2019年10月,英国のOpen Book Publishers社は単行書“Engaging Researchers with Data Management: The Cookbook”を刊行した。同書の編集にはプロジェクトチームが立ち上げられ,主な構成メンバーは発生生物学の研究者でオランダ・デルフト工科大学に所属するConnie Clare氏を筆頭著者とする著者チームや,研究データ同盟(RDA;E2228ほか参照)の「研究データのための図書館」研究グループ(Libraries for Research Data Interest Group)のメンバーである。同書はHTML版・PDF版がオープンアクセス(OA)で公開されている。本稿では,その内容を概観する。
2020年1月,筆者らが所属する研究データ利活用協議会(Research Data Utilization Forum:RDUF;E1831参照)のリサーチデータサイテーション小委員会は,国際組織FORCE11(The Future of Research Communications and e-Scholarship)による「データ引用原則の共同宣言(Joint Declaration of Data Citation Principles:JDDCP)」の日本語訳を公開した。FORCE11は研究データの流通や利活用を推進する活動を行っており,2014年に公開された「FAIR原則」はデータ公開の指針として広く採用されている(E2052参照)。本稿で紹介するJDDCPは2014年に公開され,2020年2月1日現在,研究者などの個人280人,出版社,学協会,データセンターなど120機関が賛同している。以下では,データ引用の重要性と現状について述べた上で,JDDCPの概要と学術情報に関わるステークホルダーの取り組みを紹介したい。
地域課題解決のために市民自身がITテクノロジーを活用して,行政サービスの問題や社会課題を解決する取り組みであるシビックテック(Civic Tech)が日本においても盛んになりつつある。このシビックテックの1つとして,地方公共団体等が保有するオープンデータや国立国会図書館(NDL)などが公開する日本国内の美術館・図書館・公文書館・博物館分野のGLAMデータを用いた地域課題解決コンテストであるアーバンデータチャレンジ(UDC;E1709,E1877参照)が,2013年から毎年開催されている。そのUDCの地域拠点の1つであるUDC京都府ブロックと,NDLとの共催で,「2019アーバンデータチャレンジ京都 in NDL関西館」が同関西館(京都府精華町)で開催された。このイベントでは,2019年11月9日にアイデアソン,同年12月7日にハッカソンが行われた。
研究データ利活用協議会(Research Data Utilization Forum:RDUF;E1831参照)は,オープンサイエンスにおける研究データ整備やその保存といった利活用体制の実現に向け,分野を超えて研究データに関するコミュニティの議論・知識共有・コンセンサス形成などを行う場として,2016年6月に設立された研究会である。RDUFでは,特定のテーマについて小委員会を設置し,研究データの利活用を図るためのガイドライン・ノウハウ集・事例集・提言のとりまとめ等,研究データに関わりのあるステークホルダーが,ボトムアップ的な活動を行ってきた。