アーカイブ - 2009年 9月 - book

9月 29日

4.6 研究調査を終えて

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 「電子書籍」の概念はあいまいである。したがって本研究調査にあたってはその産業的実態の把握に努めることとし、インタビュー調査、アンケート調査に重点を置いた。文献を中心とした研究とは異なり、実態にもとづいた日本における電子書籍の流通・利用・保存の現状を多面的に分析・検討しようとしたのである。

 今回の調査を通じて明らかにできた事項は、以下の3点である。

4.5 対策が必要な電子書籍の保存

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■印刷資料だけの保存では不十分

現在では紙の資料だけでは、時代の実相を知ることはできなくなっていることは明らかである。今日の図書館は印刷資料だけではなく、膨大な電子資料の収集を視野に入れる必要がある。

 

■CD-ROM等パッケージ系電子出版物の保存

 紙媒体の出版物の付属物としてのフロッピーディスクやCD-ROMなどや、電子媒体を主とするパッケージ系電子出版物の増加に伴い、2000年10月に国立国会図書館法の一部改正法によって従来の紙媒体などの出版物のほかに国内で発行されたパッケージ系電子出版物についても、納本制度により網羅的に収集することとなった。

 

■電子書籍の保存の現状

4.4 増加する電子書籍の利用

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■個人利用

 電子書籍の個人利用の悉皆的なデータはない。『電子書籍ビジネス調査報告書 2008』では、「ケータイを用いてインターネットを行っている11歳以上の個人」を対象に「ケータイ電子書籍」について調査を行っている。(2008年6月13日~7月2日調査、利用率調査11,632サンプル、利用者実態調査1,172サンプル)

4.3 デバイスと電子書籍の流通

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■携帯電話

 電子書籍の流通については、携帯電話、PC、モバイル情報端末という主要な媒体がある。

 携帯電話のコンテンツ配信に関しては携帯電話キャリアが公認する「公式サイト」があり、キャリアが定める基準にしたがってコンテンツの流通と課金が行われる仕組みとなっているこの公式サイトからの提供が、携帯電話向け電子書籍の主流である。携帯電話キャリアとしては、エヌ・ティ・ティ・ドコモ(DoCoMo)、KDDI(au)、ソフトバンクモバイル(SoftBank)、ウィルコム(WILLCOM)、 イー・モバイル(EMOBILE)の5社が、総務省の認可を受けた事業者である。萩野によると、2008年12月現在の電子書籍の公式サイト数は、600サイト以上になっている。

 

4.2 把握することが困難な非出版社系コンテンツの電子書籍サイトの実態

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 国内で提供されている電子書籍のコンテンツは出版社系だけではない。例えばインタビュー調査を行った「魔法のiらんど」が運営する「魔法の図書館」のように無料でコンテンツを提供しているサイトが存在する。

 

■魔法のiらんど

 「魔法のiらんど」は、携帯電話やPCから無料でホームページが作成できるサービスであり、このサービスによってブログ、掲示板、プロフィール、そしてケータイ小説が生まれるきっかけとなったBOOK(小説執筆機能)が提供される。

 

4.1 出版社系電子書籍の刊行実態

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 今回実施した、日本書籍出版協会および出版流通対策協議会加盟出版社へのアンケート調査「日本における電子書籍の流通・利用・保存に関する実態・意識調査」によって、電子書籍の刊行について次のような実態が明らかになった。

 

■電子書籍の刊行状況

 現在、何らかの電子書籍を刊行している出版社が27.1%、かつて刊行していたが現在は手がけていない出版社が1.2%、刊行していない出版社が71.8%と、刊行していない出版社の方が圧倒的に多い。そして電子書籍の刊行状況と出版社が扱っている書籍の分野には相関関係があまりなく、刊行規模が影響していると考えられる。

 つまり年間新刊図書刊行規模が大きな出版社ほど電子書籍を刊行している。

 

3.3.4 国会図書館におけるパッケージ系電子出版物の法定納本

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3.3.4.1 はじめに

 

 2008(平成20)年は、1948(昭和23)年の国立国会図書館(以下、NDL)創立から60周年に当たる年であった。そして、国立国会図書館法(昭和23年法律第5号)に基づくわが国の納本制度発足から60年が経過した。

 これまでNDLは、国内で刊行される出版物について、国政審議等の利用や国民共有の文化的財産の保存を目的として、この納本制度の安定的、実効的な運用を図ることにより、網羅的な収集に努めてきた。納本制度60周年を記念し、1948年の納本受付を実際に開始した日である5月25日を「納本制度の日」と定めて各種の広報活動を行うなど、納本制度の普及に積極的に取り組んでいる。

