アーカイブ - 2011年 4月 20日

ITHAKA、大学図書館の戦略についての調査報告書を公開(米国)

PorticoやJSTORを運営する非営利団体ITHAKAの調査研究部門ITHAKA S+Rが、米国の大学図書館長を対象に、大学図書館の戦略等を調査した結果をまとめた報告書“Ithaka S+R Library Survey 2010: Insights from U.S. Academic Library Directors”を公表しています。2010年秋に実施された調査への267館の回答がまとめられたもので、主な調査結果として、次のようなことが示されています。
・回答者の多くは、利用者ニーズへの対応や最適な資料管理について、自館の戦略が十分でないとしている。
・今後優先する機能としては、資料の収集・保存よりも、研究・教育の支援をあげた回答の方が多かった。
・図書館長は、図書館が情報発見プロセスのスタート地点として利用者から見られるということが戦略的に重要と考えている。
・紙媒体の雑誌については、購読中止や保管施設への移送が行われるようになっている。

Ithaka S+R Library Survey 2010 Findings Released (ITHAKA 2011/4/5付けの発表)

オープンアクセスポリシー導入のための手引き書“Open Access Policy Kit”

2011年4月13日の英国Knowledge Exchangeのニュースによると、オープンアクセスリポジトリ連合(COAR)が“Open Access Policy Kit”という文書を公開したようです。この“Open Access Policy Kit”は、オープンアクセスポリシーをすでに導入している世界の先行優良事例を基に、研究機関や研究助成団体がオープンアクセスポリシーを導入する際の手引きとしてつくられたもののようです。なお、“Open Access Policy Kit”を作成したのは、COARに加盟しているポルトガルのオープンアクセス学術リポジトリ(RCAAP)とのことです。

Open Access Policy Kit
http://projecto.rcaap.pt/index.php/lang-pt/consultar-recursos-de-apoio/remository?func=download&id=336&chk=d8bd41ab5aff65b71a671ddb7d9cb91b&no_html=1

Deposit Policies (Repositorio Cientifico de Acesso Aberto de Portugalのウェブサイト。“Open Access Policy Kit”ダウンロードページ。)

2011年雑誌価格調査の結果(米国)

2011年4月14日付けの記事で、Library Journal誌が2011年版の雑誌価格調査の結果“Periodicals Price Survey 2011: Under Pressure, Times Are Changing”を掲載しています。ここでは、予算削減と価格上昇に苦しむ図書館の姿が紹介され、学術分野や出版国ごとの平均価格、平均価格上昇率がまとめられています。また、2012年の動向についても予測しており、例えば、ISIの3つのCitation Index(AHCI、SSCI、SCI)に収録されたタイトルの平均価格上昇率は2010年は4.3%、2011年は5.3%だったそうですが、2012年は6~8%程度になるだろうと推測しています。

Periodicals Price Survey 2011: Under Pressure, Times Are Changing (Library Journal 2011/4/14付け記事)
http://www.libraryjournal.com/lj/home/890009-264/periodicals_price_survey_2011_under.html.csp

参考:
Library Journal誌、2009年2月時点の学術雑誌価格調査の結果を発表

スペイン文化省がレポート「スペインにおける電子書籍の現状と展望」を刊行

2011年4月12日、スペイン文化省内の組織で、同国の読書や書籍の現状を調査している“Observatorio de la Lectura y el Libro”が、「スペインにおける電子書籍の現状と展望」“Situación actual y perspectivas del libro digital en España”と題するレポートを刊行したようです。レポートは、電子書籍の進展が同国の出版業界と読者にどのようなインパクトを与えたか、デジタルコンテンツの供給にどのような影響を与えているかを明らかにしたものとのことです。レポートでは、KindleやiPad等の電子書籍端末やタブレット端末の動向、それら端末で利用するデジタルコンテンツの状況と今後の予測、EPUB等のフォーマットやデジタル著作権管理(DRM)等の議論が展開されているようです。これらのトピックのうち特に図書館に関わる項目としては「DRMとそれが図書館に与える衝撃」があり、そこでは米国のHarperCollins社による電子書籍貸出回数の上限設定問題と、DRMに反対する“ReadersBillofRights.info”という活動等が紹介されているようです。

Situación actual y perspectivas del libro digital en España (PDF版)

