アーカイブ - 2011年 4月 20日 - book

第4章 公共図書館における障害者サービスの事例的検討:ヒアリング調査から / 野口 武悟

 

1 はじめに

 第3章で述べた質問紙調査に加えて、障害者サービスに関して先進的な取組みを行っている公共図書館を抽出して、2010年10月から11月にかけてヒアリング調査を実施した。調査対象館(以下、対象館とする)は、浦安市立中央図書館、大阪市立中央図書館、大阪府立中央図書館、埼玉県立久喜図書館、千葉市中央図書館、調布市立中央図書館、名古屋市立鶴舞中央図書館、枚方市立中央図書館、横浜市立中央図書館の9館である。本章では、このヒアリング調査の結果から、対象館の障害者サービスの現状と課題を中心に述べる。

 

2 障害者サービスの歴史

 対象館の多くでは、視覚障害者読書権保障運動の高まりや「国際障害者年」(1981年)等を背景に1970年代から80年代にかけて、視覚障害者に対する対面朗読サービスを主として障害者サービスが始まっている。この時期には、「図書館利用に障害のある人々」へのサービスとの共通認識も形成され始め、視覚障害者以外の人々に対するサービスも徐々に追求されるようになり、現在に至っている。

第3章 公共図書館における障害者サービスの質問紙調査の結果分析 / 返田 玲子

 

1 はじめに

 この章では、今回の調査研究における質問紙調査の結果の概要を、過去に日本図書館協会が実施した障害者サービスに関する調査との比較を交えながら紹介する。比較に当たっては、『障害者サービスの今をみる』1)『図書館が変わる』2)『「図書館利用に障害のある人々へのサービス」全国調査報告書 1998年調査』3)を参考にした。紙幅の関係から全回答への分析ではないことをお断りしておく。

 

2 施設や設備

 障害者に関する設備については、2005年調査と比較して障害者用トイレ設置率2,297館(80.8%)が1,920館(84.5%)に、障害者用駐車場の1,571館(55.3%)が1,556館(68.5%)になるなど、館数としては減じているが割合で増加した。緊急用点滅ランプのみ435館(15.3%)から168館(7.4%)と減少した。障害者サービスを実施しているかどうかの設問で、実施していない理由の回答例を見ると、建物が古く財政状況などから障害者に関する設備が整備できないという記入もある。

第2章 IFLAから見る世界の図書館における障害者サービスの動向 / 野村 美佐子

 

1 はじめに

 日本では、2010年1月の改正著作権法の施行により、公共図書館など図書館の障害者に対するサービスの大きな変革が求められている。

 20世紀の世界の図書館の障害者サービスの発展の主たる指標は、紙による印刷物を読むことができない障害(print disabilities)がある人々の読書を支援するための、点字図書、録音図書、そして読みやすい(Easy-to-Read)図書1)の開発と普及だった。

 それに対して、21世紀の世界の図書館の障害者サービスは、1996年にIFLA(International Federation of Library Associations and Institutions:国際図書館連盟)のSLB(Section of Libraries for the Blind:盲人図書館分科会)の6会員団体によって結成されたDAISY コンソーシアムが開発したDAISY(Digital Accessible Information System:アクセシブルな情報システム)を軸にした発展を遂げていることが特徴である。

第1章 日本の公共図書館における障害者サービスの動向:1995-2010年 / 小林 卓

 

1 はじめに

 本章では、1995年から2010年までを中心とする約15年の文献から、障害者サービスのこの間の動向を概観する。1995年を起点とする理由は2つある。1つめは、1995年が現代の日本を俯瞰する上で、きわめて重要な年であることである。背景を簡略に述べると、1995年前後の特徴的なできごとは、以下の通りである。