欧州

CA1921 - 「欧州オープンサイエンスクラウド」をめぐる動向 / 尾城孝一

 2013年6月にG8の科学大臣会合が開催され、そこで研究データのオープン化を確約する共同声明(1)に各国が調印したことを皮切りとして、国や地域共同体のレベルでの研究データ基盤の構築が加速している。

Springer Compact(オフセット契約)によるオープンアクセス(OA)の状況

2018年3月22日、オープンアクセス(OA)におけるAPC(論文処理加工料)の透明性が高く、効率的な管理体制の構築を目的とするドイツの団体INTACTが、Springer Nature社のオフセット契約モデルSpringer CompactによるOAの実現状況に関する調査結果をブログで公開しました。

オフセット契約とは電子ジャーナルのビッグディール費用とAPCを一括して機関が支払うモデルです。INTACTの調査では、オーストリアの大学図書館協会、ドイツのマックス・プランク・デジタル・ライブラリ(MPDL)、オランダのVSNU、スウェーデンのBibsamコンソーシアム、そしてイギリスのJISCのデータを用い、2016~2017年のSpringer Compact対象雑誌について、OA論文の割合や、そのうちオフセット契約の結果OAになったものの割合等を調査しています。

欧州委員会(EC)の高度専門家グループ、オンライン上の偽情報に対応するための推奨事項をまとめた報告書を公開

2018年3月12日、フェイクニュースや偽情報のオンライン上での広がりに対応するための政策に関するアドバイスを行なう組織として2018年1月に欧州委員会(EC)が創設した高度専門家グループ(HLEG)が、報告書“A multi-dimensional approach to disinformation”を公開しました。

報告書は、「偽情報」を定義し、短期的な対応策を示す代わりに、証拠に基づく新しい対応策を開発しながら、フェイクニュースへの社会の回復力を高めるための長期的対応策やそれらの対応策の有用性を継続的に評価するための枠組みを提供することを目的としており、次の5つの柱を基礎に、相互に補強しあう対応策に準拠した多元的なアプローチを推奨しています。

1.オンラインのニュースの透明性の強化

2.メディア・情報リテラシーの促進

3.利用者・ジャーナリストがフェイクニュースに対抗できる力を与えるためのツールの開発及び急速に進展する情報技術との積極的なかかわりの促進

4.欧州のニュースメディアのエコシステムの多様性と持続可能性の保護

5.必要な対応策を継続的に調整するための欧州におけるフェイクニュースの影響に関する継続的調査の促進

大学・研究図書館協会の国際的な連合体IARLA、行動規範(values statement)を発表

2018年3月5日、カナダ研究図書館協会(CARL)・オーストラリア大学図書館員協議会(CAUL)・欧州研究図書館協会(LIBER)・英国研究図書館コンソーシアム(RLUK)による大学・研究図書館協会の国際的な連合体“International Alliance of Research Library Associations” (IARLA) が、行動規範(values statement)を発表しました。

研究や学習のための公共財であること、研究や学習のための情報へのグローバルなアクセスを第一に考えること、公共財として情報資源の管理・生産・保存を重視すること、学問の自由・知的自由を原則とすること、多様性・包摂性を重視すること、職務基準・倫理基準を遵守すること、を掲げています。

図書館が、研究や学習に役立つ一連のサービスを実施する最良の機関であることを示すことも目的としており、全ての研究図書館が、キャンパス内の関係者や他の研究機関等との交渉において利用することを推奨しています。

欧州大学協会(EUA)、欧州の大学のオープンアクセスの進捗状況を調査した報告書を公開

2018年2月21日、欧州大学協会(EUA)が、報告書“Open Access Survey Report 2016-2017”を公開しました。

同種調査の第3版にあたり、各機関でのポリシーの策定や実践の程度を調査することで、欧州の大学でのオープンアクセス(OA)の進捗状況を追跡したもので、調査へは欧州39か国の338の大学・高等教育機関から回答が寄せられました。

