アーカイブ - 2014年 9月 - book

9月 25日

CA1832 - 教科「情報」と図書館 / 小野永貴

2003年に高等学校へ教科「情報」が導入されてから、11年が経った。日本の初等中等教育における初の本格的な情報教育として注目された本科目は、当初より図書館関係者からも関心が寄せられていた(1)。この11年の間には、全国的な未履修問題(2)や、科目としての存続を疑問視する要望書の提出(3)など、存続が危ぶまれる事態もあったが、2009年告示の学習指導要領において大幅な改善がなされ、2013年より実施の新課程においても発展的継続がなされることとなった。...

CA1831 - マラケシュ条約―視覚障害者等への情報アクセスの保障に向けたWIPOの取り組み / 野村美佐子

 2013年6月27日に、世界知的所有権機構(WIPO)が開催したモロッコのマラケシュにおける外交会議において、「盲人、視覚障害者およびプリントディスアビリティ(印刷物を読むことが困難)のある人々の出版物へのアクセス促進のためのマラケシュ条約(仮訳)」が採択された(1)E1455参照)。6月28日には、129の加盟国が最終文書を採択し、条約には51の加盟国が署名した(2)。この条約の背景には、アクセシブルな形態の複製物の製作・頒布およびこれらの複製物の国境を越えた流通の促進に向けた世界盲人連合(WBU)のWIPOへの働きかけがあった。また障害者団体や図書館団体だけでなく、著作権者団体や出版社団体を巻き込んだ「ステークホルダー・プラットホーム(Stakeholders Platform)(3)」の取り組みがあった。...

CA1830 - 新しい本の楽しみ方「ビブリオバトル」の多方面への展開動向 / 吉野英知

近年、「本との出会い方」が多様化してきている。本を読むという行為自体は普遍的であるが、本に出会う主な場所が書店や図書館であった過去と比べて、インターネットを介して本に出会いより多くの本の情報を得られる時代となった。それゆえに「いかに自分にとって良い本と数多く出会えるか」という新たな課題にも直面している(1)...

CA1829 - 査読をめぐる新たな問題 / 佐藤 翔

倉田は査読には二つの側面から意義があると指摘している(5)。一つは投稿された論文を、その分野において適切な、標準的な形式にする機能である。実際に査読前後の論文の内容を比較し、査読後の方が改良されていることを示した研究も存在する(6)。...

CA1828 - ドイツにおける、電子ジャーナルの戦略的な供給・流通の動向 / 坂本 拓

 かつて冊子体のジャーナルのみを購読し、総合目録により各館の所蔵情報が共有されていた時代に比べ、今日の大学図書館は複雑な問題を多く抱えている。止まることを知らないジャーナルの価格高騰のために図書館の提供する学術基盤は不安定化し、また同時に出版社のビジネスモデルが従来の購読料徴収型からAPC(論文加工料)徴収型へと移行しつつあるため、図書館が関与できない学術情報流通の仕組みができつつある。加えて、以前は図書館が総合目録として管理していた書誌のデータベースが、現在はナレッジベースという形でベンダーの有料商品と化し、所蔵情報(購読情報)が共有されなくなってしまった。このような状況下でドイツでは、(1)電子ジャーナルのナショナル・ライセンス、(2)APCに対する国家的支援、(3)相互分担入力による電子ジャーナルの総合目録といったプロジェクトにより、既に成果を上げている。本稿では、これらドイツの先駆的プロジェクトの詳細を紹介したい。...

CA1827 - ウェブスケールディスカバリと日本語コンテンツをめぐる諸課題―海外における日本研究の支援を踏まえて / 飯野勝則

日本におけるウェブスケールディスカバリ(Web Scale Discovery、以下WSD)は、学術情報を統合的に検索するツールとして、大学図書館において着実に普及しつつある(CA1772参照)。しかし、検索対象となる日本語コンテンツの収録状況は、英語コンテンツに比して、未だ十分なものとは言い難い。従って、WSDにおける日本語コンテンツを充実させることは、利用者ニーズに直面する国内のWSD導入館にとって喫緊の課題であることは間違いない。一方で、WSDのセントラルインデックスを有するという特性(CA1772参照)を勘案するに、日本語コンテンツの充実がもたらす効果は、国外にも広く波及することが予想される。本稿ではこの状況を巡る諸課題について、関係するベンダーの方々へのヒアリングや国内外のWSD導入館との意見交換で得られた知見をもとに、改めて考えてみたい。

 

E1612 - GreyNet Award受賞の池田貴儀さんにインタビュー

 灰色文献に関する国際的なネットワーク“Grey Literature Network Service”(GreyNet)が,2014年8月1日付で,2014年のGreyNet Awardを日本原子力研究開発機構(JAEA)の図書館員である池田貴儀氏に贈ることを発表した。同賞は,灰色文献の研究活動や流通促進など,灰色文献の分野における優れた功績に対して贈られるものであり,アジア地域からの受賞は池田氏が初となる。池田氏にお話しをうかがった。...

