹介されて、問題点が指摘された。例えば情報への背景がない新入生に情報リテラシー教育を行う場合の根本的な難しさといったことである。

「世界的な図書館情報専門職継続教育の発達」:この部分での発表件数は6件である。例えば専門図書館協会(Special Library Association)による「グローバル2000」の実験が紹介された。これは開発途上国の専門図書館員の技量を高める目的で、世界銀行なども支援した試みである。また南アフリカ共和国、アメリカ/メキシコ境界地域を対象とする実践の報告があった。いずれも言語や文化の相違は課題となるが、協力が事業関係者すべてを豊かにし、いっそうすぐれた図書館サービスの提供に寄与すると結論している。

「図書館情報専門職継続教育のヴァーチャルな提供」:ここでは6つの発表が準備された。アメリカとクロアチアからの報告は、技術を基盤に現状と課題を示していた。また技術の重要性に注目して、教育者の技術についての考え方や適切な技術を用いることの重要性を論じる発表があった。またインドからの発表は、図書館学などでのウェブを使用した教育が遅れており、そうした教育方式の導入の重要性を主張していた。さらにニュージーランドからの事例報告では、図書館学校の修士課程の科目であるオンラインコースの授業「ディジタル図書館の問題」を、継続教育として現職者にも提供している大学の例をとりあげ、報告では科目受講生のオンライン授業についての反応を紹介している。最後に、図書館情報専門職継続教育への関心が高まっている理由として技術の発達と情報環境の変化があるとし、そうした変化が継続教育にもたらす点をマクロな視点から論じる発表もみられた。

「図書館情報専門職継続教育の質の問題」:ここでは3つの発表が準備された。まず「質」や「質の管理」を図書館情報専門職継続教育の観点から説き起こし、質を受け手に実感させる方法、質の向上に専門職団体が果たすべき役割などについて論じる発表があった。また理論的基盤を持つ知識基盤、専門職の価値、専門職倫理といったプロフェッションの特質から説明し、そうした原則と実践によって専門職は最高位の能力を発揮するといった内容の発表もあった。

6 CPDWLの活動:刊行物

CPDWL(CPERT)が単発で発行する単行書はともかく (25) 、継続的な刊行物としては以下の2つがある。まず同分科会の基本的な機関誌、コミュニケーションの媒体として存在するのがニュースレターで、毎年4月と10月に刊行している。1号につき30ページくらいを目安にし、2002年の報告によると配布部数は約100という(そのうち大多数は電子メールで、少数の会員だけに冊子体を郵送)。各号をみると、主に委員長による短い巻頭言、分科会(ラウンドテーブル)の活動、ニュース(図書館情報専門職の継続発達に関係する主題の会議や大会など)、文献目録だが、2001年ころから新刊案内や書評の類も組み込んでいる。そして4月のニュースレターには1年間の活動報告、8月のIFLA大会のプログラムや世界会議の予告などが入り、10月号には年次大会でのプログラムや世界会議の報告、それに年次大会中での同分科会(ラウンドテーブル)の会議の報告などが掲載されている。基本的には情報誌であるが、今後は論文の類も掲載していきたいとの意図を表明している。

次に、世界会議で発表された諸論文は、いずれも単行本で発行され、図表<1.3>「図書館情報専門職の継続教育に関する世界会議」に示しておいた (26) 。これらはいずれもK.G.Saur出版社から刊行されているが、会議での全発表を網羅している。また世界会議に先立って刊行されるので、会議当日に参加者は図書を手にして参加できるという特徴がある。

おわりに

CPDWLの組織はともかく、活動、および活動内容について、まとめておきたい。

CPDWL の活動 :年次大会でのテーマを決めた公開発表会(Open session)、数年に一度の世界会議の開催、年2回のニュースレターの刊行、世界会議での発表論文集の刊行などが、従来から実施されてきた活動である。しかし、分科会への移行にもともなって、従来の取り組みに加えて、年次大会でのプログラムの実施以上の活動、他の分科会などとの協力などを活動の課題としている。そして年次大会でのワークショップの開催、他の分科会や外部団体との共同プログラムの実施、賞の授与、ニュースレターの質(論文の掲載など)が具体的に提案され、実施されたりもしている。