MIT OpenCourseWare、10周年を迎える

米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)が2001年に世界で初めてスタートしたオープンコースウェア“MIT OpenCourseWare”が、2011年4月で10周年を迎えました。この10年間に公開した講義は2000、閲覧者は1億人を超えたそうです。次の10年では閲覧者10億人を目指し、“Placing OCW everywhere”、“Reaching key audiences”、“Creating communities of open learning”、“Empowering educators worldwide”の4つの目標に力を注いでいくとのことです。

MIT OpenCourseWare's First 10 Years: 100 Million Served
http://ocw.mit.edu/about/next-decade/

The Next Decade of Open Sharing: Reaching One Billion Minds
http://ocw.mit.edu/about/next-decade/initiatives/

Our History (MIT OCWの歴史年表)
http://ocw.mit.edu/about/our-history/

参考:

第4章 公共図書館における障害者サービスの事例的検討:ヒアリング調査から / 野口 武悟

 

1 はじめに

 第3章で述べた質問紙調査に加えて、障害者サービスに関して先進的な取組みを行っている公共図書館を抽出して、2010年10月から11月にかけてヒアリング調査を実施した。調査対象館(以下、対象館とする)は、浦安市立中央図書館、大阪市立中央図書館、大阪府立中央図書館、埼玉県立久喜図書館、千葉市中央図書館、調布市立中央図書館、名古屋市立鶴舞中央図書館、枚方市立中央図書館、横浜市立中央図書館の9館である。本章では、このヒアリング調査の結果から、対象館の障害者サービスの現状と課題を中心に述べる。

 

2 障害者サービスの歴史

 対象館の多くでは、視覚障害者読書権保障運動の高まりや「国際障害者年」(1981年)等を背景に1970年代から80年代にかけて、視覚障害者に対する対面朗読サービスを主として障害者サービスが始まっている。この時期には、「図書館利用に障害のある人々」へのサービスとの共通認識も形成され始め、視覚障害者以外の人々に対するサービスも徐々に追求されるようになり、現在に至っている。

第3章 公共図書館における障害者サービスの質問紙調査の結果分析 / 返田 玲子

 

1 はじめに

 この章では、今回の調査研究における質問紙調査の結果の概要を、過去に日本図書館協会が実施した障害者サービスに関する調査との比較を交えながら紹介する。比較に当たっては、『障害者サービスの今をみる』1)『図書館が変わる』2)『「図書館利用に障害のある人々へのサービス」全国調査報告書 1998年調査』3)を参考にした。紙幅の関係から全回答への分析ではないことをお断りしておく。

 

2 施設や設備

 障害者に関する設備については、2005年調査と比較して障害者用トイレ設置率2,297館(80.8%)が1,920館(84.5%)に、障害者用駐車場の1,571館(55.3%)が1,556館(68.5%)になるなど、館数としては減じているが割合で増加した。緊急用点滅ランプのみ435館(15.3%)から168館(7.4%)と減少した。障害者サービスを実施しているかどうかの設問で、実施していない理由の回答例を見ると、建物が古く財政状況などから障害者に関する設備が整備できないという記入もある。

第2章 IFLAから見る世界の図書館における障害者サービスの動向 / 野村 美佐子

 

1 はじめに

 日本では、2010年1月の改正著作権法の施行により、公共図書館など図書館の障害者に対するサービスの大きな変革が求められている。

 20世紀の世界の図書館の障害者サービスの発展の主たる指標は、紙による印刷物を読むことができない障害(print disabilities)がある人々の読書を支援するための、点字図書、録音図書、そして読みやすい(Easy-to-Read)図書1)の開発と普及だった。

 それに対して、21世紀の世界の図書館の障害者サービスは、1996年にIFLA(International Federation of Library Associations and Institutions:国際図書館連盟)のSLB(Section of Libraries for the Blind:盲人図書館分科会)の6会員団体によって結成されたDAISY コンソーシアムが開発したDAISY(Digital Accessible Information System:アクセシブルな情報システム)を軸にした発展を遂げていることが特徴である。

第1章 日本の公共図書館における障害者サービスの動向:1995-2010年 / 小林 卓

 

1 はじめに

 本章では、1995年から2010年までを中心とする約15年の文献から、障害者サービスのこの間の動向を概観する。1995年を起点とする理由は2つある。1つめは、1995年が現代の日本を俯瞰する上で、きわめて重要な年であることである。背景を簡略に述べると、1995年前後の特徴的なできごとは、以下の通りである。