4.2 カリー・カレッジのレヴィン図書館:ニューイングランドの小さな大学図書館

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David Miller
Associate Professor / Librarian of the Levin Library
(レヴィン図書館准教授兼司書  デイビッド・ミラー)

with Hedi BenAicha
Professor / Librarian of the Levin Library
(レヴィン図書館教授兼司書  ヘディ・ベンアイチャ)

Leslie Becker
Supervisor Library Circulation of the Levin Library
(レヴィン図書館貸出利用担当課長  レスリー・ベッカー)

Jane Lawless
Associate Professor / Librarian of the Levin Library
(レヴィン図書館准教授兼司書  ジェイン・ローレス)

Frances Reino
Sr. Lexcturer / Librarian of the Levin Library
(レヴィン図書館上級講師兼司書  フランチェス・レイノ)

Kathy Russell
Associate Professor / Librarian of the Levin Library
(レヴィン図書館准教授兼司書  キャシィ・ラッセル)

Mary Ryan
Associate Professor / Librarian of the Levin Library
(レヴィン図書館准教授兼司書  マリー・リャン)

and Gail Shank
Associate Professor / Librarian of the Levin Library
(レヴィン図書館准教授兼司書  ゲイル・シャンク)

 カリー・カレッジは1879年、演説と表現の学校として設立された。もともとはマサチューセッツ州ボストンの下町バック・ベイ近郊にあったが、1950年代にミルトン郊外の町へと移転した。現在、本学は(文理あわせて)20の学部レベルの専攻を擁しているが、中でも最も人気の高いものはマネジメント、コミュニケーション、看護、刑事訴訟、そして教育である。また本学では教育、刑事訴訟、そして経営管理の修士学位も授与している。学生数は、伝統的なフルタイムの学部生が約2,000人、継続(成人)教育の学生が約1,500人おり、さらに380人の大学院生がいる。継続教育のコースはミルトンのキャンパスのほか、2か所のサテライトキャンパスでも行われている。

レヴィン図書館外観

レヴィン図書館外観

 当館は全ての学術プログラムをサポートし、大学全体にサービスを提供している。当館の建物の3つのフロアは大学の基礎スキルセンター(専門家および学生によるチューターを提供)と、コンピューターラボ/授業スペースで共有されている。クイグレイ学長(Kenneth K. Quigley)のリーダーシップのもと、大学の学生数、教員数、スタッフ数は、この10年間で2倍以上になった。しかし当館の蔵書やサービス、オフィス、学習エリアのために使えるスペースは基本的には同じままである。それゆえ、当館の最大の課題は、デジタル時代より前の時代の、もっと小さな機関向けにデザインされた建物の中で、サービスと蔵書を拡大し近代化すること、である。

 当館の専門職には、6名のフルタイムの司書がいる。図書館長、レファレンス担当課長、テクニカルサービス担当課長、ILL担当、蔵書構築担当、逐次刊行物・電子リソース担当、である。大半のフルタイムの司書は、レファレンスと文献利用指導を行う。4名のパートタイムの司書もレファレンスと文献利用指導を行い、1名は利用指導のコーディネーターの役割も果たしている。またMLSをもたない(準専門職の)フルタイムのスタッフが4名おり、貸出担当課長、貸出担当課長補佐、テクニカルサービスの統括、そして資料購入・総務アシスタントとして勤務している。さらに2名、パートタイムの準専門職スタッフがおり、うち1名は政府資料スペシャリストである。ライブラリースクールの学生インターンも1名、図書館の教育リソースセンターで勤務している。このセンターは教育学専攻に特化したリソースを備えており、学生と教員の授業課題を準備するのに用いられている。また、30名の学生スタッフが、貸出カウンターでそれぞれ6時間程度働いている。当館は、学期中は週に88時間開館しており、2006/2007年度の職員給与を除く図書館の予算は469,000ドルであった。

 2007年2月の時点で、およそ99,000点の単行資料を所蔵している。この数字には、主要コレクションに含まれている1,900点以上の音楽・映像資料と、教育リソースセンターが所蔵する8,200点の蔵書が含まれている。後者には、学生と教員のための資料のほか、子ども向けの図書や音楽・映像資料、ゲーム、おもちゃも含まれている。毎年の蔵書全体の増加は緩やかであるが、その理由は主に定期的な「除架」や、古い資料の除籍を行っていることによる。除架をする理由の一つに、学生の学習やミーティングのためのスペースに対するニーズが高まっている中で、建物内のスペースが限られていることも挙げられる。有形のこれらの蔵書に加え、Serial Solutions社を通じて購入したMARCの目録レコードを通じて、図書館目録から19,000タイトルの電子ジャーナルにアクセスできる。従来型の印刷媒体の雑誌の購読タイトル数は少なく、400タイトルを超える程度である。有形の図書館蔵書の貸出数は、2006年には8,100件であった。