CPDWL の活動内容 :他の分科会、とりわけ同じ第7部会「教育、研究」の分科会「教育、研修」との活動内容の重複を避ける必要がある。そのためCPDWLは分科会としての担当範囲を明確にすることが求められると同時に、CPDWL自体がそうした範囲の明確化の必要性を認識している。そのことによって、他の分科会や外部団体との横断的な共同の取り組みもいっそう実を結ぶと考えている。それを端的に示すのが、戦略計画でのIFLAの重点項目との結びつきである。従来は「司書職の発達」だけを組み込んでいたが、2004−2005年版では「社会における図書館の役割の支援」、「リテラシー、読書、生涯学習の促進」、「資源共有の促進」、「基準、指針、それに最善の実践の促進」といった項目を取り込んだ。これはCPDWLがIFLAの多くの重点項目に直接的に関係することを指摘することで、IFLA内部での立場を強めるとともに、分科会の思想的な存在意義をも訴える結果にもなっている。

CPDWLの思想的変遷についてみると、やはり「教育」から「発達」への語句の変化、およびそれにまつわる思想的な変化が重要となる。旧来の「教育」という言葉からは、たしかに制度的な教育、「教育」を受ける存在としての図書館員、またひとたび学位などを「教育」によって獲得したのちは、生涯にわたって職業をまっとうできるといった意味がつきまとう。一方、「発達」からは、個人としての生涯にわたる職業生活での「発達」、より大きくみれば図書館情報に関わる人びとやコミュニティの不断の「発達」という意味を強く有する。そうした思想の下での、具体的なプログラムの布置をみた場合、制度的な教育(大学での学位の授与を伴う、いわば正規の図書館員養成教育)は、むしろこうした「発達」のプロセスの中に組み込まれてしまうといってよい。

このような思想的展開は、ラウンドテーブルから分科会への組織的転換とは直接的な結びつきを持ちはしない。ただし、組織的転換とそれにまつわるグループの存在意義の明確化や再検討が、上に述べたような思想的展開を生んだことを否定することもできないであろう。それよりも重要なことは、社会における技術を中心とする革新であり、それが生活のすみずみにまでグローバルな規模で影響を与えているという事実であり、そうした中での図書館情報専門職の存在そのものを再検討し、社会に能動的に対応していかねばならないとの認識である。それは21世紀に入って開かれた2つの世界会議のテーマの題目自体、すなわち「情報社会での図書館情報専門職継続教育」、「空間と時間を超えて図書館情報専門職の生涯継続教育を提供する」に端的に表明されている。その場合、年次大会や世界会議での具体的な発表では、遠隔学習、Webの利用などについての技術、実験、実践結果などが、主流を占めている。インターネットが普及した20世紀末からは、特にこうした傾向が強まっている。

そして特に最近の報告や取り組みをみると、継続発達プログラムについての質の重視と質の測定、それに指針の作成といったことに、強い関心が表明されてきている。

既述のように「戦略計画:2002−2003年」(2002年11月改訂版)の「ゴール2」は次のようになっていた。

ゴール2:世界中の図書館員が、司書職の内か外かを問わず、生涯学習に貢献する機会を向上する。それには協力を容易にしたり、思想の交換のためにネットワークを開発したり、さらに専門職継続発達のための高質の土台の開発を含む。(優先事項:(h) 司書職の発達)

そして「戦略計画:2004−2005年」の場合、「ゴール2」は以下のように変化した。

ゴール2:世界中の図書館員が、司書職の内か外かを問わず、生涯学習に貢献する機会を向上する。(優先事項:(a) 社会における図書館の役割の支援、(c) リテラシー、読書、生涯学習の促進、(f) 資源共有の促進、(h) 司書職の発達、(i) 基準、指針、それに最善の実践の促進)