E1611 - 時代は変わり順序も変わる:『図書館学の五法則』再解釈の試み

 OCLCの研究開発部門であるOCLC Researchが,2014年6月30日,S.R.ランガナタンの『図書館学の五法則』についてのレポート“Reordering Ranganathan: Shifting User Behaviors, Shifting Priorities”を公開した。上級研究員コナウェイ(L.S.Connaway)と准研究員ファニエル(I.M.Faniel)によるこのレポートは,現在の図書館員が最優先とすべき事項の検証を目的に,利用者行動の変化を踏まえ,五法則の順序変更と再解釈を提示したものである。...

E1610 - マイクロ・ライブラリー憲章の制定と今後への期待

E1610 - マイクロ・ライブラリー憲章の制定と今後への期待

 2014年も8月29日から三日間にわたり「マイクロ・ライブラリーサミット」が開催され,無事終了した。このサミットは,マイクロ・ライブラリー(私設図書館)の顕在化と,お互いの経験や設立の想いの共有化に意義があると考え,企画,実行しているものである。2013年に開始したもので,今年で2回目となる。...

E1609 - 大学図書館員の将来を示唆する図書館評価会議<報告>

 2014年8月4から6日にかけてLibrary Assessment Conference(E563参照)がワシントン州シアトル市のワシントン大学で開催された。同会議は2006年に,北米における大学図書館評価の中心人物である米国研究図書館協会(ARL)のキリルドゥ(Martha Kyrillidiou)氏,ワシントン大学図書館のヒラー(Steve Hiller)氏,ヴァージニア大学のセルフ(Jim Self)氏の発案で始まった隔年開催の会議である。通算6回目にあたる今回は,セルフ氏が引退し,残る2名が共同議長として企画を率いていた。参加者は大学図書館員が中心であるが,その数は約600名と第1回から3倍に増加し,関心の高さがうかがわれた。アジアからは,日本から筆者1名のみ,コンソーシアムでARLが提供するLibQUAL+(CA1404,CA1526参照)を実施している香港から4名と,ごく少数であった。...

E1608 - 図書館のインパクト評価のための方法と手順 ISO 16439:2014

図書館は従来,行政組織と同じように主として統計値によって活動状況を公表してきた。しかし近年,公共的な機関もその存続が自明ではなく,改めて必要なものかどうか,費用に見合う成果を実現しているかといった点が問われている。社会の情報化の急速な進展にあって,とりわけ図書館にはその役割をどのように果たすか,あるいはコミュニティにどれほど寄与しうるかの説明が要請される。...

9月 11日

E1606 - 大学/研究機関はOA費用とどう向き合うべきか<報告>

2014年8月4日,国立情報学研究所において第1回SPARC Japanセミナー2014「大学/研究機関はどのようにオープンアクセス費用と向き合うべきか-APCをめぐる国内外の動向から考える」が開催された。以下,概要を報告する。...

E1605 - 大学図書館のコレクション構築とデジタル・コンテンツ<報告>

2014年6月26,27日,筆者は,筑波大学大学院の池内氏とともに,オーストラリアのブリスベンで開催されたエルゼビア社主催の電子書籍フォーラムeBooks Forum 2014(E1600参 照)に参加した。今回で4回目となる同フォーラムには,筆者は2012年,マレーシアのクアラルンプールで開催された会に続き,2回目の参加である。本 フォーラムには,オーストラリアやニュージーランドをはじめとする各国の大学図書館員が参加したが,研究者として参加したのは,タイから1名(兼図書館 長),および筆者ら日本から2名であった。本稿は,前号の池内氏の報告に引き続き,同フォーラムで得られた知見のうち,電子書籍とコレクション構築にかか る話題について報告するものである。...

E1604 - ディスカバリーサービスの透明性向上のためになすべきこと

 Summon,WorldCat Local,Primo Central,EBSCO Discovery Service。膨大な学術情報をセントラルインデクスと呼ばれるデータベースに集積することで,高速な検索を可能にしたウェブスケールディスカバリーサービス(CA1772参照)が登場してはや5年になる。...

E1603 - 庭先の本棚 “Little Free Library”,世界へ,そして日本へ

2009年,米国のウィスコンシン州の田舎町ハドソンのとある家の庭先に,鳥の巣箱のような小さな本箱が設置された。設置したのはトッド・ボル氏。学校の教師であった母へ捧げるものだった。当初ボル氏は,この本箱をたくさん作るつもりなどなかった。しかし翌年庭でガレージセールを開いた時,地域の人たちが気に入ってくれたのを目にした。これはマジックのようなものだと感じ,地域に広めることを決意した。その非営利の活動は,地域へ,そして世界75か国以上へとひろがった。今や設置された本箱の数は20,000個を超え,なお増え続けている。...

E1602 - 黒板による広報の可能性:京都大学吉田南総合図書館の事例

 2013年2月,京都大学吉田南総合図書館では新たな広報手段として閲覧室入口前に黒板を設置した。60×90cm,カフェなどの飲食店でよく見られる ものである。イベントの告知やお知らせを中心に,日々のことを綴っている。原則毎日更新し,内容はその日の担当者の裁量で決めている。図書館の風景に変化 を持たせるため,全く同じものは再現できないという黒板ならではの良さを活かした広報を行っている。...