調査結果からは、学術刊行物へOAポリシーを適用する大学が増加している一方、研究データのオープン化は余り進展していない事が明らかになったとしています。

また、2016-2017版の報告書の公開に合わせて、2017-2018年度の調査を開始したことを発表しています。

オープンサイエンスについての研修を推進するプロジェクト“FOSTER”、“Open Science Training Handbook”へのコメントを募集中

2018年2月19日、オープンサイエンスについての研修を推進するプロジェクト“FOSTER”が、オープンアクセス(OA)、研究データのオープン化、オープンピアレビューといったオープンサイエンスに関する取組や原則について若手研究者等に知らせることを目的に作成した“Open Science Training Handbook”へのコメントの受付を開始しています。

同ハンドブックは、公募で選ばれた10か国のオープンサイエンスに関する講師14人が、2018年2月12日から2月16日にかけてドイツで開催された“FOSTER Book Sprint”で作成したものです。

意見募集は3月4日までです。

The Open Science Training Handbook (FOSTER,2018/2/19)
https://www.fosteropenscience.eu/node/2150

EU理事会(Council of the EU)、マラケシュ条約への批准を承認

2018年2月15日、EU理事会(Council of the EU)が、マラケシュ条約に夏以降に批准する事を承認する決定を行なったと発表しています。

【イベント】懇談会 「Europeanaの翻刻プロジェクトと日本の翻刻プロジェクト」(2/23・東京)

2018年2月23日、東京大学情報学環福武ホールにおいて、デジタルアーカイブ学会技術部会と一般財団法人人文情報学研究所との共催により、懇談会 「Europeanaの翻刻プロジェクトと日本の翻刻プロジェクト」が開催されます。

Europeanaで翻刻プロジェクトを進めている Frank Drauschke氏が来日するのを機会に実施されるものです。

話題提供として以下の2つの講演が実施されます。

「クラウドソーシング翻刻のための基盤形成:日本古典籍の場合」(逐次通訳付き)
飯倉洋一氏(大阪大学大学院文学研究科)

「共通の歴史を市民の手で - Europeana 1914-1918 と翻刻」 (逐次通訳付き)
Frank Drauschke氏

参加には事前の申し込みが必要です。

Europeana の翻刻プロジェクトと日本の翻刻プロジェクト(デジタルアーカイブ学会,2018/2/13)
http://digitalarchivejapan.org/1979

国際図書館連盟(IFLA)、欧州文化遺産年(2018年)を受けて、図書館での取り組み方をまとめたブリーフィングペーパーを公開

2018年2月8日、国際図書館連盟(IFLA)が、2018年が欧州文化遺産年(European Year of Cultural Heritage)であることを受けて、図書館での取り組み方をまとめたブリーフィングペーパーを公開しました。

欧州各国の図書館が日々行なっている、手稿類からボーンデジタル資料までの文化遺産保存の取組や、文化遺産の利用に関する新しい方法の開発に関する取組を理解してもらい、法的にも財政的にもこの取組を効果的に実行し続けるための支援を受けるための好機であるとし、“Engagement”、“ Sustainability”、“Protection”、“Innovation”という欧州文化遺産年の4つのテーマと図書館の諸活動の関係について示すとともに、この好機を生かすための5つの事項を提案しています。

European Year of Cultural Heritage - Briefing for Libraries(IFLA,2018/2/8)
https://www.ifla.org/node/27027

国際図書館連盟(IFLA)、欧州連合(EU)実施のフェイクニュースに関するパブリックコンサルテーションへの回答内容を発表

2018年2月2日、国際図書館連盟(IFLA)が、欧州連合(EU)が実施しているフェイクニュースに関するパブリックコンサルテーションへ回答したと発表し、その内容を公表しています。

パブリックコンサルテーションは、現在フェイクニュースに対して行なわれている取組や、それらの効果を高めるための必要性を検討したり、様々なタイプのフェイクニュースに対処するための新しい取組を導入したりする際の評価に役立てることを目的に2017年11月23日から2018年2月23日までEUが実施しているものです。

IFLAの回答は、人々が、リテラシーがあり、批判的な見方ができるというスキルを持つことが唯一の持続可能な対処方法であるとし、図書館はそのことを実現するための不可欠な存在で、そのようなものとして支援される必要がある事や、規制や政府の介入は必要ではないことを強調した内容となっています。

Libraries, Media and Information Literacy Only Sustainable Response to Fake News(IFLA,2018/2/2)
https://www.ifla.org/node/25805

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