「戦略計画:2004−2005年」の場合、2002−2003年の文言の後半部を削除することで包括性を高め、またIFLAの優先事項との結びつきを強めるために、新たに4つの事項を加えている。その追加した事項の1つに「(i) 基準、指針、それに最善の実践の促進」があった。ところで、「戦略計画:2002−2003年」(2002年11月改訂版)の「ゴール2」の具体的な活動計画をみると、「2.4 高質な枠の中で、図書館情報専門職の継続発達プログラムの提供に関して、IFLA公認の指針を作成する」があり、これが「戦略計画:2004−2005年」の場合、この文言に加えて説明の形で「注:2003年8月に『図書館情報専門職の継続発達活動に関する質の指針』(Quality Guidelines for CPD activities)を提出する」が加わった。これはこの企画と指針の刊行について、資金をIFLAに求めることを意味している。

この企画は(1)「図書館情報専門職の継続発達プログラムについての『質』の意味と定義を探求」し、(2)「そうした質を測定、評価するための指針、IFLAが公認する指針を作成」することにある。その場合、固定的な基準(firm standards)ではなく、さまざまな脈絡(相違する国、文化など)でも適用できるように、柔軟な一連の指針として発表することを前提としている。具体的には指針を完成させるために5段階の作業を設定した。すなわち、(1)「世界規模での文献調査とその総括」、(2)「(1)の総括を受けての指針の草案作成」、(3)「指針草案の検討と評価」、(4)「(3)による指針草案の修正」、(5)「指針の完成と継続的な検討と修正」。第4段階を2004年8月に完成させ、そののちは毎年8月の年次大会の場で継続的な検討を行うというものである (27)

この作業は単に少数のグループが行っているのではない。既述のように2002年8月に年次大会の事前会議としてアバディーンで開催された「図書館情報専門職の継続教育に関する世界会議」では、統一テーマ「情報社会での図書館情報専門職継続教育」のもとに5つのサブテーマが置かれたが、その1つが「図書館情報専門職継続教育の質の問題」で、この企画を直接意識したものであった。この会議について、「質のテーマでの発表数は最も少なかった。それにもかかわらず、最も活気ある議論の的になったのは質の問題である」 (28) と総括されている。また2003年年次大会でCPDWLはワークショップを開催したが、テーマは「オンラインを活用した図書館情報専門職の継続教育課程や研修プログラムの質に関する開発、提供、評価」で、ここでも質や評価ということが重視されていたのである。図書館サービス全般について質と評価の測定が重視されているが、図書館情報専門職の継続発達プログラムにおいても、それは例外ではない。

[注]

(1)IFLA Statutes and Rules of Procedure, Article 5.2 (Mission), Article 6 (Core Values).以下も参考にした。語句の使用法は原則としてこの翻訳を用いている。武田英治・山本順一編『図書館法規基準総覧 第二版』日本図書館協会,2002,pp. 1685-1696

(2)図表<1.1>「IFLAの組織」は以下を用い、若干の修正をしている。 Officers Handbook , 2001 September, xi (IFLA’s STRUCTURE).

(3) 専門組織は以下を参照。“Division Structure” http://www.ifla.org/VII/divstruc.htm

(4)ラウンドテーブルの創設については以下を参照。“Continuing Professional Education, Annual Report 1985/86,” IFLA Annual 1986 , pp. 179-181

(5)“CPERT-Soon to Become a Section,” CPERT Newsletter , April, 2002, p. 25

(6)“Business Meeting: IFLA Continuing Professional Education Round Table (CPERT) Meeting of 21 August, 1999,” CPERT Newsletter, October 1999, p. 21

(7)“CPERT Executive Committee Business Meeting, Jerusalem, Israel, August 2000,” CPERT Newsletter , October 2000, n. pag.

