2012年2月1日から、欧州の文化遺産ポータルEuropeanaを通じて、今後3年間で1,000万ページ以上のデジタル化新聞を提供する“European Newspapers”プロジェクトがスタートしました。同プロジェクトの目的は、デジタル化した新聞のデータを集約及び改良することで、OCR・OLR・固有表現抽出(NER)等の方法の改善や、各機関が提供するメタデータのEuropeana Data Modelへの変換を行うとされています。プロジェクトには、欧州研究図書館協会(LIBER)やリーダー機関のベルリン国立図書館をはじめとする欧州の17機関が参加しており、欧州委員会(EC)からの助成を受けているようです。
2012年2月16日、中国の大学図書館ネットワーク“CALIS”(China Academic Library and Information System)の書誌レコード50万件が、OCLCの総合目録WorldCatへ投入されたと発表されました。1987年から2001年までの出版物が対象とされています。OCLCとCALISはこのプロジェクトに関して2011年10月25日に協定を結んでいました。今回の投入をもってプロジェクトの第一フェーズを終了し、1年後に必要なコストやILLへの効果等を含めた評価を行う予定とのことです。
2012年2月13日、米国の図書館情報資源振興財団(Council on Library and Information Resources:CLIR)と米国立技術・教養教育研究所(National Institute for Technology and Liberal Education:NITLE)が、新たな人文学のデジタル出版モデルとして“Anvil Academic”を発表しました。これは人文学研究が大規模なデータセットに基づいて行なわれるようになってきていることを受けて、これまでの伝統的な研究論文では表現できなかった、デジタル技術を反映させた新たな形式での学術出版を目的としているようです。Anvil Academicで出版される学術書は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスで提供され、モバイル端末等でも利用できるものとなるようです。また、Anvil Academicを通じて刊行される学術書全てを、「米国デジタル公共図書館」(DPLA)で採用される標準やプロトコルに対応させるとともに、Anvil AcademicはEuropeanaの技術要件や、人文・社会科学の学術図書のオープンアクセスを推進するコンソーシアム“Open Access Publishing in European Networks”(OAPEN)のガイドラインに沿ったものとなるようです。
2012年2月14日に、米国の非営利団体ITHAKAの戦略・研究部門であるITHAKA S+Rが実施している調査プログラム“Research Support Services for Scholars”(RSS4S)が、歴史学研究の支援に携わる関係者のインタビュー調査結果をまとめた中間報告書を発表しています。この研究は、デジタル人文学等の登場によって、米国の歴史研究者の情報支援のニーズや研究環境がどのように変化しているのかを明らかにし、それをもとに研究者支援に役立ようというもののようです。この度公開された資料は、第1フェーズとして、歴史研究者の支援を担当している図書館や学協会、高等教育機関等の職員14名に対して行なわれたインタビュー結果がまとめているとのことです。RSS4Sは、この調査結果をもとに図書館員やアーキビスト、歴史研究者等のコミュニティでの議論に役立ててほしいとし、RSS4Sへのフィードバックも求めているようです。
Interim Report: Interviews with Research Support Professionals (PDF)
OCLCが、所蔵数2万点以下の小規模図書館を対象とした“Website for Small Libraries”というサービスのベータ版を開始したそうです。同サービスの導入館は、用意されたテンプレート等を利用して簡単に自館のウェブサイト(モバイル機器やタブレット端末にも対応)を作成することができ、所蔵資料や利用者のデータをインポートすることで所蔵検索、貸出、更新、予約、延滞料管理等を行うことも可能とされています。同サービスでは、統合図書館システムを導入していない、職員が1~2人しかいないような図書館等をターゲットとしているようです。利用料金は年間500ドルで、90日間のトライアルが可能とのことです。
2012年2月15日、スペインのプラド美術館(Museo Nacional del Prado)が電子図書館を公開しました。この電子図書館では、第一弾として、プラド美術館が設立された1819年から1996年までの、同館の所蔵絵画コレクションカタログ36巻がデジタル化され提供されているようです。デジタル化資料は画面上で閲覧できるほか、PDFでダウンロードすることもできるようです。プラド美術館は、今後も所蔵している貴重な手稿資料のコレクションや、コレクションカタログ等をデジタル化して提供する予定とのことです。
2012年2月9日、米国の上院・下院に“Federal Research Public Access Act”(FRPAA)法案が提出されました。同法案はこれまで、2006年(上院)、2009年(上院)、2010年(下院)にも提出されています。FRPAAの内容は、外部委託研究の予算が年間1億ドルを超える連邦政府機関(現時点で農務省等11機関が該当)に対して、パブリックアクセス方針を策定して、助成を受けた研究者が査読論文をオープンアクセスで公開すること等を求めるというものです。このFRPAAに対して賛同の意を示す文書が、2012年2月14日付けで、米国法学図書館協会(AALL)、米国図書館協会(ALA)、大学・研究図書館協会(ACRL)、北米研究図書館協会(ARL)、クリエイティブコモンズ、Greater Western Library Alliance、Public Knowldge、Public Library of Science(PLoS)、SPARCの以上9団体から発表されました。
デジタル人文学の研究コミュニティの最新動向を紹介するポータルサイトDigital Humanities Nowが、2012年3月に“Journal of Digital Humanities”という新たな学術雑誌を刊行すると発表しています。論文は、Digital Humanities Nowのウェブサイトの“Editors' Choice”というカテゴリーに掲載されている記事の中から選ばれており、その形式はテキストのみではなく音声や動画などを含むものも掲載されるようです。査読はオープンピアレビュー形式で行なわれ、2月29日まで創刊号である第1巻第1号の論文8本が公開されているようです。