レヴィン図書館内部の様子

レヴィン図書館内部の様子

レファレンスサービス

 大学が大きくなるにつれ、レファレンスサービスに対する需要もまた膨らんでいる。レファレンスサービスは、レファレンスデスクにスタッフを配置するという従来型のサービスを超えたものになっている。デスクは現在週に55時間開設されている。我々は電子レファレンスサービス(“Ask a Librarian”)を導入し、これを通じて図書館利用者が電子メールで質問を寄せたり、平日には24時間以内に返答を受け取ることができるようにしている。質問に対し、電話や対面でのフォローアップを行うこともある。またRAP(Research Assistance for Papers)と呼ばれるレファレンスサービスも提供している。RAPは予約制で、通例、学生と司書が1対1で1時間ほどのセッションを行うものである。RAPの利用はここ数年で変わってきた。予約数は、2001年秋学期の35から、2006年秋学期には29へとわずかに減少したものの、予約をした学生の中の院生の割合が増加している(数字は秋学期のもの。伝統的に、春学期のRAPの需要は秋よりも少ない)。院生のRAPは当然ながらより集中して行われ、セッションが1時間以上続くことが多い。

 よく知られているように、新しい世代の学生たちは、古い世代の学生たちよりもデジタルリソースをよりいっそう使い慣れている。しかし、学部生のデジタルリソースに対する態度には、興味深い変化が起きているように思われる。まず1990年代、検索エンジンが登場すると、学生たちは「なんでもインターネット上に見つけることができる」と考えたようであった。しかし、次第に、自分たちが見つけるものは、多くの場合表面的で不十分であることに気づくようになった。そこで学生たちは、まず検索を行った後、司書のもとへ相談に来るようになり、また多くの教員も、単に「Googleで検索すること」は研究戦略としては認められない、と言うようになった。またレファレンスライブラリアンが気づいたもう1つの変化として、レファレンスデスクで聞かれる質問数は減少しているが、その内容は以前よりもいっそうアカデミックなものになっている、というものが挙げられる。単純な事実に関する質問はインターネットで回答が見つかるからであろう。

 2004年、レファレンスライブラリアンはMicrosoft Accessを使い、より深くレファレンス対話を追跡し、分類し始めた。これにより多くのことが判明した。例えば、以下のようなものである。

• レファレンスデスクを離れたところで、レファレンスサービスに費やされている時間がどのくらいであるかが判明した。デスクの非番のときに電話に出たり、メールに返信したりという作業をしているが、非番時のレファレンス業務の60%は電話である。

• どの専攻がレファレンスライブラリアンの時間を最も利用しているかがはっきりとつかめた。本学の専攻のうち、看護、刑事訴訟、コミュニケーション、英語の4分野が50%の時間を占めている。蔵書構築の予算配分を考えるとき、この点を考慮する。

• 継続教育の学生と修士課程の院生からのリクエストは全体の中でかなりの割合を占めており、現在これらの学生とのコンタクトを増やすべく努力中である。

• レファレンスの約50%は10月、11月、4月の3か月になされており、また週のうち約50%が、月曜日と火曜日になされている。

• 管理データをより良く提供できるよう、Accessの使用方法を改善していくことを計画している。

文献利用指導

 大学が大きくなるにつれて、司書による教室訪問を望む教員のリクエストが増えてきている。例えば、2001/02年度、司書は115クラス(学生数は1,618人)で授業をしたが、2005/06年度には131クラス(学生数は1,553人)で授業をした。学生数がわずかに減少しているが、これはクラスの平均人数が小さかったためである。

 必須のコース(例:英語のライティングのワークショップ)が毎学期、文献利用指導サービスを利用するため、ほとんど全ての学生が文献利用指導サービスを受けている。最も人気の高い指導形態は、館内でのクラス単位のミーティング“one-shot”で、学生は当館のリソースに触れられる。司書は教員と協力して、このクラスを意義深い経験にしようとしており、そのために授業課題のコピーを事前に要求している。この授業課題を用いることで、我々のプレゼンテーションが学生たちに関連のあるものになる。クラスの最後には、ガイダンスのもと、学生たちが実際の研究を開始する時間も設けてある。多くの教員は、このone-shotクラスに続く2回目のクラスとして、司書とともに館内のコンピュータラボで作業をすることを計画している。

 学期の半ばに行う文献利用指導が、最も効果的であることがわかっている。なぜなら学期半ばになると、学生たちはその学期の研究課題を課されており、具体的な研究を始める準備ができているからである。つまり「必要とする時期」になっており、図書館のリソースについて学ぼうという姿勢が学生側にできているからである。