9月 25日

3.3.3 まとめに代えて

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 現在の電子書籍の発行者の多くは、その長期保存について、その必要性も重要性もあまり理解されていないように思われる。電子媒体は紙媒体の本よりさらに散逸・滅失する危険性が高いのにも関わらず、発行者にそれが永続的価値のあるものであるという認識が薄い。図書館員はその保存の重要性に気がついているものの、紙のようにとにかく書庫という場所をさえ用意すれば保存できるものではなく、有効な対策はとられていない。媒体変換や長期保存の体制の確立などの問題点はまだ、充分に認識されているとはいえない。

 全般に、本調査にあっては保存という観点での質問がごく少なく、定量的な分析は困難である。本調査自体「現状把握」が主であり、過去の集積や未来への伝達といったことがあまり意識されていない。これは電子書籍の蓄積がまだ始まったばかりであり、文化的資産としての認識がまだ市民や研究者自身にも薄いことに起因すると思われる。

3.3.2 電子書籍の保存の社会的意義

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 図書館に収集されている資料は、ランガナタン(Shiyali R. Ranganathan)の「図書館学の五法則」のひとつ「図書は利用するためのものである」に示されるよう(1)に、利用されるために存在している。たとえ現時点において、利用者に利用されていない資料であっても、未来に重要な意味をもつことになる可能性がある。過去、歴史研究において、図書館の果たした役割はきわめて大きい。明治以後、書籍が図書館で収集・保存されていればこそ、今に生きる我々も、明治、大正時代の実相を知ることができる。そして我々、現在に生きる者には、現在の資料を未来に残す責務があるといえる。

3.3.1 電子書籍保存の現状と展望

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 残念ながら、電子書籍の保存については本調査でもあまり体系的に把握できているとはいえない。これは、調査の問題というより電子書籍の保存そのものについてステークホルダー間に相互理解が深まっていないことに起因すると思われる。

 日本国語大辞典によると、保存とは「そのままの状態でたもっておくこと。原状のままに維持すること」(1)とされている。また図書館情報学用語辞典(第3版)では、資料保存を「図書館資料や文書館資料の現在と将来の利用を保証するため、元の形態のまま、あるいは利用可能性を高めるためにメディアの変換などを行うなどして、維持を図ること」(2)と定義する。後者は図書館あるいは文書館資料を射程としているが、すでに紹介したように、千代田区立図書館ではWebを通じた電子書籍の「帯出」サービスがスタートし、構築支援を行ったiNEOには、問い合わせが寄せられていることが、本研究のインタビュー調査からも明らかになった。

3.2.4 国立国会図書館職員の電子書籍に対する意識

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 本調査の一つとして、国立国会図書館職員を対象に「電子書籍の利用の実態・意識に関するアンケート」を実施した。詳細は巻末の参考資料2「電子書籍の利用の実態・意識に関するアンケート調査結果」を参照されたい。ここではアンケート結果の概要と若干の考察を記すのみとする。

 なおこの調査はあくまで国立国会図書館職員を対象としたものであるため、館種の異なる大学図書館職員や公共図書館職員を代表するものではない。いわば「ラストリゾートとしての図書館の職員」の現在における電子書籍に対する意見分布として見る必要がある。

 

 調査対象:国立国会図書館職員 923名
 調査期間:2008年10月22日~11月5日
 調査方法:国立国会図書館内、Webアンケート方式による調査
 回答数:373名 (40.4%)

 

3.2.3 リンク集

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 リンク集やメタリンク集も多くの図書館で提供されている。例示で取り上げておこう。例えば琉球大学附属図書館「電子化資料を提供しているサーバー」(15)や埼玉大学図書館の「電子ジャーナルリンク集」(実態はメタリンク集)(16)などや、Sun-Inet「電子図書館」(17)などがある。リンク集やメタリンク集の探索には、検索エンジンの使用が有効である。

 

(15) 琉球大学附属図書館. “電子化資料を提供しているサーバー”.
http://www.lib.u-ryukyu.ac.jp/erwg/denshika.html, (参照 2009-01-15).

3.2.2 電子書籍の機関利用―図書館―

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 図書館における電子書籍は大きく2種類に分かれる。第一は、所蔵資料類の自館等による電子化とそのネットワーク公開であり、図書館の館種を問わず貴重書、文庫(コレクション)の電子化は一般的である。ただし、その大半は過去の「蔵書」類のデジタル化、ネットワーク公開であり、電子展示物の公開の範囲に留まっている。大学等においてはデジタル化されたコンテンツ類を媒介として、当該大学を核とした研究プロジェクトの推進や教育素材として活用されることが肝要である(4)。また、公共図書館では地域コミュニティの活性化への寄与などが強く求められている(5)

