4. 2. 国家デジタル図書館の発展構想

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4. 2. 国家デジタル図書館の発展構想

 国家デジタル図書館の現況と将来構想について、2009年11月に行われた国家図書館と当館との業務交流で中国側から報告があった。その報告資料(20)の要点を以下に紹介する。

 

デジタル資源の構築

 デジタル資源の構築に関する我々(筆者注:国家図書館)の全体目標は、中国語デジタル資源を網羅的・系統的に収集・組織化・統合し、中国語デジタル資源のメタデータ登録・高価値化・創出センターを構築し、中国語デジタル資源の調達・長期保存・サービスセンターとなることであり、また、必要な外国語デジタル資源を選択的に購入・所蔵し、サービスを提供することである。

 国家デジタル図書館のデジタル資源構築の原則は次のとおりである。まず、方正中国語電子図書、同方中国語逐次刊行物データベース、大型参考図書など、代表的な中国語全文データベースを収集する。次に、所蔵資料のデジタル化については、甲骨、拓片、年画、敦煌文献、地方志、民国文献など、中国の歴史や文化を代表する、特色のある文献を優先する。3番目として、ウェブページの収集・組織化を重視し、中国学、無形文化遺産や第29回オリンピックなど、重要なできごとや特定の主題に関する情報の収集に力を入れる。4番目として、国際敦煌デジタル化プロジェクトやワールドデジタルライブラリーのような、デジタル資源の共同構築・共同利用を積極的に展開する。

 国家図書館は1980年代に中国語及び外国語のデータベースと電子出版物の購入、所蔵資料の書誌データベースの大規模な構築を開始した。1998年には所蔵資料のデジタル化を開始し、2002年にウェブページの収集・保存・サービスに関する検討を開始した。2008年末現在、国家図書館のデジタル資源は計250TBに達した。そのうち自館構築の資源が200TB、デジタル化した文献は1億1,200万ページを超える。購入した中国語・外国語のデータベースは200種以上で、データ量は50TBに上る。

 

ネットワーク化情報サービス

 1990年代の初め、国家図書館は電子閲覧室を開設し、デジタル図書館とネットワーク情報サービスの検討と実験を開始した。1997年に館のウェブサイトを開設し、国家図書館のネットワーク情報サービスは急速に発展した。2008年9月9日、国家図書館二期及び国家デジタル図書館が開館し、ネットワーク情報サービスの発展がさらに促進されることになった。2008年の国家図書館ウェブサイトへのアクセス数は、2007年と比べ44.7%増加している。

 近年、国家図書館はコンピュータネットワークを基盤として、データベース検索、バーチャルレファレンス、情報配信、文献提供などのサービスを展開してきたばかりでなく、常にサービス方法の刷新に努め、次のような新たなサービスを展開している。

(1)基層図書館へのサービス

 2005年から全国各地で選択的に「国家デジタル図書館分館」を構築し、ミラーサイトや直接配信などの方法で、当館(筆者注:国家図書館)の質の高いデジタル資源を各市の分館に送信している。国家デジタル図書館の情報サービスネットワークは、ひととおり全国に行き渡った。

(2)モバイルデジタル図書館サービス

 2007年、先進的なモバイル技術を図書館サービスに導入し、携帯電話を媒体とする国家デジタル図書館モバイルサービス―てのひら国家図書館―を開始した。このサービスを通じて、利用者はいつでもどこでも図書館の資源とサービスを知り、また利用することができる。このプラットフォームによるショートメールサービス、携帯電話閲覧、国家図書館漫遊などのサービスが既に稼働している。

(3)視覚障害者デジタル図書館サービス

 2008年10月14日、国家図書館と中国障害者連合会情報センター、中国点字出版社が連携して共同構築した中国視覚障害者デジタル図書館のウェブサイトが正式に稼働した。

(4)デジタルテレビサービス

 国家図書館と北京歌華ケーブルテレビが提携し、デジタルテレビでの配信に適した図書館資源・サービスを、北京地域のケーブルテレビネットワークを通じて、300万戸のデジタルテレビ利用家庭に送り届ける。ユーザーは、デジタルテレビを通して「国家図書館講座」「国家図書館展覧」「テレビ閲覧」「国家図書館の名品」などのサービスが利用できるだけでなく、インタラクティブ・ポータルを通じて、さらに多くのカスタマイズサービスを受けることができる。

(5)タッチパネル式電子新聞閲覧サービス

 出力装置をタッチパネル式の端末に変更し、利用者がよりリアルに電子新聞やデジタル資源を閲覧できるようになった。現在、新聞200種、雑誌40種を閲覧に供しており(毎日更新)、利用者は紙面を自由に移動、縮小、拡大、ページめくりすることができる。

 

発展戦略構想

 

(1)戦略目標

 国家デジタル図書館は国の書誌センターであるだけでなく、インターネット上の国の情報・知識・サービスセンターとして、国の公共文化サービス体系を整備する上で不可欠の重要な役割を果たし、世界の中で信頼に足る中国語情報・知識資源センターとなることを長期目標とする。

 戦略目標として掲げるのは次の3機能である。

  • ①デジタル資源のアグリゲーター
  • ②国のデジタル情報インフラにおける情報資源センター
  • ③インターネット上の高品質な中国語デジタル資源サービスセンター
(2)戦略計画

 上記戦略目標を実現するため、デジタルコンテンツ、ブランドサービス、技術推進の三大戦略を策定・実施しなければならない。

 ①デジタルコンテンツ戦略 1つは国家デジタル図書館所蔵コンテンツの価値を高めることを目指した計画であり、もう1つは国家デジタル図書館所蔵コンテンツの優位性を向上・拡大する計画である。前者では、各種文献情報資源の統合・組織化を通じて、所蔵文献情報へのアクセシビリティを高めることにより、所蔵文献の社会的価値とサービス・パフォーマンスを効果的に向上させる。後者では、インターネットをベースに、中国に立脚し、世界に向けて、中国語文献・情報・知識のサービスプラットフォームを構築し、国家図書館の国内的、国際的な影響力を高める。

 ②ブランドサービス戦略 サービスは、いかなる図書館においても中核となる価値を最終的に体現するものであり、国家図書館も例外ではない。国家図書館は、国家デジタル資源ポータルの構築を加速し、良質な情報資源のナビゲーターとなり、より系統的、完全で、科学的な専門情報サービスをユーザーに提供していく。

 ③技術推進戦略 図書館の発展は、例外なく技術発展と密接に結び付いている。国家図書館は成熟した情報技術を利用して、文献・情報・知識コンテンツを収集・組織化・サービス提供し、完全な中国国家デジタル図書館デジタル情報資源アクセスシステムを構築する。

(岡村志嘉子)

 

(20) 詹福瑞. “中国国家デジタル図書館の発展構想”. 国立国会図書館. 2009-11-25.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/keynote_nlc.pdf, (参照 2010-09-02).