特集にあたって / 柳与志夫

カレントアウェアネス
No.270 2002.02.20

 

特集:21世紀の図書館情報学

 

特集にあたって

 印刷カードやOPACを例に引くまでもなく,図書館情報学は,その時々の最新技術をうまく取り込んで自己革新を図ってきた。その意味で,インターネットに代表される,情報源の電子化と蓄積・編集技術,さらに情報通信技術の飛躍的発展は,書誌学から図書館学,そして図書館情報学への展開に続く,大きな変革の機会を与えることは間違いない。しかし,今回の技術環境の変化は全面的かつ急激であり,それに図書館情報学がうまく対応できるか否かは予断を許さない。

 情報通信技術に加えて,図書館情報学にとっての大きな変化要因として,関係研究分野の急速な広がりがある。知識工学や計算機科学などの数理科学にとどまらず,図書館における情報リテラシー育成の問題一つをとっても,教育学,社会心理学,経営論,政策科学など多様な領域での成果に目配りすることが必要となっている。このことは,図書館情報学の研究対象と方法を豊かにするという観点からは好機であるが,一方で固有の領域を見失う危険も孕んでいる。

 あえて言えば,新しい知の総合科学として再生するか,他領域へと雲散霧消してしまうかの岐路に,図書館情報学は立たされているといえよう。また仮に存続するにせよ,もはや「図書館情報学」という名称がそぐわないものになってくる可能性は大きい。

 本号では,新たな展開の可能性があると思われる六つの研究領域(知識組織化,電子図書館,知識管理,知的サービス,文化資源保存,文化情報資源政策)を取り上げ,各分野で今後大きな役割を果たすことが期待される6人の研究者・実務家に,自由な立場での研究エッセーの執筆を依頼した。懐疑的なものも含めて今後の展望に関する各論者の視点は様々であるが,この特集によって,図書館情報学の将来を考えるための重要なヒントを提供することができれば幸いである。

国立国会図書館図書館研究所:柳 与志夫(やなぎよしお)