3.2.1 電子書籍の個人利用

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 電子書籍の個人利用の悉皆的なデータはない。インプレスR&Dによる『電子書籍ビジネス調査報告書2008』(1)では、「ケータイを用いてインターネットを行っている11歳以上の個人」を対象に2008年6月13日~7月2日の約2週間の調査を行っている(サンプル数11,632)。対象は「ケータイ電子書籍」であるので利用のデバイスは携帯電話に限定されており、PC利用や専用デバイス利用は対象外である。

 同調査の概要は次の通りである。

 ケータイ電子書籍の認知度は91.9%であり、高い認知状況である。ケータイ電子書籍の利用率では、29.6%(21.7%:2007年同調査、以下同様)であり、また有料コンテンツ購入については7.9%(3.9%)と前年比倍増の延べであると共に、大きな潜在成長市場が期待される。利用率では、特に女性の10代で約50%、20代で約40%強と利用率が特出しており、また有料コンテンツでは30代女性を中心に高い。

3.1.5 電子書籍流通に関するトピック

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3.1.5.1 コンテンツの取り込み・OCR処理

 

 基本工程の前処理、OCR処理は、下記の工程で処理される。

  前処理 ⇒ スキャン ⇒ ノイズ除去・傾き補正(スキュー)等の後処理
  ⇒ OCR処理 ⇒(テキスト・パターン辞書作成を同時並行) ⇒ 校正

 本来であればカラーデータをOCR処理するのがあるべき姿だが、基本的にモノクロ2値画像がOCR処理の対象となっている。カラーデータではデータ量が大きすぎるため、処理に時間を要しコストが合わないのが実情である。

 ノイズ除去・スキュー補正等の画像処理のツールは複数あり、この処理によりOCR精度は大きく左右される。ただし日本語OCR(この場合活字)は数社しか開発をしていないため、OCRエンジンは自ずと限られてくる。重要なのはドキュメント毎の辞書作成であり、辞書の精度により認識率は大きく左右される。

3.1.4 ビジネスモデル

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3.1.4.1 資金回収モデル

 

 回収モデルの大枠は有償課金モデルと無償広告モデルに大別される。

 この2つは入口こそ違うが、到達点は一致している。前者は有償課金に広告モデルをいかにとり込んでいくか、後者は広告モデルの成功から、いかにコンテンツの有償課金化を導入していくか、という構図である。

 既に述べた通り、ネットを介した電子書籍はその実体性が希薄で、「モノ」としての価値を認識しづらいという側面を長く引きずってきた。これは新しい商品の持つ宿命と言ってもよいもので、人が日常生活で身につけてきた「常識」からくる距離感というものであろう。だからこそ、実体のないものから対価を求める有償課金モデルの定着には、相当の時間を要した。有償モデルの成功は、携帯電話の通信料と一緒にコンテンツ料金を徴収する課金モデルだったことは明らかであり、そのプロセスの中で個別対価よりもむしろ、一定期間内(1か月など)の定額料金を前払いする、集合課金方式の定着によって成り立ってきた。

3.1.3 流通の担い手、ステークホルダー

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 電子書籍の担い手は大きくわけて以下4つの領域がある。すなわちコンテンツ領域、フォーマット領域、デリバリー領域、ハード領域である。

 コンテンツの領域とは、現状では主に、既存メディアでのコンテンツホルダーである出版社や映画会社、テレビ局が支配している。フォーマット領域は、ビューア、制作ツールを担っており、ソフトウェア開発部分といえる。デリバリー領域は、携帯電話では配信に関わる通信事業者キャリアが独占している世界であり、そしてまたPCにおいては豊富なコンテンツを揃える大手取次や大書店が占有する世界である。ハードの領域は代表的な大企業メーカーが担っている。

 これらを前提とすると、電子書籍流通に関係する担い手は、主にコンテンツ領域とデリバリー領域にある出版社、印刷系取次・書店、ベンチャー系取次・書店、それにキャリアの4者に代表されると言えるであろう。以下個別に分析する。

 

3.1.3.1 通信事業者(キャリア)

 

3.1.2 流通フォーマット

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(1)携帯電話でのコンテンツ配信の仕組み(図解)

 3キャリアを中心とした配信システムの仕組みを理解する。

 

図3.5 docomoの仕組み

図3.5 docomoの仕組み

 

図3.5 docomoの仕組み

 

図3.6 auの仕組み

3.1.1 主要な媒体の分析

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 本節の目的は、日本における電子書籍の流通をになう媒体について、媒体の現状を明らかにし、それぞれの媒体のもつ特徴を明示することである。ここではデバイスに備えられた(または追加した)通信機能を介してコンテンツを入手し利用する、以下の媒体を取り上げることとした。パッケージ媒体として流通する「パッケージ系」についてはここでは言及しない。

  • 携帯電話
  • PC
  • モバイル情報端末(通話・通信機能を含む情報端末およびゲーム端末など)

 

3.1.1.1 携帯電話

 

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