 現在、我々は継続教育が提供されている大学のサテライトキャンパスにも、この文献利用指導を拡大していこうと努力中である。ネットワーク技術により、遠隔地からも当館のリソースにアクセスすることは可能であるが、こうしたキャンパスで学ぶ学生の多くが、テクノロジーを利用することを躊躇する年長の学習者である。こうした学生たちが我々の文献利用指導をとても評価していることがわかっている。

蔵書構築

 蔵書構築は、図書館長とともに蔵書構築担当司書が率先している。毎年、年度始めに、図書館の資料費が資料構築方針に従って配分される。2006/07年度の予算の割り当てはおよそ75,000ドルであった。各学部に配分される額は、様々な要素により決定される。例えば学部の規模(専攻の学生数と教員数)、提供されているコース数などである。司書は学部に対するリエゾンの役割を果たし、それぞれの領域における選書に責任を負う。現在提供されている、また提供する計画があるコースのサポートとして、選書については教員からの推薦を受けている。この蔵書構築のモデルは以前のものとは異なっている。以前は図書館長が第一の選書担当者であり、雑誌Choiceが主な選書ツールとして用いられていた。

 資料費は、印刷物および非印刷物の購入に使われる(現時点では、逐次刊行物のための予算はこの配分とは別になっている。しかしこのやり方は見直し中である)。ほとんどの発注は“Title Source 3”というソフトウェアを用いてウェブ経由で行われる。このソフトウェアは当館の主な資料購入先であるBaker and Taylor社が提供するものである。Title Source 3から仮のMARCレコードを、我々が用いているInnovative Interfaces社の図書館システムにダウンロードしている。このシステムには予算費目ごとの配分と支出を記録できる会計コンポーネントが組み込まれている。資料費の約75%がBaker and Taylor社に支払われているので、リソースを最大限にし、運営を合理化するため、当館は2006年に同社との契約を再交渉した。Baker and Taylor社では我々の購入カテゴリーを分析し、すべての資料に対し一律のディスカウントを提供してくれた。これにより音楽映像資料のディスカウント率は少し大きくなった。同時に、ベンダーを一元化することが決定され、Baker and Taylor社が我々の「継続資料」(一般的には、毎年出版または更新される出版物)を提供するベンダーとして選ばれた。同社の“Compass” ソフトウェアを利用して、我々はオンラインで継続資料を管理することができるようになり、一貫したディスカウントが維持され、ペーパーワークが減り、ベンダーのスタッフとよりよい関係が築かれた。

 さらにOCLCの“WorldCat Collection Analysis”サービスのようなオンラインツールも蔵書構築に寄与している。またBowker社の“Resources for College Libraries”というコア・コレクションを概説したツールを利用する計画もある。こうしたリソースにより、我々は当館の蔵書の長所と短所を把握することができるのである。

目録作成と統合図書館システム

 前述の通り、当館の統合図書館システム(ILS)はInnovative Interface社が提供するもので、1995年に初めて導入された。これは蔵書目録のコンソーシアムの一部になるものではなく、「スタンドアロン」のシステムである。主要なILSのモジュールはWeb OPAC、目録作成、逐次刊行物管理、貸出、資料受入管理、電子リソース管理である。目録作成はMARC21フォーマットで行われている。各レコードはOCLCの“Connextion”ソフトウェアを用いて作成、編集され、ILSへとダウンロードされる。

 当館の蔵書には刑事訴訟と教育学専攻の修士論文も含まれている。これらは完全にオリジナルの目録を作成している。また「灰色文献」についても、オリジナルまたは修正したレコードを作成している。これらは重要なドキュメントであり、オンラインで出版された場合でも、プリントアウトし製本している。このような、ローカルに印刷したドキュメントの目録レコードには、電子媒体の場所を示すURLも含まれている。アグリゲータのデータベースで入手できる個々の電子ジャーナルについては、毎月、Serials Solutions社からMARCレコードの更新分を受け取っている。これは新たに追加されたタイトル、外されたタイトルに加え、収録年の変化も示すものである。個々の目録レコードについては、タイトルでの検索に加え、キーワードや主題を用いてトピックで電子ジャーナルを検索することが可能である。学術的価値のある無料でアクセスできるウェブサイトも、選択的に目録を作成しているが、もちろん「ウェブ全体の目録を作成しよう」ということは考えていない。リソースが許す限り、我々は規模が小さくとも価値のある大学のアーカイブのために、メタデータを提供し始めたいと考えている。

電子リソースと電子ジャーナル

 蔵書構築と電子リソース提供にあたって、逐次刊行物と電子リソースへのアクセスは常に大きな懸念事項である。ウェブを通じてアクセスできる無数のリソースをコーディネートすることは、図書館の蔵書目録が果たす役割に加え、プロクシサーバー、電子リソース管理ソフトウェア、リンクリゾルバ、統合検索インターフェースに対するニーズを強めることになる。