(8)“Letter from the Chair,” CPDWL Newsletter, October 2001, p. 3;“News, New Name for CPERT,” ibid ., p. 4;“Open Session IFLA Conference, Glasgow: Tuesday of 20 August 2002,” CPDWL Newsletter , October 2002, p. 10

(9)“Minutes of the Executive Committee Business Meeting, CPERT, …, August 21, 2001,” CPDWL Newsletter, October 2001, p. 9

(10)“Letter from the Chair,” CPDWL Newsletter, October 2001, p. 3

(11)“Marketing Strategy for the IFLA Continuing Professional Development and Workplace Learning Section,” CPDWL Newsletter, October 2002, p. 4

(12)“Minutes of the IFLA CPERT, Executive Committee Business Meeting, …, 17 August 2002,” CPDWL Newsletter, October 2002, p. 6;“Marketing Strategy, …,” op. cit ., pp. 4-5

(13)“Letters from the Chair,” CPDWL Newsletter, October 2003, p. 3;“CPDWL: Notes from Meeting on 2nd August 2003 and 8th August 2003,” ibid ., pp. 19-21

(14)“The Round Table on Continuing Professional Education Medium-Term Program,” CPERT Newsletter , October 1998, n.pag.

(15)“Letter from the Chair,” CPDWL Newsletter , October 2001, p. 3;“Minutes of the Executive Committee Business Meeting, …, August 21, 2001,” ibid ., p. 7

(16)“IFLA Section on Continuing Professional Development and Workplace Learning, Strategic Plan, 2002-2003,” CPERT Newsletter, April 2002, pp. 7-8, CPDWL Newsletter, October 2002, pp. 9-10

(17)この改訂版は以下を参照。http://www.ifla.org/VII/s43/annual/cpdwl02-03htm

(18)“Draft Revised Scope, Vision and Strategic Plan 2004-2005 for CPD&WL Section,” CPDWL Newsletter , October 2003, pp. 16-19 (なおこれは最終草案というべきもので、公式に採択されたものに若干の相違があるかもしれない)。

(19)“IFLA’s Professional Priorities,” Officers Handbook, op. cit. , viii-x. 2000年12月に専門委員会が採択した。

(20)図表<1.2>「CPDWL(CPERT)の活動:年次大会でのプログラム」は以下を参考にした。http://www.ifla.org/IV/index.htm

(21)“CPDWL Section: Notes from the Half-day Workshop…,” CPDWL Newsletter, October 2003, pp. 6-9

(22)基本的な情報源は Newsletter Annual Report 、および図表<1.3>の刊行物である。

(23)“Minutes of the Executive Committee Business Meeting, CPERT…, August 21, 2001,” CPDWL Newsletter , October 2001, p. 7

(24)第5回世界会議の論文集(単行本)、さらにIFLAの第68回年次大会(グラスゴー)のHPを参照。また以下の報告がある。Clyde, Laurel A.“Continuing Professional Education for the Information Society,” IFLA Journal , 29 (1), 2003, pp. 18-23

(25)例を1点示しておく。Blanche Woolls (ed.), Continuing Professional Education: An IFLA Guidebook, Munchen, K.G. Saur, c.1991 (IFLA publication number 55)

(26)図表<1.3>「図書館情報専門職の継続教育に関する世界会議:刊行物」は、第1回の論文集を除いて、いずれも現物を確認した。

(27)“Proposal for the Development of IFLA Approved Guidelines for a Quality Improvement Framework for Continuing Professional Development and Workplace Learning,” CPDWL Newsletter , April 2003, p. 5-8:“Development of IFLA Approved Guidelines…,” ibid ., pp. 12-13;“CPDWL: Notes from Meeting on 2nd August 2003 and 8th August 2003,” CPDWL Newsletter , October 2003, pp. 21, 25.

(28)Clyde, Laurel A., op.cit., p. 19.

[参考文献]

IFLAのホームページ(http://www.ifla.org/)から、年次大会プログラム、CPDWLなどのページが用意されている。

IFLA Annual   CPDWL ( CPERT ) Newsletter

図表<1.3>「図書館情報専門職の継続教育に関する世界会議」で指摘した文献。