大学図書館におけるアクセスサービス(E430参照)は,貸出,講義の指定図書の管理,相互貸借,書庫管理等の機能を含む包括的なサービス概念である。本書はポストデジタル環境下におけるアクセスサービスの決定的な重要性に鑑みて,13人の実務担当者が分担して米国の大学図書館におけるアクセスサービスの現状を吟味し,その価値とともに従来の枠組みを越え,新たなサービスを行うべく進化しつつあるアクセスサービス部門の活動を説明している。編者のクラサルスキ(Michael J. Krasulski)氏はフィラデルフィア科学大学の情報科学科助教兼アクセスサービス・コーディネータ,ドーズ(Trevor A. Dawes)氏はミズーリ州セントルイスにあるワシントン大学図書館の副館長である。...
2013年12月16日から20日まで,第26回世界知的所有権機関(WIPO)著作権等常設委員会(SCCR)が開催され,放送機関の保護,教育・研究機関及び視覚障害者等(E1455参照)以外の障害者に関する著作権の権利制限のほかに,図書館及び文書館の利用を促進するための著作権の権利制限が議題とされた。このうち,図書館等に関する著作権の権利制限は2日間にわたって議論されたが,本格的に議論されたのは初めてであった。この議論の背景には,WIPO加盟国の間で著作権の権利制限など図書館等での利用を合法化するための規定が異なるために,国境を越えた図書館等による資料等の複製,交換などの利用が円滑に進まない場合があることから,図書館等に関する著作権の権利制限の国際条約の創設の必要性があった。2008年11月に開催された第17回SCCRで研究発表された,コロンビア大学著作権アドバイザリーオフィスのクルーズ(Kenneth D. Crews)ディレクターの報告によれば,条文の翻訳を入手できたWIPO加盟国149か国のうち,著作権法に図書館に関する何らかの著作権の権利制限の規定がある国は128か国だった。しかし,その権利制限の内容は,図書館による複製一般にわたるものから,研究目的の複製に限定するもの,図書館間貸出しを認めるもの,資料保存目的の複製を認めるものなど,国ごとに様々であった。...