 雑誌論文への電子的なアクセスの供給がますます進むことは、当館の利用者に大きな価値をもたらしているが、一方で多くの重要な問題をも生み出している。第一に、我々はニーズの多様さが、多様なフォーマットの中で適切なものを選ぶのにどの程度影響するかを見極めなければならない。電子フォーマットの雑誌なら、遠隔地の利用者はより容易に利用できるだろうが、特定の環境ではまだ多くの利用者が冊子体を好んでいることもわかっている。さらに個々に購入している雑誌と、購読契約しているデータベースに含まれている雑誌の重なりも考慮しなければならない。「コア」と見なされ、アグリゲータのデータベースに含まれていても冊子体を購読すべきであるとされる雑誌もある。

 さらに最近では、出版社が特定のトピックに焦点をあてた「バンドル」を開発し始めている。例えば出版社Sage社は、主題領域ごとに一流の逐次刊行物が利用できるパッケージを作って提供しており、アグリゲータのデータベースからはフルテキストを削除している。しかしこのような出版社によるパッケージの費用は比較的高く、計画と予算の変更が必要になるであろう。予算と照らし合わせて優先順位を決めていく必要性があることには変わりない。このプロセスは出版される情報の量が増えるにつれ、ますますさしせまった複雑なものとなっていっている。

ILLとリソースシェアリング

 電子データベースの利用が広まったからといって、教員や学生からの、研究資料のためのILLリクエストが減少することはなく、2005/2006年度には、他の図書館から1,014本の雑誌論文と519冊の図書を借りている。ちなみに、2002/2003年度には749本の雑誌論文と425冊の図書がリクエストされていた。また他の図書館の利用者への貸出も行っており、2005/2006年度には344本の雑誌論文と473冊の図書が貸し出されている。ちなみに、2002/2003年度には318本の論文と559冊の図書が貸し出された。ほとんどの貸借は合衆国内で行われているが、カナダ、オーストラリア、デンマーク、スペイン、オランダ、ニュージーランドの図書館とも貸借を行っている。本学の優れたカリキュラムを示すように、刑事訴訟、看護および教育分野の雑誌論文に対するリクエストが最も数が多い。

 ILL の管理は技術的な問題であるだけでなく、レファレンスサービスと図書館利用指導にも関連している。初心者から経験豊かな者まで、多くの学生は、データベース検索で見つかった論文は、その実際の有用性に関わらず入手すべきであると考えている。同様に、電子リソースによって研究者は、大半の研究者や学生が過去に持っていたよりも多くの情報を入手できるようになった。これにより、最も関連のある資料をどのように拾い集めるか、重複した資料や取るに足らない資料をどのように捨てるか、またどの時点で資料の収集をやめて、執筆や重要な分析を始めるか、を学ぶことが必要となっている。我々は学生がリクエストするものを提供しようとしているが、こうした段階で学生が問題を抱えていると見たら、ILL のリクエストはさらなる指導の機会になりえるのである。

 当館は2つのリソースシェアリングのコンソーシアムに所属している。1つは南東部マサチューセッツ地域図書館システムで、もう1つは「リソースシェアリングに真に関心のある図書館」(LVIS:Libraries Very Interested in Sharing)である。後者には合衆国中から数千の図書館が参加しており、参加館は無料で相互貸借できることになっている。

結び

 大学の成長と電子リソースの拡大という双子の要素が、当館のサービスと蔵書のあらゆる面を作り変えつつある。とはいえ、当館の物理的な設備が近い将来に拡大されることはなさそうなため、既存のスペースの再利用が重要な優先事項となっている。2006年、大学側は図書館建設を専門とする建築家を採用し、あまり利用されていないスペースのデザインの見直しと、集中的に利用されているエリアの再構築に関する提言を受けた。後者に関しては、学生世代の社会学的変化も考慮に入れる必要がある。例えば、今の学生世代はグループで気持ちよく作業することが当たり前になっているが、このグループには携帯電話やインスタントメッセージでつながっている遠隔地の人々も含まれている。これは学習用スペースのデザインだけでなく、携帯電話の利用規則にも影響を与える。我々の教育的ミッションに関連して、世代による違いのどの側面が考慮されるべき重要なものであるか、我々はわかりつつある。

 当館の話は、「重圧のかかる状況での優雅さ」のように、継続性とさらなる発展の話である。本学が健全に成長過程をたどっていることにより、当館はリソースの混交、教員・スタッフ・学生たちとのコミュニケーション、物理的なスペースの再利用、そして新規サービスや再構築されるサービスといった、多くの意義深い課題を与えられているのである。